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「はいはーい、紅茶ですよ〜かわいいこーきくんが作った紅茶ですよ〜」

「いやほとんど作ったの俺だからね☆ていうか君そういえば何もしてないじゃん」

そういえばそうだねえ!よくわからない会話されただけだったねえ!どうせ会長の差し金なんだろうけども!
仕方ないので、紅茶を配るのだけ手伝う。

「ありがとな!!晃希!!!!」

口しか見えないけど満面の笑みで島幸高だけお礼言った。島幸高だけ。あと普通にそこ置いといてって顔された!!ライバルに感謝したらよいのか複雑な心境でっすよ!というか皆様飲まないの…本当にあの話するためだけにこーきくん連れ出されたの…フリでも飲もうとしてあげてよ…新人に気を使ってあげてよ…。

「生徒会の皆様ってめんどうでっすよねえ」

「それ君にそのまま返すんだけど」

「まあ言っとけよ」

椅子にふんぞり返って会長が笑う。あ、紅茶飲んでくれた。俺何もしてないけども。

「いつか俺たちの素晴らしさを知るだろ」

うーん、仕事は有能だけども、あの話を仕切ってるのが会長っぽいから微妙なとこですねえ。

「今のところ会長はカッコ悪いなって思ってますよ〜」

「は、イケメンが必死なんざカッコイイだろうが」

何について言ったのか会長は分かったのか、迷いなく答えた。ここが会計とは違うとこでっすよねえ。たしかに会長は奪ってでも欲しいものは自分のものにするイメージあるぬ。良いか悪いかは別として。

「まあ言われずとも俺は頑張りますけども〜」

「いけいけ高南!」

「ふれふれ高南!」

わああ庶務ズすっごいやる気ない声援ありがとう。寝転がってこっちを見てすらいないけども、一応ありがとう。

何の話?って当事者は副会長に聞いて誤魔化されてるし、なんていうか生徒会は島幸高包囲網だったんだねえ?もう見事なまでの包囲網だねえ?それはこーきくん居づらいはずだあ。

恋は策略ですか。これだからエリートはねえ。体当たりしてる俺が健気に思えてきます。

「つーか、本題だけどよ。総会でお前壇上に立たせるから覚悟しとけよ」

「あれ、俺は?俺も立つよな?」

うへえって顔しちゃった俺とは反対に島幸高がうきうきと手を挙げた。すごいぞ〜この子鈍いぞ〜。これだけ学園から敵視されてるのに余裕だぞ〜。まあ生徒会の皆様が守ってくれるからねえ。

「…幸高、立ちたいんですか?」

「だって、俺も補佐じゃん!!」

副会長が苦笑してる。まあそうでっすよねえ!俺に集中させて島幸高から目を逸らせようって思ってたんだろうしねえ!頭良いくせにこういうところはわかりやすい。

「いーんじゃない?」

「僕らで挟んでればオセロみたいに一緒になるかもよ!」

「ほんとか!?」

ちょっとおバカさんだけども、他の生徒会の皆様に比べて和むからツッコみはしにゃー。
書記なんているけど一言も喋ってないねえ、キャラ濃いのか薄いのかはっきりしてほしいねえ。

「ま、つーわけで立ってもらうからな。めげんなよ」

おお、会長に励まされた!実はいい人かもしれにゃー!!

「卑屈になられても扱いづらいですしね」

うん、副会長はそう言うと思った。

キャッキャ盛り上がってる島幸高と双子をちらりと見て会計がひらひらと手を振る。

「伝えることは伝えたし、君帰っていいよ☆」

帰れるのは嬉しいけども会計うにゃい☆
完全に邪魔者ですねえはいはい。それに生徒会的には自分たちが島幸高に構ってる間に俺が柚弦と仲良くしてれば一石二鳥なんであろー。

完全にこーきくん駒扱いですどうもありがとうございます。

「えっ、晃希帰るの!?」

「いる理由がにゃー」

「だって俺たち友達だろ!!一緒に遊ぼうぜ!!!」

そんながっしり腕を掴まれても困っちゃう☆
えへへ、島幸高には見えてないかもしれないけども、俺を引きとめた瞬間の生徒会の皆様の嫌そうな顔ですよ。明らか邪魔だ!って顔してますよ。だからねえ?新人にはもっと気を使ってあげてね?

全く、こんなに居づらい空間なのに友達なんて、島幸高は友達をなんだと思ってるぬ。

「俺は用事があるので帰りまーす」

柚弦。柚弦。はやく会いたいな。癒されたいなあ。そしたら大丈夫だよ。

「ほら幸、ネコちゃん用事あるって」

「えー!!俺より大事なのかよ!友達なのに!!」

ライバルです。柚弦は渡さにゃー!!

内心叫んで、会計が島幸高の気を引いてる隙に、生徒会室を飛び出した。


ゆづる。
もう部活終わった時間だな、部屋いるかな、何してるかな、ご飯どうしようかなって、迷ってるかな、俺は一緒に食べるかなとか、誘ってみようかなとか、俺のこと、少しでも考えててくれるかな。

走った勢いのままチャイムを鳴らす。

「はーい?」

「ゆづるん!っておまえ2分の1かああうわあああ!!!」

抱きついた瞬間飛び退いた。うわああ柚弦じゃにゃー!!!俺のだいすきな柚弦じゃにゃー!!!

