*狭間に積もる
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 どこからか名前を呼ばれて振り返る。ここはどこだろうか。そんなことを考えながら、ついでに辺りを見回せば、人のいない縁側。
 近くにある柱を見て、
「あぁ。昔よくここでお仕置きをされたな」
と他人事のように呟いてみる。実際問題、その時、そこにいたのは“僕”ではないから、まぁそれも間違いではないのかもしれないけれど。
 柱に寄りかかって座り込んでみれば、また、どこからか名前を呼ばれる。
「どうせ貴方が呼ぶのは“僕”じゃないのに」
ぼそりと呟いた声は思った以上に響いて少しドキリとする。彼ならこんな“僕”のことも、いつもの笑顔で認めてくれるのだろうか。そういえば、ここには彼がいない。なんだかんだ言いつつ、傍にいてくれていたのに。こういう狭間では特に。
 そうすると、この呼ぶ声は現実からだろうか。なんだかとても疲れた感じがして戻る気がしないのだ。このまま目を閉じてしまったら、楽になるのだろうか。
 そんなことを止め処なく考えていると、目の前を白が舞う。
「ここでも降るんだ・・・」
そっと掬うように手を伸ばす。手のひらにちょこんと乗ったそれは冷たいわけではなくて、溶けていく様子もない。
「作り物は作り物ってことか」
見た目がそっくりでも本質が違ったら意味がないのに。まるで自分のようなソレをパタパタと払い落としてため息を1つ。きっと“僕”じゃなくても誰かがやってくれるから。だから、しばらくは誰かに任せて、少し休ませて。あの寒くて淋しい地下牢に1人でいるくらいなら、あと少しだけでもいから、ここにいさせて。

 そして必要としないならもう二度と呼んだりしないで。

 

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