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「あ、そうそう。順調に体育祭準備を進めているところですがみなさん、大切なお話があります」
わざとらしく真面目な顔をして会計が切り出した。
「予算が足りません」
お金持ち学校とはいえ、一年の予算は決まっている。
足りないなら自腹で出しまーす☆なんて方法は流石に認められないようだった。
「はあ?今年の運営は業者から生徒主体に切り替えた結果、例年より費用は低く抑えられるはずだろうが?」
「いやいや、かいちょーにもその都度書類回してたでしょ? 相手方へのキャンセル料とか、」
幸が壊した備品についてとか。
その台詞は生徒会室に沈黙を生み出した。
ああ…と生徒会の皆様が遠い目になる。
「俺もね…いけんじゃね?って思ったんだけどね…。結構高い物やっちゃってんだよね…」
「ご、ごごごごごめんなさい……!」
流石の島幸高も平謝りである。うん、島幸高、根は悪いやつじゃないので、自分が納得できることはきちんと謝る。その分、納得できないことについては癇癪起こしやすいのが欠点であり、島幸高が島幸高である所以だ。
「わ、わざとじゃないんだって!!前見づらくてうっかりぶつかって陶器割っちゃったり、つい力入れすぎて壊れちゃったりとかして…!!」
「幸高力強いんだね」
「そんな高価なもの触ったりしたことないから、力加減わからなくて…」
そういえば、見た目から想像つかない怪力の持ち主だったぬ。
じゃあ触らなければいいのに、と言えないほど反省しているので、晃希くんはツッコまないであげるのだ、優しいですねえ。
嫉妬してるから仲良くお話したくないとか、そんな理由じゃないよ、本当だよ。
「もちろんその都度反省文はもらってるし、済んだことはいいんだけどさ〜、じゃあどこ削るかっていったらこれからの出費じゃん?」
ばさりと会計が机に取り出したのは、各部活からの予算請求書だ。
「出せないものは出せない。けど、そう簡単にみんな納得なんてしないしさ〜」
「それを納得させるのが会計の仕事でしょう?」
副会長があまり議論をする気もなさそうに足を組んだ。
「そうなんだけど、流石に額がさ〜」
書記が取り出した書類を副会長に回す。
「ほら、ここの部長は確か峯くんと知り合いじゃないですか」
「じゃあ次の会議峯も参加するか? 必要なら、また関係者集めて話通しておくが?」
と、ついには会長までその話に乗りはじめる。
島幸高の失敗を取り戻すことはいくらでもできる。会長は言ったし、それは真実なんであろう。
けど、それで島幸高はのんびりお部屋で待機だって?
「それは違うんじゃないの」
みんなの視線がストトトッと突き刺さった。
「島幸高が原因なら、生徒会の皆様じゃなくて、島幸高が謝って回るべきですよねえ」
反論がくるまえに、隣の柚弦の腕を掴む。
「あと俺と柚弦も一緒にいきまーす」
「あはは、晃希なら言うと思った〜」
突然の参加決定にも関わらず、にこやかな笑顔とともに了承です。流石ゆづるんである。
止められないとわかったのか、会計が項垂れた。
「……これ俺も行かなきゃなんでしょ…? 幼稚園の引率かよ…」
まあ恨むなら自分の役職を恨んでくださいな。
「わ〜、めっちゃ楽しみ」
謝りに回るって言ってるのに、そういうところだよ、ゆづるん。仕事人の生徒会の皆様がドン引くところ。
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