「おい、なんだうわああってオイ。俺だって泣くぞ」

「柚弦は?」

「聞けよ。…柚弦は今いねーよ」

「どこ?」

「あ?あー、友達のとこ行ってくるって言ってたか?」

ともだち。

そっかあ、そうだよね、柚弦は友達いっぱいだし。俺だけじゃないし。そりゃ俺いなかったら他の友達のとこいくかあ。そうだよねえ。今は仲良しでも、俺よりずっと柚弦はここにいて、知り合いもいっぱいいるんだもの。生徒会と関わって面倒なことになってる俺とわざわざ関わる必要なんてにゃー。

「おーい、なに考え込んでんだよ」

「ぴゃっ」

でこぴんされたあ!!容赦なくされたあ!!落ち込んでたのに俺可哀想だあ!

「勘違いしてんなよ。もうすぐ帰ってくんだろ」

「ぽ?」

「あいつ、今日の晩御飯パスタか日替わり定食か悩んでたぞ」

「ほう」

それはかわいい。

「で、決まらないから、晃希に協力してもらってどっちか一口貰おうかなって言ってた」

「あらかわいい!!」

いくらでも協力する!するする!!柚弦が俺と食べよって思ってくれてた!!元気湧いてきた!!柚弦すき!!!

「…お前ほんと単純だな…。あ、」

「あ?」

「あれ、晃希だ。もう今日の仕事終わり?」

「柚弦!」

帰ってきたー!!
ほわほわと柔らかく笑顔が向けられて、じんわり身体が暖かくなる。息がしやすくなる。

「今日も一日おつかれさま!」

「きゃーー!」

ぐしゃーっと頭を撫でられる。えへへ、えへへへ!おつかれさま!一日の疲れも吹っ飛ぶ!!すきすき!!

「柚弦ー!」

思いっきり抱きつけば、びっくりしながらも、背中を優しく叩いてくれる。
会いたかった。柚弦。生徒会に行ってたのなんて大した時間じゃなかったのに、会いたくてたまらなかった。

「晃希?」

「うん」

「部屋、いこっか」

「うん」

「ほんと、なんだかなあ」

溜息をついて2分の1は「じゃあごゆっくり」と自分の部屋に戻っていった。
2人きりにしてくれたらしい。さすが2分の1である。

「さて柚弦さん、頭を撫でてください」

「ん?うん」

「よろしい」

癒しだ…人類全て柚弦だったら大変なことになる……マイナスイオン多すぎて世の中大変なことになる……。

柚弦にべたべたごろごろしながらくつろいだところで。

「ゆづるん、ゆづるんは、俺が生徒会の皆様の関わるのはいいって思う?」

ただ黙ってた俺がようやく会話したのに柚弦はちょっと目を見開いてから頷いた。

「うん、だって、今まで俺とか佐久間ばっかだったし、いいと思う」

わああ、笑顔だなあ。素敵だなあ。
俺は、離れたことちょっと後悔しちゃって、その間2分の1でさえ仲良くしてたらやだなとか思っちゃうのに、ゆづるんはそんなに笑って、みんなと仲良くねって言えちゃうんだもんなあ。そして柚弦は友達、いっぱいいるもんなあ。

「本当にそう思う?」

続けてきいたら、少しだけゆづるんが言葉に詰まった。

「…そうでもないの?」

「うーん、だって、ゆづるんは別だからわからにゃー。生徒会のみなさまも、まあある意味面白いけども」

「そっか。そっか、ごめんね」

「? 生徒会のことは気にしなくても、」

「今のごめんねは違うよ」

「うん?うん。そうなの」

「うん。ちょっと押し付けちゃったね」

でも、本当のところどうなんであろー。
柚弦と距離を置こうって思ったとき、俺はきっと柚弦以外とも関わらなきゃって思った、気もする。

俺は、ゆづるんが大好きで、ゆづるだけで良くて、でもそれは俺だからで。
ええと、だから、俺もちゃんと人と関わって、皆の中でも柚弦がいいって思わなきゃだめかな。いや、思ってるけども。

「心配しなくとも、なんだかんだ俺はお友達いるよ。たしかに柚弦が一番最初の友達だけども、クラスメイトもみんないい人だし、楽しいし、大丈夫だよ?ちゃんと仲良くできてるよ」

「…そうだよね、佐久間だっていつもいるし、委員長は結構ざくざく物言うし、」

「クラスメイトノリいいし、迷惑かけても怒らないし」

「あは、そうだね、もう、みんなと仲良し、なってたね」

「そうですよ」

一息ついて、柚弦が続けた。

「三鷹とか、高橋ともそうなれると思う?」

「なれるよ」

「…っはは、びっくりした、そっか、そうだね」

びっくりしたのはこーきくんもですよ。やっぱり気にしてたんだね。そりゃ気にするかあ。それなりに上手くやってきたのにいきなり敵意向けられたら。

「幸高とも仲良くなれるかな」

「……」

あれれ。
わざとですかねゆづるさん。嫉妬心メラメラしちゃいますよ柚弦さん。

「なれるよお、ゆづるんのイケメンぱわあでなれるよお」

「あはは、思ってないでしょー」

「思ってるよお」

「そっか、こーきが言うならそうなんだろうね。あは、なんかいっぱい質問しちゃった」

「されちゃった」

「俺もしゃっきりしよーっと」

「さらにイケメンになろうというのかお主!」

「ええ?」

正直、生徒会は居心地悪い。価値観だって合わないなあって思う。
でも柚弦が、仲良くした方がいいって言うなら。そういって笑うなら、俺もちょっと頑張ってみようかなあ。


「生徒会とお友達になったらどうする?」

「え?差し入れ行きやすくなるね」

「がんばる!!!!!」


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