昼休み。
昼ごはんのBGMとして優雅なクラシックが流れるなか、ピンポンパンポン、と校内放送が入る音が鳴った。こんな時になんだろう、と注意を放送に向けたのは、生徒会室で仕事中の九条にしても変わらない。
生徒が問題を起こしたとかだったら、また仕事が増えてしまう。
『あーあー、マイクテス、マイクテス』
そんな九条の心配をよそに、聞こえてきた声は若く、教師のものではない。
というか、九条が随分と聞きなれた声だった。
『あー、わたくしー稲垣佑真はー九条雅がー好きですーラブですーすーきーでーすー』
「…は?」
「おい、なんだこれ」
生徒会仲間である会長に問われて答えあぐねている間にも、放送は続く。
『九条ー聞こえてるー?好きだよ?』
「…………」
完全に仕事をこなす手が止まって、無言。
そのうち、
『あー、明日の試合は九条のために勝、ぅおっ!?』
放送が途中で途切れて、ゴソッガサッ!!と雑音が響く。その後ろで、「何してる稲垣ー!!」と放送部顧問の怒声が飛んだ。
――うわっ、ちょっとなにすんすかせんせー!?
――うるさい、お前が何してる!!
――聞いてたんならわかんでしょ!?九条に愛を、
―――ブツッ
乱暴な音を立てて放送は切られた。
シーンと生徒会室に不穏な沈黙が落ちたのは言うまでもない。
「副会長、顔すごいよ顔」
end
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