次の停留所のアナウンスにそういえば、と安原の服の裾を引っ張った。
「安原」
「…はあ」
べしっと安原の腕を叩く。
「僕に対してなにその態度」
「かわいい仕草で追い打ちかけられた俺の身にもなってください」
「僕がすることに何か文句でも」
「いえすみません精進します」
はい。
というか思いっきり話題がそれた。
急がないと停留所についてしまう。
「それで、本当に次降りるの」
悪ふざけで持ち上げた話題を蒸し返すと、案外早く首が横に振られた。
「いえ、俺としてはそうしたいところですけど、あなた買い物という用があるでしょう」
「そうですね」
「ですので、いいです。そのまま行きましょう」
口ではさらりと流しているけれど、なんとも微妙な表情だ。格好のつかないひと。
「でもよかった」
「?」
「あなたと次で降りても良かったけれど、まっすぐ目的地行けた方がほんとはもっとうれしかったの。ありがとうございます」
「かわッ!!」
「うるさい」
「すみません」
おわり!
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