昭「元姫より活躍‥出来る気がしなぁい!」
2012/10/16 23:28


※張春華はなんていうか石田三成をイメージして作りました。三成的ツンデレ



やっぱり赤い豪奢な灯籠が吊された屋敷の玄関。

浮かない顔の司馬昭の前には、見慣れた両親と、見慣れない親子が立っていた。

父親だろう人物に従い居住まいを正している、若い男。

蜂蜜のような金髪と、華奢ながら端正に整った容姿の持ち主だった。

大きな薄茶の双眸が特に目を惹く。

才気煥発を絵に描いたような、目端の利きそうな好青年だ。

母親が気に入りそうな兄ちゃんだ、なんて司馬昭の第一印象通り、司馬懿は見るからに機嫌の良い様子で彼女の手を取り青年の前に押し出した。

目の前に青年が立っている。

心の内を射抜き見透かすような薄茶の視線が向けられているのが司馬昭にはちょっとむず痒かった。

「昭、こちらが王粛殿の御令息、王元姫殿だ。挨拶を」

「司馬子上でっす、じゃないや‥司馬昭と‥も、申します」

緊張して言葉を噛みながらぎこちなく頭を下げる。

見るからに不慣れな言葉遣いが初々しい反面、礼儀作法の疎さが現れていた。

「これからお前の腐った性根を彼に叩き直してもらう。覚悟しておくように」

隣の張春華が司馬昭の頭を深々押さえつける。

優秀ながら寡黙にして厳格、"怖い父上"の具現化のような張春華は茶髪の容姿こそ似ているが司馬昭が最も苦手な存在でもあった。

そんな彼が言った事は司馬家では絶対、司馬懿の必殺ツンデレでもなければ覆ることはない。

もはや半泣きの司馬昭はこの最後通告で茫然としてしまい、対峙した王元姫が告げた挨拶がなんだったのかも殆ど頭に入っていなかった。

「元姫殿は幼い頃から詩文に優れ才識豊かと評判の才子、昭のお守などでは役不足ですかな」

「いやいや、魏でも名高い司馬家の御令嬢にお招きいただけるなど、我が子には身に余る光栄です」

満足げに黒い羽扇を揺らす司馬懿と王元姫の父親が談笑する横、張春華の厳しい視線をちくちく感じながら司馬昭は王元姫を上目遣いにちらりと窺う。

同年らしい彼は司馬昭と身長がほとんど変わらない。

予想していたほど厳しそうな様子はないが、知的な顔立ちは司馬師に似ている。

そんな面影が何となくついさっきのにべもない司馬師の反応を思い出させた。

しかし、何か話しかける暇もなく客間に案内するよう言いつけられ、司馬昭と元姫はいきなり二人きりになってしまう。


ぎこちなく元姫を連れて、司馬昭はしつこいくらい灯籠が吊り下がる赤い廊下をとぼとぼ歩く。

やりづらい沈黙に眉を顰める司馬昭とは対照的に、王元姫は飾られた調度や虫干しするのか廊下に出された書物の山を興味深そうに見回していた。

「屋敷に沢山の書をお持ちですね、読書がお好きなのですか」

ふと問われ司馬昭は慌てて振り返る。

「え、あ、ここは姉上の屋敷なんだ、書物はみんな姉上と旦那さんが集めたやつ」

緊張した早口でぺらぺら答えると、彼はさして気にせず切り返す。

「では司馬昭殿は」

「はへっ!?」

素っ頓狂な声を上げる司馬昭に王元姫は賢さの滲むような優雅な笑みを見せた。

揺れた蜂蜜色の前髪を無意識に視線が追いかけ、一瞬魅了される。

「どのような書を好んで読まれますか」

「ど‥く、しょは殆どしない‥かな、あはは‥」

ひきつった硬い笑顔を返しながら、司馬昭は誤魔化すように人差し指で頬を掻く。

色々な意味で、答えるのも一苦労だった。

「学問は一通りさせられたけど、全然好きじゃなくて。外で馬を走らせてる方が好きかな」

あはは‥、と乾いた笑い声がむなしく霧散する。きょとんとしていた王元姫はだいぶ言葉を選んだ様子で目を合わさず答えた。

「‥快活な方でいらっしゃいますね」

(なんか残念な顔をされた気がする‥!)

婉曲にバカ認定されたのを痛感しながら、司馬昭は困ったように目を逸らした元姫を追いかける。

避けられた視界に自分から飛び込んで、ぱたぱたと手を振った。

「あ‥のさ、これから一緒に過ごすわけだし堅苦しいのは無しにしよう」

「堅苦しい‥とは」

即座に反駁して首を傾げる王元姫に司馬昭は一歩身を乗り出し彼を指差す。

「その、他人行儀な感じとか、丁寧に名前呼ぶのとか!毎日そんなんじゃ絶対疲れる、まじで無理」

胸を張って言えることでもないのだが、そう豪語した司馬昭は身を屈めて彼を見上げ、無邪気に顔を綻ばせた。

「俺、字は子上って言うから。字で呼んでよ。そしたら俺も元姫って呼ぶ。お互い遠慮はなしにしよ?その方が仲良くなれそうじゃん」

あは、と笑う司馬昭に王元姫は毒気を抜かれたように肩を撫で下ろす。

「‥分かった」

聡明そうな瞳を伏せ、彼は纏う空気をほっと和らげた。

そうなってようやく、少年の面影を多分に残す王元姫の表情は年相応の鮮やかなものに見えてくる。

穏和に溶けた瞼がゆっくり開かれ、砕けた様子のまま、彼は言葉を紡ぎだした。

「じゃあ早速言わせて貰うけど、子上殿は仮にも司馬家の令嬢なんだからもう少し言葉遣いは丁寧にするべきだね。女性が自分を「俺」呼びするなんて以ての外。百歩譲って私的な場なら許されるとしても、公の場では例え堅苦しくても作法に則った振る舞いが出来なくては、子上殿だけでなく司馬家そのものの素養の欠如を疑われてしまう。君はまずそういう身分である自覚を持つべきだ」

「う‥‥」

間違いなく王元姫の雰囲気は柔らかく、礼節の壁を取り払った親しい相手に対するものだった。

しかし、それは同時に気心知れない相手への遠慮を取り払ったものでもある。

連弩砲よろしく間断ない勢いで小言の乱れ撃ちを開始した王元姫に、司馬昭は思わず一歩後退った。

だが‥

「私は子上殿のお目付役を言いつかった身。それに君の振る舞いに至らないところがあると判断したら厳しく指導するよう司馬懿様からもよく言いつけられている。君を立派に支えるということは私に課せられた責任だからね、気付いたところはすぐ指摘するよ」

彼の言葉の銃口は衰える様子もなく見事な精度で司馬昭の痛いところばかりを撃ち抜いた。

思いも寄らない不意打ちに司馬昭はある意味での身の危険を嗅ぎ分ける。

退く踵を素早く返し、王元姫の元から逃げを打った。

「はう‥そういうのは次の機会に」

「逃げない!」

逃げだそうとした司馬昭の服の裾が背後からがっちり掴まれる。

「遠慮はなし、言い出したのは子上殿だろう?許可が出たからには私も遠慮なくダメ出しする」

引き寄せられた司馬昭は眉を顰め笑う高度な表情‥人は恐怖が過ぎると笑い出すという‥で元姫を振り向き嘯くように口を開いた。

「お、お手柔らかに」
「しません」



嫁を尻に敷く=じゃじゃ馬をうまく乗りこなす感じになるのかなと習作

エディットで作ったおにゃ司馬昭とイケメン王元姫

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