清光は毎日毎日何十回と数えていい程

「ねえねえ!なまえ!俺って綺麗?」

と問いただしてくる。
初めのうちこそ毎回微笑み、綺麗だよ。と返していたものの、最近は、あーはいはい、綺麗綺麗。と受け流すスタイルになっていっていた。

そんな日々が続いていたところ、最近はめっきりいつもの台詞を言わない清光に
はて、冷たく接しすぎただろうかと少し不安に駆られるようになるとは、習慣とは怖いものだ。

私の部屋にも訪れることは少なくなった。本丸で顔を合わすことすら少ない。
これは参ったなー。避けられているのだろうか…
何故か申し訳なくなり、お詫びに茶菓子まで用意し清光の部屋を訪ねた。

「清光、お茶でもどう?」

…返事がない。これは相当拗ねていると見た。

「入るよー。」

私もそんなに短気なほうじゃないが無視されるのは気に食わないので有無を聞かずに部屋に押し入った。

「…なに。なんか用?俺なんてもう愛してないんじゃなかったの?」

負のオーラ前回で向かえてくれた清光は思い切りこちらを睨む。

「愛していないなんていつ言ったのよ。」

「だって俺の言葉全部受け流すじゃん。相手すらしたくないんでしょ?」

それとこれとは違う気がするのだが、むしろ清光から発せられるほとんどは綺麗かどうかを問いただす台詞ばかりだった気が…

「じゃ、じゃあさ、どうしたら許してくれるかな…?」

若干下手に出て聞いてみたら清光は少し考える仕草を見せた後にやり、と笑った。

「じゃあそのお茶菓子、俺に食べさせてよ。」

「…は?」

茶菓子を食べさせる?所謂あーん。することだろうか。
それで許してくれるならさっさと済ませてしまおう。

「ほら、早くー。」

「はいはい。」

お盆を近くに持っていき、茶菓子を手にとったところで清光から指摘を受けた。

「あ、普通に食べさせてくれるんじゃ面白くないから口移しね。」

「…はい?」

思わず怪訝な顔をして清光を見れば、何さ、できないの?やっぱり愛してないの?と煽るものだから。
仕方なく…。仕方なく心を押し殺して茶菓子を少し口に含み、清光の口に押し当てた。

「…ん、ん、」

とは言っても茶菓子を口移しとは難しく、ねっとりしたあんこを口内で舐め取り合うような。

ちゅくちゅく、と舌の絡み合う音に羞恥心が掻き立てられ、顔を離すと、まだお茶菓子残ってるよ?と次は清光が口を押し当ててくる。

口内はもうあんこと唾液で正直おいしいとは言えない状況だが、清光は夢中になって続けている。べたべただ。

「あっまーい。ねえなまえ美味しい?」

正直口内は甘ったるいあんこの味しかしないが、そうだね。と答えるところ私は清光に押されっぱなし。

「で、でも、そろそろお茶も飲みたいなー。」

この雰囲気から脱しようとお茶を頼りに出たものの、またもお茶を口に含み口移しで飲ませてきた清光の行動によって阻止されてしまった。

「俺が飲ませて上げてるんだからいつものお茶より何倍も美味しいでしょ?」

いたずらに笑うこの子には逆らえないと身をもって知った日になった。
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