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食堂に入った瞬間湧き上がる歓声、後の罵倒。
おっおう、さすがは食堂、教室の野次馬とはレベルが違うぬ。
大部分は転校生へのものだけど、時折「なんだあのネコの覆面…!?」「え、ちょっとかわいい…!」とか聞こえる。
ふっふー、良いだろう良いだろう、柚弦からのプレセントであるぞ!
にまにましながら柚弦のあとにくっつく。
さり気なく柚弦のセーターを掴む俺の左手はミッション遂行中です。
順を追って柚弦本体にも触る予定です隊長!
それにしても転校生たちよくこんな中でお昼食べられるよねえ。
そこは尊敬してあげてもいいよ!
にへにへして転校生一行を目で追えば、覆面への視線が、さらに横にいる柚弦にも移ったのがわかった。
「え、なんで峯まで?」
「あいつノンケだったんじゃねえの?」
「なんだよ、結局媚うってんのかよ」
騒がしい中でも聞こえてきたセリフ。
落胆した、声。
にやけた頬が勢いよくおっこちた。
そっか。
そっかそっかそっかそっか。
そうなっちゃう、のかあ。
転校生は嫌われてる、生徒会に近づいたから。
誑かしてるとか、身体目当てとか、金目当てとか噂はいっぱいあって、けど、そんなことはどうだって良かった。
俺は柚弦といれればそれで良かった。
柚弦は一緒に行けばいっぱい言われるって、わかってたのかなあ。
食堂はそれこそ全生徒が集まる。
だから俺の顔、隠してくれたのかなあ。
覆面に無邪気に喜んでた自分が、ほんとに何も見えてないおバカさんで。
柚弦の隣の席に座れたのに、涙ぽろぽろしちゃいそうだぬ。
「君ネコ覆面似合うねー☆君自身もネコなの〜?」
「☆マークうにゃい(うざい)」
へにょんとした俺の空気を読めない会計に一瞬にして涙が引いた。
…数少ない俺のシリアスモード台無しですねえ。ものの1分で粉砕です。
「チャラ男なんかに教えにゃー」
腹いせついでに机の下で会計の足をげしげし蹴る。
ついでのついでに高橋の足も蹴る。(倍にしてやり返された!)
痛さに今度こそ本当にえぐえぐと涙ぐめば、柚弦が頭撫でてくれた。隙なく優しいぞ〜。
「なあ、柚弦は何食う!?」
相変わらず大きな声で柚弦の服を引っ張る転校生に柚弦の視線が奪われる。
ちくせうライバルめ…。
というか今までライバルってこともあって転校生好きくなかったけど、こうしてさらに性格知っていく度、大っきらいになっちゃいそうだ。
クラスの浮きっぷりもまだかわいいものだったよ!
美形軍団の生徒会や取り巻きにちやほやされて、満更でもなさそうな転校生(男同士ないって言うくせにねえ)。
友達になったからなんて言って先輩にも敬語を使わない転校生は、よくちゃんとした言葉を使いなさいなんて怒られる俺から見ても変だった。違和感。違和感かんかん。
生徒会の皆さまはそれが新鮮でいいらしーけども。
別に美形だからってみんながきゃーきゃー言ってるわけじゃないんだぞう。
俺なんて柚弦が眩しすぎて正直皆さまの名前すら覚えてにゃー!!
さすが柚弦、輝いてる!
そんな柚弦も学園で数少ないノンケで、きゃーきゃー言ってる姿なんてみたことない。
普通にイケメンだなーって笑ってただけだもんねえ!(そのあと晃希もイケメンだなーって褒めてくれたもん!!!)
ノンケパワーはすごいんだぞ〜。
この学園にいるから、ノンケといえども普通よりベタベタしても受け入れてくれる。
だから調子に乗って抱きついてぎゅーぎゅーしても親友のスキンシップとしか思ってくれないんでっすよね!
まさに鉄壁すぎる防御、さすが柚弦!
なんだか泣けてきた!!
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