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「単刀直入に聞くよ、覆面で俺の顔隠したぬ?」
「うーん…」
ざっくりと言えば柚弦が苦笑して頭をかいた。
「こーきくんだってそれくらいわかるよ。俺が、転校生と生徒会と一緒にいるせいで悪口言われないように、隠したんであろー!」
ぴしいと指差せば柚弦が両手を挙げた。
「ん、ごめん。…顔隠したくなかった?」
ちょっと見当違いのことを言う柚弦にへろおと机に顎を乗せる。
「そうじゃにゃー…。俺の隠しても、柚弦が言われたら意味ないぬ」
「だって覆面一個しかなかったし」
「そういう問題じゃにゃーーー!!!」
優しいのか天然なのかおバカさんなのか!
「柚弦だけが言われるくらいなら、俺も言われた方が何倍もいいに決まってる!」
「うん、ごめん」
「うひょ」
意気込んで言ったらあっけなく柚弦に謝られて、あまった勢いで謎の声が飛び出た。
「あはは、うん、ごめん。だからちょっと言い訳さして?」
「…仕方にゃー。許しましょう、はいどーぞ!」
ぴらぴらと手を揺らして柚弦を促す。雰囲気に乗ってえほん、と柚弦が咳払いをした。
「俺、ずっとここにいるからさ、知り合いも多いし、ノンケっていうのも割と知られてる。だからまあ、言われたとしてもなんとかなるかなあって思ってさ。けど晃希は高校からだろ?誤解とくの、大変だろうし」
うぬ。
まあ、たしかに。クラスメイトは事情わかってくれてたわけだし。
柚弦知ってる人なら流石に罵倒とかしなさそうだけどもももも!!
なかなか反論の言葉がでてこなくてじろおっと柚弦を見れば、真面目に語ってた柚弦がにぱっと笑った。
「って、嘘、ほんとは理由今考えた」
「ぬ?」
「や、なんか期待壊したら申し訳ないけど、俺も正直あんま考えてなかったんだよね。とりあえず、晃希の顔隠さなきゃ!とか思って満足してたけど、そういや俺も一緒だ!!ってみんなに言われてから気付いてさあ。やー、やっちゃったよね」
あはは、と笑う柚弦にへにゃあと俺の顔も緩んだ。
「おバカさんだー、このこおバカさんだあー」
「しっ!言わない言わない、あははは!」
ひとしきり笑ったあと、ひとつだけ気になったことを柚弦に切り出す。
「柚弦は、転校生どう思ってる?」
「ん?」
柚弦は転校生相手にも普通に接するし、もし普通のクラスメイトとして仲良くなりたいって思ってるんだったら、俺がそれ邪魔しちゃってるってことになる。
「仲良く、なりたいって思う?」
柚弦がなりたいんだったら、流石に避け続けられにゃー。
転校生はライバルだし、柚弦は渡さないけど、けどけどけど、仲良くするくらいは許すぬ。
だってだって、柚弦を見つけて、傍に行きたいって気持ちは、俺が一番知ってるもの。
俺が、一番。
別に柚弦が転校生と仲良しになっても、俺が恋人ポジげっちゅしちゃえばのーぷろぶれむでっすよ!!
柚弦の中のたった一人うちの、たった一人じゃなくて。
何人もいる中で、いろんな人を見て。
それで俺を選んでくれたら、一番嬉しい。
転校生に負けなければいいだけだもんねえ!
さあさあ!と背中を叩けば、柚弦がうーんと首をひねった。
「まあ、うん。同じクラスだし、普通に仲良くしたいなーとは思うけど…。うーん、どうしたい、って聞かれると困っちゃうな」
「?」
びっくり。
柚弦なら仲良くしたいとか、言うと思ってた。
「あはは、俺あんまちゃんと考えてなかったり。うーん、まあ、普通に…?」
「普通に?」
「うーん、普通に、接して、そんで仲良くなるかもだし、なれないかもだし、話すかもだし、話さないかもだし…。わっかんないなー、考えながら仲良くするとか俺出来ないみたい」
うーん、とりあえずがんがん仲良くしたいってわけじゃないらしい…?
「まだあんま話したことないからわっかんね。こーきんときもそうだよ?」
「ぬ!?」
突然俺の名前が出てがばあっと柚弦をガン見した。
「んーと、なんか仲良くなりたいとかなりたくないとかじゃなくて、話してー、あ、なんか楽しいなー、話すの面白いなー、みたいな。うん?最初わかんないけど結果仲良し!みたいな?」
ううううううううぇええい!!
さらっとなんか言ってくれたよ!
「仲良し!!」
「うん」
「仲良し!!」
「ん、あはは、何度も言うと照れるって」
ふ、ふへへへへ!!
なんかよくわかんないけどちょっっっっっとだけ転校生好きになった!
ナイスアシスト!
ライバルありがとううう!!
そして柚弦だいすき!!
頑張るよ!仲良しを超えた仲良し目指すよ!
がばあっと両手を挙げる。
今思えば誰もいない放課後の教室って、なんていうシチュエーション!!
ぴんぽんぱんぽーん。
『オイ、1A峯柚弦!!数学準備室来いっつっただろうが!!!』
「うおおうっ!」
「ぬおおおおおお…!!!!」
突然の校内放送で怒鳴る俺様せんせーにがっくうとうなだれる。
なんて良いタイミングで邪魔をするぬ…!
「あ、やっべ、忘れてた…。ごめん、俺行くな」
「ぬーん…」
ぱたぱたと走って行った柚弦を涙をのんで見送った俺、切ないぬ…。
俺様せんせーのおバカー…。
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