悩み多き青年の主張 | ナノ
※企画提出物
クロウさん視点。
クロウさん=苦労さん




俺の幼馴染みは、現キングと元キングだ。
そう言うと何だかとても凄く聞こえるが、実際はそんなことは全くない。あの二人はただのメカオタとニートだ。そりゃ、確かにデュエルの腕は人並み以上の物があるが、それ以外は全くの駄目人間だ。

いや、話が逸れた。戻そう。
そう、遊星とジャックだ。俺達はガキの頃からの付き合いで、それなりに長い時間一緒にいる。それが腐れ縁だとしても決して仲が悪いわけではないと思う。
思うのだが…。

「いい加減にしろ!ジャック!!」
「それはこちらの台詞だ遊星!!」

ガレージに二人の怒鳴り声が響く。余り五月蝿くするとまたゾラに怒られるんじゃねぇか?と思いながらも止めることはしない。今の興奮しきったあいつらには何を言っても無駄だということがわかっているからだ。

「あの二人また喧嘩しているんだね」

横でパソコンを弄っていたブルーノがのほほんと呟く。少し前までは二人が言い争いを始めると焦っていたこいつだが、もう毎度のことなので慣れてしまったらしい。
そう、このポッポハウスに来てからまだそう長い時間がたっている訳でもないブルーノがこうして慣れるくらいに、この二人は何時も言い争っている。
その話の内容もくだらない事ばかり。例えば目玉焼きには塩か醤油かとか、そんなレベルの話だ。

そもそもこの二人は正反対すぎるのだ。外見も、性格も考えも何もかも。共通点を探すのが難しいくらいに。
それだけ違う二人が一緒にいたら、意見が食い違うのは当たり前のことだ。更にジャックはあの通り短気だし(俺も人のことは言えないが)、遊星はものすげぇ頑固でまず自分の意見を譲らないしで。喧嘩になるのも、まぁ当然のことといえる。
何だかんだで負けず嫌いだからな…、あいつら。あ、共通点一個見っけ。

「よく飽きねぇよな、あいつら」
「喧嘩するほど仲が良いっていうしね」
「…仲が良い…ねぇ」

さっきも言った通り、あいつらの仲が悪くねぇのはよく知っている。むしろ違う意味で良いということも良く知っている。
一度配達から帰ったガレージでいちゃついているあいつらに遭遇して蹴りをいれたくなったことすらある。

「…まぁ、仲がよすぎるっていうのも問題だよな」

俺がしみじみと呟いた言葉にブルーノが苦笑している横で迷惑極まりないバカップルの言い争いはヒートアップしていた。それはもう明後日の方向に。

「だから、俺の方がジャックを愛していると言っているだろう!!」
「馬鹿を言うな!俺の方がお前を愛しているに決まっているだろう!!」

うぜぇ。心の底からうぜぇ。

「もう完全に痴話喧嘩になってるよね」
「…あいつらは」

これなら普通に喧嘩して、クロスカウンターでもきめてた方がマシだ。何が悲しくて幼馴染み達の痴話喧嘩を聞かなきゃいけねぇんだ。

「クロウ!お前はどう思う?」
「もちろん俺が勝つに決まっているだろう!」

知らねぇよ。
口には出さずに心の中で毒づく。口に出せば余計にややこしくなるに決まってるから。

「でも、楽しそうだよね」
「…まぁ確かにな」

ブルーノが笑顔で告げた言葉に俺も同意する。
あの二人がああやって喧嘩をするようになったのはシティとサテライトがひとつになり、こうして3人で暮らすようになってからだ。
サテライトにいた頃の二人はこんな風に良い争いをすることもなかった。二人とも痛みのようなものを抱え込んだ表情をしていた。それは、チームサティスファクションが崩壊したことをきっかけとして、ジャックはサテライトに見切りをつけシティを目指すようになったことと、遊星がゼロ・リバースについての負い目を感じていたからであろう。
遊星は余り表情を変えなくなって滅多に笑わなくなっていた。ジャックも劇場跡にひとりで住むようになっていた。そう言う俺もガキどもを連れて別の場所で暮らし始めていたが。
だが、ジャックが遊星に負け、ダークシグナーとの闘いがあり、こうして街が一つになってからはそれらの問題もある程度解決したようで、二人ともあの頃と比べ随分と吹っ切れた様子だ。
それはとてもいいことだとおもう。あの3年前の二人を知っているからこそ、今こうして二人が言い争っていることは本当に奇跡のように感じ、あいつららしくなったと安心すらする。

…が、それとこれとは別問題だ。
このままではゾラに怒られるのも時間の問題だし、丁度アカデミアの授業が終わる頃だ。アキはともかくして龍亞と龍可にこんな痴話喧嘩を見せるわけにはいかないだろう。教育に悪すