01
青春。
俺の高校生活はまさしくその一言につきる。
けれども高校に入学してわずか一ヶ月、平和に過ごしていた俺の青春が脅かされはじめた。
季節外れの転校生によって。
「あ、おはよう!!晃希!!」
教室に入った途端大声で俺の名前を叫ぶ転校生。
晃希って名前はこのクラスで俺だけなので、もっと小さい声でよいよー、と頑張って伝えたこともありました、完全に無駄な努力でした、こーきくんかわいそう。
思わずうぉお…と顔をしかめれば鈍感なのかなんなのか、何だその顔って笑われる。
生まれながらの金髪金目、時折英語で話しかけられちゃう俺の顔が!笑われているよお…。
うん、自分で言うのはタダなので、ちょっと盛ってみましたけども。
…この転校生こそが俺の幸せの日々を脅かす張本人、しかも自覚なし。
光紅高校。
とかいてコウコウ高校と読むこの学校。そんな名前にときめいてしまった俺は、地味にがんばったお勉強の末ここに高校から編入した。というのも、ここコウコウ高校は幼稚園から大学まで続く名門高だったりしちゃったのだ。
お金持ちのお坊ちゃんが集まる全寮制の男子高校。
正直うへぇとは思ったけれど、なんていうか俺が全てを知ったのは合格してからだった。
名前に一目惚れすぎて偏差値くらいしか調べてなかったのでっすよ、えへ。なんていうかお金は意外とあったらしく、親も俺に似て適当で(ていうか俺が親に似て?)、結局ここに入学してしまったのである。
あれ、寮?男子高なの?というか入学金とか高くないかあ、なんていっぱいあった疑問はすぐに頭から抜けてった。
ともかく嬉しかったのである、コウコウ高校行けるの。光紅、高校、略して光高、すなわち全部コウコウ!!面白すぎる、っていうか、うん、認めようねぇ、中2病でっすよ。
面白い名前の高校に行きたいだけでした。
同級生に「高校は一緒じゃにゃー!決定打は名前だぬ!」とウインクとともにうきうきと告げてみれば、「ついでにその口調頭悪そうだから直してくれば?」となんとも辛辣なお言葉をいただいた。
高校としては名門だから、選択は褒められたけども、理由を素直にいえばみんながみんなこんな感じでこーきくん悲しいね?
でも後悔はしていにゃー。
何故って何故って、ここ一番大事なとこなんだけど、俺の名前が高南晃希だから。
こーこーこーこーのこーなんこーき。
もうこれ運命だよねえ…。
だから男子高の上にバイとかホモばっかだってわかったって関係にゃー!
そんな偏見もないしねえ。名前の魅力に比べたらどうってことないのです。
………というか。
というか。しょっぱな入学式で俺が男に惚れてしまったのでした、えへへ。
もうこれ運命だよねえ…。
そして運命というのは俺以外にも出会いを呼んでいたようで。
高校のアイドル生徒会のメンバー、さらには、モテモテメンズに運命の相手が現れた。
それこそが島 幸高。季節外れの転校生。
ぼっさぼさの髪に分厚い眼鏡、そんな見た目に反して無駄に元気な転校生は、人気者を次々と落としてみせた。
こんな見た目で、どうやってイケめてるメンズを惚れさせたのかは知らないけども、そこまではどうだってよかった。
正直自分ので手一杯で人の恋になんか興味なんてないし、転校生と関わる気だってなかったのに。
のにのにのにのに!!
「今日もなんか眠そうだなっ!昨日寝たの遅かったのか?」
何故、目をつけられてしまったのであろー……。
や、理由はわかってる、わかってるからこそ転校生と関わりたくにゃー。
「…顔は生まれつきなのでえ」
正直話したくもないぬ。
けど、無視は転校生大好きなクラスの取り巻きに睨まれたせいで出来なかった。転校生の運命の相手候補多すぎる。人間関係めんどくさい、相手するこーきくん超えらい!!
「あ、あの、さ…」
「…うん?」
大声とは一転、小さくなった声に転校生をみれば顔が真っ赤になってるのが見えた。
うへえ。やめてあげてえ。
様子が変わったのは後ろからでもわかるのか、転校生の後ろで俺を睨む二人とばっちし目が合ってしまった。
クラスの中心、爽やかバスケ少年高橋と、一匹オオカミ誰ともつるまないと有名の不良少年三鷹。
転校生が落とした美形集団のうちの二人。
いやでも俺は高橋みたいな腹黒を爽やかだなんて認めにゃー!
爽やかはあいつ一人で十分、ていうか十二分だもの!
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