相互リンク御礼作文2(昭師百合
2012/10/13 17:09



「‥‥‥」

改めて司馬昭が出してきたアラビアンな服を手にとって、司馬師は唸っていた。

着ると言ったはいいものの、やっぱり気が引ける。

普段から太腿出してショートパンツ御用達な司馬昭はさらっと受け入れているようだが司馬師にしてみればこの露出具合は大冒険どころの話ではない。

しかし言ってしまったし、退くに退けない‥軽率な自分に少し後悔しつつ言葉通り妹のため一肌脱ぐことにした。

‥だが。

「なぜこっちを見る」

ちらりと視線を下げると、膝を抱えて見上げている司馬昭と目が合う。

彼女は何がおかしいの?とでも言わんばかりに瞼を瞬かせた。

「え、だって生着替え」

「後ろを向け」

「でも折角の脱衣シーン」

「後 ろ を 向 け」

「‥あう」

何度か言い募って、しかし姉の冷たい圧力に司馬昭はあっさり屈し、しょぼくれながらしぶしぶ背を向ける。

不服そうな背中を確認したところで。

司馬師も妹に背を向けて自分の服に手をかけた。

「いいじゃないですかぁ、昔は一緒にお風呂に入って裸の付き合いをしてきた仲なのに」

「はぁ‥何歳の頃の話だ?」

「俺は今だって全然、姉上とお風呂大歓迎ですよ」

嘯くような司馬昭に、司馬師はちょっと呆れ気味に笑う。

「好きな人とお風呂入ってイチャイチャ、なんて最高じゃないですか〜プリティウーマン的なアレ?」

抱いた膝に頬を乗せ、彼女は年相応の夢見がちな少女の顔でそんなことを口にした。

司馬師は言葉に詰まって、一瞬のエアポケットに彼女の衣擦れの音だけがする。

「アレ‥って、私を対象にして言ってる?勘違いしてるんじゃ」

言い掛けた姉の言葉を司馬昭は少し強い声音で遮った。

「姉上が対象じゃいけないんですか?」

「だって、その‥」

脱ぎかけのシャツを抱いたまま、語調におろおろ困惑する司馬師に彼女は独り言のように続ける。

「ですよねー‥普通、人を好きになるのって人の本能みたいなもんですもんね‥オスとメスの生殖本能、みたいな」

「‥‥‥」

黙りこくってしまった背後の気配に、司馬昭は半ば自棄っぽく、一人で挑んで匙を投げた難問を悔し紛れに誰かに問うような口振りでぽつんと尋ねた。

「じゃあ、俺が姉上にこんなきゅんきゅんしてる気持ちって、なに?」

とにかく気になって、
何をしても足りないように思えて、
だから一緒にいたくて、
誰よりも密接に触れ合っていたくて、
それゆえにちょっとだけ知らない隙間から誰かに入り込まれることが怖くて怖くて仕方ない。

そわそわと特徴ばかり上げ連ねて、だけどたった一つ名前を付けることが難しいその感情。

「‥こういう気持ちを、恋って言うんじゃないの?」

口にした瞬間、姉妹の胸がすっと冷えたのは。

重く秘めていたものをごろっと外に出したゆえの隙間風のせいか。

突然傷だらけのものが転がり込んできて扉が閉まらなくなってしまったからか。

たった一言が、二人に手の付けようのないたくさんの感情を目覚めさせる。

「俺、姉上のこと好きです」

「昭‥待って」

「なのに女の子ってだけでどうして間違いになるんだろ‥好きって気持ちは普通のそれと、なんにも‥」

「待って、言わないで」

懇願するように繰り返すばかりの司馬師。

気にせず、寧ろ責め立てるかのごとく訴える司馬昭。

甘い言葉と凍った空気の温度差が痛いくらいに肌を刺す。

「昭‥」

「姉上?」

不意に衣擦れが大きく響いて、司馬昭の背中に鈍い衝撃がぶつかった。

それが司馬師なのだとはすぐ分かった。

後ろを顧みようとするが、しかし服を掴む必死な掌の感触に一瞬躊躇ってしまう。

「‥あはは、俺変なこと言いましたね」

誤魔化すような笑いにも彼女は小さく頷いて厳しく言い放った。

「‥‥そう。間違ってる、妹が血迷ってる以上私は叱らないといけない」

そこまで言葉に出して、司馬師は苦しげに息を漏らし、消え入るような声で小さく告げる。

背中に感じた溜め息がぞくりと司馬昭の身体の奥を熱くさせた。

「なのに、"昭とならいい"って何処かで思えるから、怖い」

司馬昭ははっと瞠目した。

縋りつく手を払うように思わず振り向く。

本当に?と尋ねようとして、しかし目があった司馬師のほとんど裸みたいな姿に言葉が出せなくなってしまう。

着飾ってもいないし、着込んでもいない、無防備に肩を晒して露わな胸元を押さえて隠すような姿。

普段以上にそれは繊細で脆いものに映って、司馬昭はかえって困惑した。





prev | next





comment


prev | next





comment form

Name

E-mail

URL

Massage

PASS



Master only?






「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -