39

「高南が補佐ぁ?まあいいんじゃねーの」

「軽すぎるう!!生徒の学校生活かかってまっすよ!?」

俺様せんせーはぽりぽりと首の後ろを掻いた。なんてやる気のにゃー!!

「だから言ってんだろ、ほら、高南やればできる子だし」

そんなことも確か言いましたね!!わあ!自分で自分の首をしめたあ☆

「も〜、ネコちゃん、往生際が悪いよ?もうやるって言っちゃったんでしょ〜?今さらやらないことになってもしょうがないじゃん?」

「たしかに!」

いやまあいいんでっすよ、やることに関しては!男に二言はにゃー!!ただし!ただしだよ!

「メンツが不安すぎるわ!」

バーンっと目の前の無駄に高級そうな机を叩く。と、目の前の俺様金髪に睨まれた。会長こわいよー!
そう、何を隠そう、こーきくんはただいま生徒会室に来ております。教室から拉致られたのであった!
俺を囲む生徒会メンバーと俺様せんせー。
これがいわゆる四面楚歌☆わあ☆

「いいから聞け、説明が山ほどある」

「はいごめんぬ」

内心テンションを上げてみてもどうにもなりませぬ。
会長副会長はめんどくさそうだし、書記はあらぬところに視線彷徨ってるし、会計は明らかに楽しんでにやにやしてるうにゃいし唯一興味津々な双子だけが救いでっすよ。同学年特典ですかね。

「いいか、理由はどうあれ、てめえは生徒会の一員なんだ。迷惑をかけんなよ」

「初心者にはもっと優しくしてほしいです」

会長に素直に告げると舌うちされました。つらいです。

「理由はどうあれっつったろ。意図せぬ推薦だろうが、人気投票だろうが生徒会にはかわりねえ」

うう。なるほど。このひとたち、一応仕事に責任感あるのか。島幸高構いながらも仕事してるし、初心者は双子も一緒。

「って一緒なわけにゃー!!」

「うおっ!」

うっかり叫んでも島幸高以外反応ないとか!
まったく年数で誤魔化されるところでした!そもそもこのめんつ、幼等部からここに通ってるし?この学園の常識知り尽くしてるし?マナーとか教養家で教わってるし?全然土俵ちがうよう!うううそしてなんだか褒めてるようでこーきくんいらっとしてきました!!

「でもがんばります!」

あんまりうだうだしてると会計あたりにからかわれるからねえ!

「晃希もこういってるし心配ないって!」

うん、ありがとう島幸高、でもね、心配はあるよ?ねっねっ?君関連でね?

ぺたーと笑顔を張り付けたまま黙って聞いてると、島幸高が付け足した。

「それに、特権もあるんだし、晃希ならうまくできると思う」

「…ぽ?」

特権?特権とは、島幸高が一つで良いと豪語したあの?
それを俺に使わせるとな?
思いっきり教室では自分が使うよ宣言してたような?ともかく、島幸高がどういうつもりで特権一人にしたかは知らないけど、そういうことは承認する教室で言って欲しかったなあって、こーきくんは思います。

こんな四面楚歌な状況でそんな提案されてもねえ!


「あ?こいつ外部生だろ?勉強には問題ねぇだろ」

「それにうまく使えるとも思えませんし」

「もー幸ってば優しいんだから☆」

「「幸高が使えばいいじゃん?」」

「ん…」

突然話し出した!!みんな一斉に話し出した!いいよ一人で!言いたいことは十分すぎるほど伝わってるよ!!
あんまり仕打ちひどいと泣いてやるんだからねえ!!

「え、じゃ、じゃあ晃希に選んでもらおう!晃希はどっちがいいんだ?」

わあ、これほどまでに選択肢のない質問は初めてでドキドキしちゃう☆

「なしでがんばります」

即答ですが何か。空気の読めるこーきくんですが何か。

「そ、そっか、でも晃希だし、結局なんとかなるんだろうな」

なにその期待!?ライバルのくせに何事!?

「言っとくが、特権があろうとなかろうと仕事量に差はつけねえからな。自分で言ったんだ、覚悟決めろよ」

あ、なるほどなるほど、これは補佐任命時と同様に立候補だから容赦はしないんだぜ☆パターンですね!
まあ、なるようにしかならぬ!!俺には柚弦という癒しがあるからへっちゃらです!

「と、いうわけで仕事内容だけど、まあ口頭でするのもなんだし、これ、目通してきてよ☆」

バン!と会計が机に書類の束を置く。みるからに面倒である。

「あれねー、僕らが作ったんだよー!」

「高南のために頑張ったんだよー!」

「わーやったー」

と、喜んでみせる晃希くんは順調に大人へと成長しているようです。あからさまに嘘だろとかツッコまないのが優しさです。

うーん、双子なりの茶目っ気なのか、俺で遊んでるのか。
会長副会長は言うまでもなく絡みづらいし、会計は安定のうにゃさだし、書記はなに考えてるかわからんちんだし。

居づらいなあ。早く柚弦の隣に行きたいよう。


「生徒会かあ」

授業も終わった放課後、書類を持ってぽてぽてと歩く。拉致られたから鞄がそのままなのでっすよ。誰か一人くらい気を使ってくれてもいいよねえ?生徒会頭いいはずなのに気を配れないよねえ?まあ島幸高の荷物は持ってたけどねえ!!差別か!あからさますぎるう!

