「なまえ、少し時間を、いいだろうか。」

近頃の戦場の報告を、と夜分少し遅くに主の部屋を訪ねたが返事がない。

はて、この時間はほぼ毎日報告書と向かい合ってるはずなのだが。

「なまえ、入るぞ。」

襖に手をかけ、静かに開けると、当の主は床に倒れこんでいた。

「なまえ…!!」

慌てて近寄り肩に手をかけ少し体勢を起こし様子を伺う。
一定のリズムでスースーと寝息が聞こえてきた。

「寝てしまわれたのだな。」

机の上には書き上げたのであろう報告書が綺麗に整頓してあり
どうやら布団を出す余裕もなく寝落ちてしまわれたようだ。

自身の胸に納まる主の髪をひと撫でし、額に唇を落とす。

「ん…」

「おや。起こしてしまったか…」

目元をこすり、冷えたのだろうか鼻をすん、と啜り主は目を覚ました。

「宗近…あれ、私…」

「報告書、お疲れ様。お疲れのようだな。」

机の上を見た主は、安堵した様子で大きな欠伸をしたあと、恥ずかしそうに微笑んだ。

「今、布団を敷くから、少し待たれよ。」

「あ、そんな、大丈夫。自分でしますよ。」

気遣いも有難いが今は体を休めなさい。
そう伝えればなまえはありがとうと優しく微笑む。

手際よく二人分の布団を敷いたところで主は思い通りの反応を示した。

「あ、え?宗近も一緒に寝るの?」

「ええ、今宵はなまえと共に夜を過ごしたくてな。」

駄目ですか?と聞けばなまえは、あー。えーっと。と言葉を濁す。
決して拒否しないところがまた愛おしい。

「さあ、なまえ、体が冷えただろう、早く温まると良い。」

悩んだ末の行動なのだろう。主は敷かれた布団の隅で縮こまるように包まった。

「なまえ、そんな隅だと布団から出てしまうぞ」

ほら。こちらに。
自身の布団に引き込むようになまえの腰を引き寄せた。

「む、宗近…近い…」

「俺の体温でなまえを暖めてあげようと思ってな…だが…」

なまえの体温のほうが暖かいようだな…

と耳元で囁けば。なまえの体はビクリと震えた。

「あ、そ、そういえば、何か報告があって部屋に来たの、でしょう?」

緊張をほぐす様になまえは私の趣旨を尋ねながら私の腕の中でもぞもぞと動く。

「そう言えば…でも、忘れてしまったな。」

小さな嘘をついた。なまえには悪いが今はなまえの体温を感じていたい。
綺麗なうなじに顔を埋めれば小さく鈴のような声が零れる。

「宗近…今日なんだか変だよ?」

「そうだな…。きっと、」

畳の上で寝乱れたなまえを見て欲情してしまったな。

声にならない表情で私の顔を見るなまえがとても愛らしい。

下心さえ芽生えるほどに。
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