02

「なあ、聞いてる?」

「ぬーん」

思考を飛ばしていたのに気づいたのか転校生が俺の服の袖を引っ張る。

のびるー。ていうかそんなことしてもかわいくないんですよねえ、見た目がもっさりオタクだから。

けどおそらく転校生も美形なんだろう、俺のが身長高いから、転校生の長いまつげが髪の隙間から見え隠れする。

顔隠す意味がわからぬ。そしてこの見た目でかわいいと思える転校生の取り巻きが謎である。

だから睨まないでよう、後ろの二人、俺かわいいとか思わないから絶対。俺がかわいいと思うの1人だけなんだからねえ!いや、どっちかって言うとかっこよいですけども!

「…とりあえず袖伸ばさないよーに」

「あ、あぁ悪いっ。けど返事してくんない晃希が悪いんだぞ!」

「ごめんぬー」

とりあえず素直に謝るこーきくんえらいね…。

「で、さ。聞きたいことあるんだけどっ」

「なーに」

促せばまた真っ赤になって口ごもる転校生。

まるで俺に恋しちゃってるみたいでっすよ、うへぇ。

だけどそうじゃにゃー(だから視線が痛いって取り巻きくんたち)、転校生が思い浮かべてるのは、

「…柚弦、今日一緒じゃ、ねえの?」

………やっぱり。転校生の口から予想通りの名前が出て頬がひきつる。

というか名前呼びとか!ちくせう…。

「おい、晃希?」

「柚弦なら、確かえっとー、柚弦、そう柚弦は今度出す展覧会用の絵描くって、柚弦は朝から部活―」

妙に悔しくて、無駄に名前を連呼してみた。とはいえ素直にライバルに情報を与えちゃう俺優しい…優しいよ俺のばか!

「そっか、部活か!なかなかこないから心配してたんだ、ありがとな!」

にかっと笑って(眼鏡であんま見えないけど)、また大声で取り巻き達のとこへ戻った転校生にへろへろと手を振る。

お前には負けにゃー!ライバルめ…とか念じたけど多分伝わってないであろう…。


そう。モテモテ転校生が想いを寄せる男、柚弦。
峯 柚弦。
それこそ俺が入学式で一目惚れした相手だったりする。

一ヶ月たって、地道に近づいた俺は見事柚弦の親友ポジションげっちゅ。俺これ青春だ、恋してる!な時に現れたのが、転校生。
よりによって俺の運命の相手柚弦に惚れた。

けど転校生はその想いを自覚してないらしい。あれだけ真っ赤になっときながら、とは思うけども、転校生の中では男同士はないらしい。

ふっふう、取り巻きざまあとかちょっと思っちゃったよねぇ、だっていちいち睨むんだもんねぇ。転校生が(柚弦の情報得に)俺のとこ来るのが気に入らないみたいでっすよ。俺は柚弦一筋に決まってるのにねぇ。…うへ、何これ自分で言って照れる!

ともかく島 幸高!俺のライバル!!柚弦を選んだ見る目だけは褒めてやるぬ!けど、恋人ポジションげっちゅは負けにゃー!!



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