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私は美しいと思う。何故ならそう育てられたから。
花は美しくなくてはいけない、そうでなければ誰も愛ではしないもの。
花とはーー
「華やかで美しいもの。また、煌びやかで人目を引くもの」
「実質を伴わず体裁ばかりよいこと。また、そのもの」
お父様は昔から私には特別優しかった。何でも与えてくれて、甘やかし愛してくれた。私が「お父様の望む椿」である限りは。
逆を言えば「お父様の望む椿」に必要ないものは何も与えられなかった、ということだけれど。
それでも良かった。私がちゃんとしていればお父様の中には常に私が居たから、放っておかれることも暴力を振るわれることもなかったから。
なのに貴方は死んでしまった、箱庭の鍵と人形をちはや兄様に押し付けて。
ちはや兄様が全てを押し付けられてもこなせているのはお父様に似ているからね。
可哀想なちはや兄様…誰よりもお父様を憎んでいる癖に、誰よりもお父様に似ている。
そう、「椿」に求めるものも…
箱庭の中でしか生きられない自分だけの美しい花。
甘い花と棘のある花、好みは違うけれど、お父様も、ちはや兄様も、男とはそういうものなのかしら?
だとすれば男という生き物は悪趣味ね。…それに甘んじている私も。
けれどもう、私は自由の中-外-では生きられないから、誰かに守られなければ生きていけないから、この箱庭-世界-の中で誰よりも美しい花で在り続けるの。
椿が枯れる、その瞬間まで。