男子高校生による煩悩解放晦日騒動
2012/10/13 16:42

※どうしようもないです



「毎度おなじみ湯浅秀悟です、えーと‥複雑なんですが高3です‥じゃない、でした。
よく判らないけど戦国時代にタイムスリップしてしまって今は大谷吉継さんの家にお世話になってます。
全国が戦争中みたいなひどい治安だし、貰いはしたけど刀なんて触ったこともないから使えないし、毎日がカルチャーショック続きです。
でも半年くらい経って慣れてきたし、何より殿や豊臣家の人達に良くしてもらって楽しくやってます」

「お前誰に喋ってんだ?」

「あ、ちょっとした解説台詞ですサーセン」

「今日は年越しなんだからな、きりきり働け」

大坂の大谷邸では総出の大掃除が行われていた。

着物を襷掛けにして、刀の代わりにハタキを差した吉継は自分の書院を徹底的に掃除している。

障子と襖はきれいに張り替え、溢れるほどの書物を縁側にびっしり並べて虫干しした上で新調した書架に全格納した。

「‥完璧だ」

腕組みする吉継の前には、潔癖几帳面末期症状の夜紗が見ても溜息をこぼしそうなモデルルーム級の光景が現れていた。



「ちはやはまだ終わってないかな?」

奥屋敷に顔を出すと、侍女がせっせと掃除に勤しんでいる。

「申し訳ありません殿、お召し物の整理が終わりませんで」

「そんなに着物があったのか‥?全く‥」

小言を言ってやるつもりでちはやの部屋を覗き込む。

振り向くなり、ちはやが可愛らしい小袖を抱えながら笑いかけた。

「父上見て下さい、父上から頂いた小袖です!嬉しくて片付けられなくって‥」

胸に大事そうに抱えているのは、初陣祝いに吉継が仕立てた紅葉と銀杏柄の小袖。
他にも何かと理由を付けて吉継が贈った可憐な小袖が部屋中に並べられている。
吉継の表情がぽふん‥と蕩けた。

「ちはやが好きなものは全部出しておきなさい!‥お父さん優しい娘を持って嬉しいよ!!」

「あはは父上ってば」

親馬鹿な父親は着物ごと娘を抱きしめた。

「あらあら‥殿はまたやっていらっしゃいますよ」

部屋に入ろうとした侍女たちは、二人の姿を見つけると声を潜め、楽しげに開き掛けた障子を閉めた。



「‥折角の奥屋敷解禁でも風呂掃除じゃあな‥」

漸くの秀悟といえば‥吉継以外男子禁制の奥屋敷に初めて入室を許されていた。

しかし両手には雑巾とたわしが握られている。

まさかの風呂掃除命令だ。

広い浴室に入ってみると、総桧造で良い香りの湯気がもうもうと煙っている。

「良い風呂入ってんだなぁ‥」

ぶつぶつ呟きながら足を踏み入れると、湯気どころか熱気が凄まじい。

(しかし湯気出過ぎじゃないか?こんな昼間から誰か入ってたりしないよな)

秀悟は腕を捲ると危うい視界でとりあえず湯船に手を突っ込んだ。

41℃の暖かい液体の中に明らかに違う柔らかさがむにゅっと触れた。

「きゃ!秀悟くん!」

「うえぇぇ!?」

可愛い声が湯気の中に響く。

ぱしゃんと飛沫の音がして、秀悟の目の前に小さい金色の頭が現れた。

「な、佐紀‥さん!?」

思わず腰を抜かした彼の前には何故か湯船に浸かる佐紀が居た、もちろん裸。

透明なお湯の向こうに白い肌と胸から腰の豊かな曲線がうっすら見える。

「どうしてこんなところに‥裸で」

しどろもどろで問うが、秀悟の困った視線は半分くらい露わになった胸元に釘付けのまま動かせない。

「水遁で遊びに来たのよ、こんな立派な湯浴みの部屋があるのは秀吉様か吉継のお屋敷くらいなんだもん」

「はぁ‥」

佐紀はにこにこ笑ったまま、全く恥じらう様子もない。

その分も秀悟が赤面してる感じだ。

「ねぇ秀悟くん」

突然佐紀が立ち上がった。

湯気やお湯の仕切りなしにたゆん、と凄い絵面が露わになる。

(ゆ‥揺れた!)

目敏いな秀悟!

佐紀は身を乗り出すと、秀悟の両腕を掴んで彼を引っ張り上げた。

「秀悟くんも一緒に遊ぼ

「いや、そんな、俺今から風呂掃除‥」

耳まで赤くなった秀悟の首筋に腕を絡め、指先でちょんと唇をつついた。

暖まった彼女の身体が密着し、水と一緒に秀悟にも熱が感染する。

「だーめ。佐紀の命令だよ、聞きなさい」

くすりと微笑む表情は、魅惑的な危なっかしさを持っていた。

「あ‥駄目じゃないですよ‥佐紀さん‥っ」

ざばーん‥。



‥‥気付けば秀悟は頭から湯船にダイブしてずぶ濡れになっていた。

「ぷはっ」

「ふふ、秀悟くん可愛い」

「佐紀さん‥何やってんですか!」

慌てて佐紀の肩を掴んで声を上げた。

至近距離でも相変わらず佐紀は楽しそうに笑っている。

だが、佐紀が答えるまえに秀悟の背に低い声が突き刺さった。


「お前も何やってんだ、秀悟」

「‥え」

振り向くと‥。

「と、殿‥」

凄まじい形相をした吉継が立っていた。

かく言う秀悟も、音に驚いて駆けつけてみた彼から見れば裸の佐紀とよからぬ感じに見えなくもない。

「違いますよ、これは‥!」

焦る秀悟の目の前で、玄人の手が必殺の構えを取った。

「問答無用だァァッ!!!」
「誤解ですからぁぁ!!!」


ハタキだから大丈夫です、よいお年を!!!





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