親衛隊。簡単に言えば熱狂的なファンの集まり。

この学園の生徒会、さらには人気者には必ずといっていいほど組織される。

そんなに関わる気もなかったけれど、僕にも中学時代からそれらしきものがあるのくらいは把握しているし、高校入学後だって。

…確か出来ていたと、思うのだけれど。

入学したての4月、同じように僕のところへ挨拶に来た先輩の小さな姿が思い浮かぶ。

「僕の親衛隊はもうあったように思うけれど?」

疑問をそのまま口に出せば、しばらく首をひねっていた変態…もとい安原がポンと手を打った。両腕が離れた瞬間彼から離れる。

「ああ、それは八雲直親衛隊でしょう?俺のは、副会長親衛隊ですから」

正式に生徒会が代替わりして、親衛隊も副会長親衛隊として再編成されました、とにこりと笑う安原に溜息をつく。

生徒会は、親衛隊まで特別扱いなのか。

「生徒会といえば学園のアイドル。規模が違いますからね。それに、表舞台に立つことが多くなると、当然トラブルも増えますし。なので、生徒会の親衛隊は管理しやすいように風紀委員公認、特別扱いです」

「…ふぅ、ん」

そんな裏事情は初耳だった。
豊先輩もこういうことをまず教えてくれればいいのに。

まあ確かに、こっそり裏で動かれるよりは公に認めた方が内情を把握しやすいのだろう。

親衛隊と言えばそれなりの不祥事があるのは僕も知るところで、だからこそ今まで自分の親衛隊への関わりも避けてきたのだ。

出来ればこのままあまり関わらないでいきたいのだけれど、と溜息をついて安原を見上げればちょうど視線が重なった。

というか、安原は目線も逸らさず僕を凝視していた。

(気持ち悪い………)

僕の方が耐えられなくなってゆるりと視線を外せば、安原が微かに笑うのがわかって、余計に落ちつかなくなる。

けれど、一年生が隊長だなんて、よほど家柄がいいのだろうか。

あんはら、なんて名前、あまり聞いたことがない。

(…あぁ、そうか)

親衛隊の隊長各にのし上がるのには家柄以外にも方法はある。
そしてその方法こそが親衛隊が敬遠される理由であるけれど。

ちら、と再び見上げれば、未だに僕を見つめ続けていた安原が微かに首を傾げた。

確かに顔は悪くない。美形といってもいいだろう。

と、そこまで考えて思考を放棄した。

誰が、どんな理由で隊長になろうとどうでもいい。

(興味はない、し)

ただ。

「あなたに見つめられると興奮しますね」

性格に難あり。

深く関わりたくはないな、と思いつつも安原を見上げてにこりと笑った。

「そうですか、よろしくお願いします安原くん」



つまりはまあ、出会いは最悪。


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