18
「大体、覆面なら俺が幸高に似合うの作るぜ?まあ幸高なら何でも可愛いけどなー」
慰められてちょっとうっきうきな俺の腕から転校生の手をとり(よし、珍しく良いことした!)、爽やかに言いきった高橋にわかりやすく転校生のテンションもあがる。
「本当か!?俺のために?じゃあ柚弦、俺、柚弦に作ってもらいたい!!」
「ぅお、俺!?今の流れで俺!?」
突然転校生に名指しされた柚弦が、やばい今俺高橋と三鷹にめっちゃ見られてる!って笑うけど、うん、ちょっと俺今取り巻きに同情したよ!
折角作るって言った高橋を一瞬のうちになかったことにしたよ!むしろ今柚弦を睨める高橋の精神力尊敬してあげてもいいよ!俺も柚弦とラブラブ目指してがんばるよ!!
「柚弦そういうの得意そうだし!な、いいだろ!?」
しかしそこは晃希くんが許しませーん。
ぐだあっと柚弦に寄りかかる。
「柚弦は展覧会で忙しいからダメだよう、頼んだら柚弦に迷惑かかっちゃうよー」
普通にお願いしたら多分柚弦いいよーって言っちゃいかねないからねえ!
柚弦の時間は俺が守るのだ。
というか柚弦の手作り持ってるのは俺だけで十分ですからね?
「幸高、こう言ってることだし、もう行こうぜ?」
めげない高橋が転校生をずるずると押して教室を出ていく。
高橋ナイス…!!
なんかいっぱい転校生喋ってるけど、聞こえませーんと耳を塞ぐ。
ふっふっふ、ライバルは積極的に潰していく所存!
ブラック晃希くん降臨!
ぬるーんと腕をまわして降臨のポーズとったけど、誰も相手にしてくれなかった。
「…こんな軟弱男、構う必要もねえ」
三鷹が鋭い目で柚弦を睨みつけて、おまけに舌打ちまでして高橋と転校生の背中を追いかけていった。
笑顔を消して目を伏せちゃった柚弦に変わって、べーとその背中に向けて舌を出しておく。
「俺、なんか三鷹にしちゃったかなあ」
「ゆづるーん…」
仲、そんなに悪くなかったのになあ、って悲しげに呟く柚弦に俺の眉毛まで下がる。
「きっとあれだぬ、遅れてきた反抗期!」
ほんとはほんとは転校生だいすきな三鷹が柚弦に嫉妬してるだけなんだけど、そう言ったら。
ただでさえノンケの柚弦は、やっぱり男同士なんて嫌だって、そうマイナスに思っちゃうかもって。
ブラックな晃希くんは、だいすきな柚弦にもうそをついた。
「はは、そっか反抗期か。三鷹いっつも反抗期っぽいけどなー」
うそといううそじゃなかったけど、柚弦は笑ってくれた。
ちくせう三鷹のおバカさんんんん!!
そして大したフォローもできない俺のおバカさんんんん!!!
ぬおおおと頭を柚弦のおなかにぐりぐりと押しつける。
「ぷしゅん」
「え、今の何の音?」
「ブラックが抜けた音ですかねえ」
柚弦に浄化されました。
そんなはてな出されてもブラック晃希くんは教えてあげないんだからねえ!!
けどブラックでなくても、お説教は出来るんだよってことで。
「さあさあここに座りなさいな、柚弦さん」
ぺしぺしと前の席の椅子を叩く。
よいしょ、と言われたまま逆向きに椅子に座った柚弦と机を挟んで向き合った。
「な、なんでしょーかこーきさん」
「しらばっくれるでにゃー!!」
ででーんと柚弦がくれた覆面をポケットから出す。
「さあ吐いてもらおうか…」
「げろお」
「そんなノリはいらないぬ」
か、かわいいだなんて思ってないんだからねえ!!
ごめんごめんて、そんな苦笑されてもかわいいだなんておもっ、思って、おも、かわいいいいい!!!
あっれ、あっれ、爽やかなくせにかわいいだなんて、レベル高い…!!
流石俺の運命の相手!
「はっ!危にゃー危にゃー!!あやうく誤魔化されるとこだった!!」
「あれ、まじで?」
あ、一人で盛り上がってごめんぬ。
prev | next