04
なんか色々テンションがおかしくなった時、ガラッと勢いよく教室のドアが開いた。
「すみません、せんせっ!ちょっと、美術室寄っててっ、……て…?え、あ、自習?え?」
「ゆっ…!」
「柚弦!!!」
ぐおお転校生!!!
ようやく会えた柚弦に色々癒しを求めて近寄ろうとしたら、見事に転校生に先を行かれた。近づいてくる転校生に対して、走ってきたのか肩で息をしてぽかんとしている柚弦。ちょっと乱れた茶髪と、ずれかけた緑フレームの眼鏡が頑張りを伝えております。俺だったら遅刻だとわかった瞬間歩く。
「柚弦っ!一時間目は自習だぞっ!!!」
明らかにピンクの花を飛ばしたまま転校生が柚弦に抱きつい、…抱きついいいい!!!
「…へこんでねぇでお前も行ってこいよ、ダーリンだぞ」
「致命傷ううう…」
ポンと肩に手を置かれたけれど、それどころじゃにゃー。
俺だってそんな何回も抱きついてないのに…!
転校生、流石俺のライバル、手がはやいぬ。
負けないと誓って数十分で負けました…。
へこんでる俺とは対照的にニコニコと柚弦にくっつく転校生。
「柚弦、絵の具の臭いする…」
「あぁ、ごめん、臭いだろ?朝部活寄っててさ」
臭いつくからくっつかない方が良いよって優しく転校生を離す柚弦。
ちくせう笑顔が優しい、ちくせう笑顔がやわらかいぃ…。
あの転校生がおとなしく離されてるよう、わかるよ転校生、だって柚弦だもんねぇ。
「あ、こ、晃希に聞いたっ、展覧会出すんだろ!?」
「ん、そう。今頑張り時かな」
にぱっと笑う柚弦に転校生が真っ赤に固まって動かなくなった。
取り巻きだけは面白くなさそうに柚弦睨んでるけど、多分柚弦気づいてない。
…え、なに柚弦最強?
「っていうか晃希、自習なら連絡しろよー」
「!」
口調は責めてるけど、にこにこと笑いながら脇腹をくすぐってくる柚弦に、固まっていた教室の空気が完全に戻ったのが分かった。
さささ流石柚弦最強だ!
「つか柚弦お前、絵描いてる時は電話鳴らしても気づかないだろー!」
「そうそう、晃希が時計見てそわそわするなんてレアだぜレア!!」
「あっはは、そうかも、気づかねぇかも、責めてごめんなー、こーき」
調子を取り戻したクラスメイトにやんや言われながらにこにこしてる柚弦に、こちらとら心臓ばっくんばっくんなんですけども。
「…や、というか、あれは責めてる言わにゃー」
「あ、まじ、言わにゃー?」
良かったー、ってか自習で良かったーなんて言って笑う柚弦に、ぽけっとさっきの転校生みたいに身体が固まった。
く、口調…!!
ぬおお口調…!自分の口調にときめいたのは初めてでっす、初めてでっすよ!
え?顔真っ赤にはならにゃー、だって一ヶ月分の経験値あるからね!
「高南、なんか耳だけ赤いぞ」
うるせぇい。
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