「寒いわ。ヤマト、なんとかして頂戴。」
そんな事を言った次の日、この男は大きな紙包みを持って屋敷を訪れた。どうぞ、と差し出されたそれを開くと中には鮮やかな赤色の羽織りが入っていた。
「これ、お前が選んだのかい?」
そう尋ねると勝手ながら私が。との言葉が返ってきた。
「ふぅん。中々気に入ったわ。着せておくれ。」
すると男は、ヤマトは私をヒョイと抱え上げ鏡の前まで連れて行った。
白地の着物に赤の羽織り。鏡に映ったその姿をどうか、と尋ねるとよくお似合いです。と跪いた姿で返事をされた。顔を上げろと袖を振ると、ふっと香がした。
「あら、ヤマト。お前この羽織りを買った時もしかして香をつけていたのかい?」
羽織りからヤマトの香りがする。きっと大事に持ってきたのだろう、香がうつってしまっている。申し訳ございません、すぐにお取り換えして来ます、との声を私は遮った。
「別に構わないわ。香などどうせすぐに消えてしまう、気にしないわ。」
そう、きっといつか消えてしまう。だから今だけはこの香に包まれているのも悪くはないと思った。

(まるで貴方に抱きしめられているようで)


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