はあ〜とつい溜息をつきながら教室の扉を開ける。

「あ、おかえり!」

「ゆっゆづるん!!」

うわああ!柚弦!俺の癒しの柚弦が待っててくれただと!?
嬉しい。いいもの、生徒会メンバーはいいもの、俺には柚弦がいるもの、俺の大好きな柚弦が。

「待っててくれたの〜?」

「うん。それ、仕事の書類?もうあるんだ」

さっき受け取ったばかりの書類。見せて見せて〜という柚弦に渡すとおお…とか言いながら読み始めた。その間に鞄をとりに机へ。

なんだか柚弦に気持ちバレたんじゃないかってどきどきしてたときとデジャヴだあ。そのときは役割が逆だったけども。そのときのことを思い出すと、今でも苦しい。


「ごめんね」

「ふえっ!?」

突然謝られて、考えていたことがことだっただけに、びっくうう!と肩がとび跳ねた。

「補佐。晃希はただでさえ外部生なのに」

ああ、それかあ。ばくばくした心臓を落ち着けるために深く息を吸った。

「俺が決めたことだし、柚弦が謝る必要なんてにゃー」

俺はだって、柚弦が絵かけなくなっちゃうほうが、やだよ。

「出来る限りのことは俺も手伝うよ」

「いいよう柚弦、そんなに気にしなくても」

「気にするとかそういうんじゃなくて、さ」

ふわ、と優しく柚弦が笑った。

「俺がそうしたいんだ、晃希は、親友だし」

きゅう、と心臓が縮こまった。言いだしっぺは俺だし。親友で嬉しいけども。やっぱり自分で言うのと、柚弦に言われるのとじゃあ段違いだ。
何も答えられないままふにゅ、と曖昧に笑うと、柚弦は小さく苦笑した。

「…おせっかいかな」

「う、ううん!嬉しいぬ!!」

ちょっとだけ苦しいけども、柚弦の傍が一番安心する。居心地の悪い生徒会室にいた後では特に。やっぱり俺には柚弦なんだなあ。

「晃希」

「ん?」

「ありがとう」


ふわお。だめだこれ。
すきだ。


「かえろっか」

「うん」

本当はこのまま手を繋げたらな。大変そうだよ〜て、抱きつけたらな。甘えてもいいひとに、してもらえたらな。
いつかそうなれるように、今はがんばろ。
柚弦はやっぱりすごいなあ。何でも頑張れる気がするんだ、ほんとだよ?


とか。
思っていた時期が俺にもありました。


「何だこれくそ忙しい」

「いいから手動かせ」

「やってます」

がしょんがしょんとひたすらホッチキスを動かす。そうだね、こーきくんの得意分野だねえ。
けど俺様せんせーのとこでやったのより量が違いすぎるわ!!なんだこれ!紙の海か!
俺がひたすら綴じている間に、ばたばたと周りが慌ただしく走り回る。

「あっれ、あれれ?ねえちょっと、俺の机にあったはずの申請書知らない!?あれ今日中に出さないと体育祭の種目減るんだけど!?」

「知るか!てめえの書類くらい管理しやがれ!!」

「してたってー!だれ、俺の机に大雑把に書類置いたの!!」

あの会計ですら語尾に星がないという驚きでっすよ。

「え、あ、お、俺、かも…ごめん!俺も探すから、」

「わー!幸かあ!幸ならいいや許す!!いいよ自分で探すからそっち頑張って〜」

「う、うん!」

そして島幸高に甘いのは相変わらずです。俺だったらボコられるね☆

「もしもし、先日連絡いたしました光紅高校の者ですが、依頼していた件は、」

「キタ―――!!会場無事に!」

「日付通り確保―――!!」

「双子うるさい!…もしもし、いえ、失礼しました、」

あちこちで各自の仕事が飛び交い、書類が散らばる。というか会計はもう少し丁寧に書類探せ。
BGMとしてカタタタタタッ!と一定のスピードで響くキーボードのタッチ音は普段無口な書記のものだ、なにその俊敏性。

がしょがしょと閉じる俺の目の前には空になった針入れの箱の山。なんで金持ち高なのにこういうところはアナログだ!?配る側と受け取る側の人数比おかしいよ!?

「おい高南!それ綴じたら速攻で配布箱に置いてこい!邪魔だ!一回で覚えろよ!1Sから3Dまで、40、40、41、42、36、39、40、40、40、34、40、42、40、39、31部数。わかったな!?」

わかんねーよ。ついグレてしまったこーきくんです。
なんでこの会長全クラスの人数淀みなく言えるのであろー。
しかしこの状況でもう一回言ってね☆とかいったら舌打ちされること確実なので大人しくこーきくんは行ってまいります。

というのもね!こーきくんには初日に渡された書類があるからね!それ見た柚弦が、最初は生徒総会の議事録作りみたいだから、一応各クラスの人数教えておくねって、メモってくれたのでっすよ!どんぴしゃ!流石柚弦、さっそく助けられたよう!

まあ問題は、これ全てを一人で運ぶってことですかね。生徒会室に繋がるエレベーターに乗れるのは役員だけだし、俺特権ないからエレベーターにのせてもらえないんだぬ。大人しく階段で往復しますはいはい。

「いってきまー」

まあ生徒会室もそんなに好きでないしねえ。仕事してるときは普通に指示出しとかされるから、最初のような居心地の悪さは薄れたけども、流石に島幸高の甘やかされ具合にイライラしちゃうからね!えへ☆




prev | next


back main top
 
×
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -