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「色を持ってはいけない」
兄の口癖をそっと口にしてみる。そうしてみるといかに兄が無茶を言っていたのかがよく分かる。
白が無色だと誰が決めたのだろう。
紙の白は無垢で何物にも染まる。
しかし、絵の具のソレは少しずつ存在を残すのだ。そうして本物にもなれず、元にも戻れない。
酒に溺れゆく兄と
色に埋もれる僕と
愛に包まれる弟と
そうして回りゆく世界を閉じようとする兄の傍で僕はどうしたらいいのだろう。
目を閉じれば、そこには黒。
1つに染まれば、逃せるだろうか。
せめて未来あるーーくらいは。
*『モノクロ依存』(朱織さん)へ
合わせて。