*閑話休題
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「やぁ、こんにちは。――――年2月×日の舞白」
彼はいつも、そう言って戯けたように笑うのです。

「いつもいつも、貴方は何処から入ってくるんです?」
「当ててご覧よ」
「窓・・・ではないから隠れた入り口でもあるのでしょうか?」
ここはいつもの部屋の中なので、僕が背にしている扉と真上の天窓くらいしかないのです。
「今日の舞白は問うてばかりだね」
図星を食らって声を出せない僕の様に、彼は舌舐りをするように厭らしく口許を歪めました。

「スノードロップは元気かい?」
「元気ですけれど・・・」
「じゃあ、順調に人殺しを続けているんだね」
「僕は人なんか殺していません」
「毎日なぶり殺してるじゃないか」
固い爪先が触れて、無機質なほど冷たいそれは僕の頬の痕を抉りました。

「一体、何を言っているんですか?」
「愛されたいと君は彼らに哀されて、毎日毎時間毎分毎秒、君を殺しているじゃないか」
「冗談にも程がある。何様のつもりだ・・・いや、まずお前は誰なんだ」
「やぁ、こんにちは。10秒前からの舞白。判らないならヒントをあげよう」

「僕は君で君は僕、僕は君だけど、君は僕じゃあない」
掴みかかろうと手を伸ばしますが、生憎それには手が届きません。

「ねぇ、舞白」
彼は真っ暗な瞳でぼくを見ると、ゆっくりと説き始めます。

「殺すくらいなら、僕にくれよ」
僕なら僕のまま、僕を生きていけるよ

甘い誘惑にその時の僕は何も応えることができませんでした。ただ、何かが消えそうな恐ろしさだけに支配され、いつものように物にあたることしかできなかったのです。

投げたソレの割れる音が反響するのに混じって楽しそうな声も耳に届きました。


雲が出てきた。
今日のところはこのあたりでおしまいだ
また、会おう舞白。
近々、そう。すぐにでもね。



鏡の奥には何もない、合せ鏡の写した虚像とでも言うのか。
君は僕で、僕は君。ほんとうはどこ?
暗い闇の中を手探りで探すんだ。
染まることに怯えながら。
もがいて、もがいて、染まりすぎた手は純粋な白に戻りきれない。
色を吸ったそれはただ舞い落ちるだけ。
もうそれは、美しい雪ではない。ただの廃棄物に成り果てる。  

あぁなんて哀れなことか。
あいしているよ、僕のーーー  


   

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