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私の中で何かが渦巻いている。何かが蠢いている。
唐突に、急激に、椿は思う。
唐突に、急激に、恐怖が襲う。
頭の芯が熱をもったように思考が定まらない。身体が火照り、椿の白い肌が淡い朱に色付いていく。
はぁ、と艶めかしい吐息が漏れた。
それが合図のように、ぴき、何処かから音がした。
ぴき、ぐちゅ、ぐちゅ。
熱い、痛い、熱い。背中が灼けるように熱い。
ぽろり。一粒、雫が落ちた。
「ぃ、ああ''あ''あ''!?」
ぴき、ぶちぶちばりずりゅん。
椿が鳴く。何かを引き裂く音がする。
椿が泣く。何かが滴る音がする。
悲鳴が止み、音が止み、静寂が訪れる。
鏡に映ったのは汗と涙で濡れた椿の顔。の後ろに赤い、紅い、歪な羽根。
美しくグロテスクなそれは不思議なほど椿に映え、馴染み、美しさを増していた。
ゆらり、赤い羽根が動いた。びちゃびちゃと紅い雫が落ちていく。
赤く、赤く、広がるそれはまるで華のよう。まるで檻のよう。
椿は鳴く。鳴く。美しく、不快に。
赤い羽根。
紅い羽根。
飛べない羽根。
それはまるで華のよう。
それはまるで檻のよう。