サボったおわびの品をかねたお中元小話
2012/10/13 17:13
創作戦国ゆかいな天正世代
「又左、春が来た」
「うん、今は九月だが」
利家の前に現れるなり、木下秀吉は真顔で断言した。
彼の目の前で岐阜城の楓は真っ赤に色づいている。
「‥昼間から酒でもしばいたか?」
「馬鹿言うな、俺は至って素面で真剣だ」
秀吉にしては珍しく揶揄におどける素振りもなく、戦の前のような緊張と興奮を浮かべて彼はぐっと利家の前に身を乗り出す。
「新しく信長様に仕えた戦姫‥やっと顔を見た!」
なるほど、と利家が意を得たとばかりににやついた。
「噂の土岐の戦姫殿か」
「明智桃衛と言うらしい‥美人だった!ものすごく!都ぶりってのはああいうのを言うのかね、所作の一つ一つが舞い神楽でも見てるように洗練されていた‥。そのくせ銃の取り回しは天下一品ときた、コレはまさに才・色・兼・備!」
両手に拳を握り、熱っぽく語る秀吉に利家も大きく頷く。
「御台様の従姉と聞くしな、まぁ、皐月様の目に適ったってなら外見も中身も相当以上ってことだろうな」
「ほほーう‥対象を誉めつつ信長様お気に入りの自分も誉める高度な技術を用いたか」
「なっ‥別にそういう他意は‥」
にやりと笑う秀吉にいやな予兆を感じる。困惑気味に目を逸らすも、秀吉は調子の良い悪童みたく利家にまとわりついて揶揄のニヤニヤを畳みかける。
「なんだなんだ?それとも信長様の御執心を盗られて嫉妬か?男の嫉妬は見苦しいぞ又左、しかも女相手に」
「勝手に変なこと言うな!俺は全く嫉妬してないぞ!?俺にはまつがいるし!皐月様の小姓だったのもかーなーりー昔の話だ!」
ちなみに利家は今でこそ最前線の勇将だが、初めは彼らの主君、信長こと皐月の側近くで小姓を務めていた。
主君の趣味にもよるが、小姓は夜の相手を兼ねることも多い。
そして皐月は幸か不幸か男も女も構わず食っちまう戦姫だった。
おかげで所帯持ちになる前の利家は皐月いちばんのお気に入りで、正室の濃姫にも「誰と誰が夫婦なんだか」と笑われるほどだった。
とはいえそれも昔の話。
今はもうどちらも武将としてのありきたりな主従関係に戻って‥‥。
「またまたぁ。噂になってるぜ‥戦の陣幕で我らが主たる戦姫は火照った身体を鎮めるために今も夜な夜な槍の又左の槍に跨り」
「うわああああ」
「‥その取り乱しようからして間違いないな」
‥戻ってはいないようだ。
何処から仕入れたんだか分からない下世話な情報をこっそり耳打ちされ、利家は柄にもない悲鳴を上げる。
「うわぁ何故こんな話題になるんだ!?」
「お前‥戦が終わると何故か背中がいつもひっかき傷だらけってのもここまでくると真実だろうな‥実は信忠様はお前の子種って話もにわかに信憑性がうんぬん」
「‥‥orz」
さらに声を低め、深刻な顔で囁かれると利家はがっくり崩れ落ち頭を抱えてしまった。
「ま、皆お前を羨んで噂してるだけだ、そう悪く思うなって。あんな美人と‥え、初体験いつだっけ」
「釣られてベラベラ話すと思うなよ!」
流れるような誘導尋問に乗せられるものかと反駁するが、秀吉は子供じみた表情でぶーぶー不満を垂れる。
「えー閨での様子くらい教えてくれたって良いじゃないの」
「教えたら俺の首が飛ぶだろうが‥」
「‥そんな凄いのか」
真面目な顔で問い返すと、利家は大きく頷いた。
「まぁ一言で言うと襲い受だな」
‥‥。
秀吉がしてやったりと意地悪く笑った。
「又左、お前って楽勝ー」
「はっ‥謀ったな!!」
「大丈夫言わないから。お互い命が大事だ、信長様も怖いがまつ殿もウチのねいもこんなの聞いたらタダじゃ済まんだろうしな。まぁここまで来たら洗いざらい吐いてもらうが」
慌てる利家とがっちり肩を組み、秀吉はぐっと親指を立てる。
「秀吉、お前ほんと策士だよな‥」
☆おまけ☆
秀「いやーやっぱ戦姫って最高だな!この国に生まれて良かった!もっと成り上がって大大名になった日には戦姫をたんと雇って華やかな軍を作りたいもんだ」
??「例えばどんな子ですか?」
秀「そーだなぁ、まず武勇に優れた誇り高い女戦士‥知略に長けた冷静沈着な才女‥戦闘力度外視でとにかく可愛い美少女秘書も欲しいな!願わくば俺以外は兵士や家人の一端までみんな美女にして‥むふふ」
ねい「まぁまぁ大層な夢ですね藤吉郎さん!!」
秀「えっ、ねい!?いやこれはその‥まずその洗濯板を置いて話を‥グボハァッ」
察するに皐月様の夜の遍歴は利家→家康→濃姫→桃衛→蘭丸な感じか。
爽やか筋肉と美女がお好きなようです。
しかし久々に書いたブログの内容がこれって‥('A`)
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