誰も彼もが浮かれてる。街にはこれでもかと主張するイルミネーション、何人いるんだサンタさん、一番混むのはラブホテル。
今年も一年で一番大嫌いな日がやって来た!

【MERRY ××× !】

約束の時間までまだたっぷり時間は残っている。さあさあ準備をしましょうか。今日の様な××みたいな日を君とお祝いする為に。

街を歩いていると路上に真っ赤なスポーツカーが停まっているのが見えた。童話の様に馬とはいかないけれど、王子様が歩いて来たんじゃ格好つかないよね。
人気のない路上。そのカップルは車内で熱気を上げていた。今日は特別な日だから?神様だって大目に見てくれるだろうって?無い無い。きっと神様だって吐き気を堪えてトイレに駆け込む3.2.1!
コンコン、窓を叩くと下品に髪を染めたいかにも馬鹿な若者といった男が不機嫌そうに顔を覗かせた。
「なんだてめえ?なんか用かよ。」
いやいや君には用はありません。言葉を交わす必要性も感じなかったからそのまま頭を掴んでぐりん、と捻った。首からごきゅっと嫌な音が聞こえて、男は永遠に静かになった。うん、君は黙ってた方が幾らかましに見えるよ。
車を汚されると嫌なので男を道に放っぽり出してエンジンをかける。
「た、たすけて」
助手席にはあられもない格好で震える女の子。ああ、まだ居たの。気がつかなかった。
「ね、なんでもするから、好きなことさせてあげるから、だから」
男の夢やら何やらがたくさん詰まっているであろう大きな胸を強調させる様にして女の子は此方を見上げた。その顔に優しく両手で触れて近づいて、目を閉じた所を思いっきり後ろに向かって力を入れた。ありえない方向に首を曲げた彼女も捨てて、車を発進させた。足元に置いてあった男からのプレゼントらしき物は彼女の上に捨ててあげた。

ふんふーん、軽快に車を走らせているとふと自分の腕に目がいった。お洒落はしてきたけれど、何か物足りない。車を停めて街行く人を観察する。ああ、あれなんかいいかもしれない。
肥えた体でのしのしと偉そうに道を歩く男性に声をかける。
「うちの店今日だけ特別、××歳の子もいるんですがちょっと寄って行きません?」
すると男はにちゃあと笑って何処だ?と臭い息を荒げた。やっぱりね。そういうの、好きだと思った。
男を上手く路地裏に誘導してナイフを突きつけた。
「待ってくれ!か、金か?金ならいくらでもやる
。ほ、ほら、こんなに持って、」
そう言って財布に手を伸ばそうとした男の指を切ると真っ赤な血と黄色い脂肪が飛んだ。
豚の様な悲鳴をあげて逃げようとする男をナイフで切り刻んだ。たくさんの肉の塊と脂肪が積み上がった所で本来の目的を思い出した。少し離れた所に飛んだ男の手首から上等そうな時計を外して、自分に着けた。
「最初からこれを出せば殺さなかったかもね。」
そんなわけ無いけど。男の肥えた指が昔、××歳くらいの時にとった"お客様"を思い出させたのだ。嗚呼気持ち悪い。
「ひいっ」
背後から聞こえた悲鳴に振り向くとそこには上等そうなコートを着た男性が立っていた。丁度良かった、今着てるコートは豚の血で汚れてしまった。俺は笑顔で近付いた。

これであおちゃんを迎えに行く準備は整った。待ち合わせまであと30分。
ここで俺は最大のミスに気がついた。プレゼントが無い!
どうしよう。どうしよう。その時パッと目に入ったのは今日この街で一段と輝く有名なジュエリー店。
待ち合わせまであと20分。
ショーケースにはたくさんのジュエリーが並んでいる。
「恋人様への贈り物でしょうか?でしたら、此方の指輪など如何でしょう?」
指差されたのはダイヤモンドの綺麗な指輪。きっとあおちゃんの指についたらもっと綺麗だろう。
「これにします。」
では此方でお会計を、との声を聞きながら時計を見ると待ち合わせまであと10分。
急がなきゃ!
ラッピングは結構です。その言葉と同時に弾丸で店員の頭をぶち抜いた。キャーキャーうるさい奴らも湧いて出てきた屈強な男達もみんな真っ赤に染めて店を出る。
待ち合わせまであと5分。
"クリ…マ…の街で突……殺人……が……"
ラジオが何か叫んでいるが聞こえない。
待ち合わせまであと3分。
今日は一年で一番嫌いな日。
待ち合わせまであと2分。
そんな日に君に言いたいことは一つだけ。
待ち合わせまであと1分。

街で一番大きなツリーの下で恥ずかしそうな、嬉しそうな顔をした恋人を見つけた。
待ち合わせまであと0分。
「お待たせあおちゃん。」

「俺と結婚して下さい。」

泣いたり笑ったり忙しい恋人を車に乗せて急発進する。ガヤガヤと賑わう音に混じってサイレンの音が聞こえる。
「さて、あおちゃん!これから何処へ行こうか!」
「ヤマト君と一緒なら何処でもいいよ。それよりも、メリークリスマス。そしてお誕生日おめでとうヤマト君。」


あ、そういえば今日はそんな日だったね。



25日警察に一枚の写真が届いた。そこには無差別殺人犯が恋人と思わしき男性にキスをしている姿が写っていた。裏にはピンクででかでかと文字が書かれていた。


Merry Christmas!


今日は最低で最高な俺と君の世界から逃走記念日。

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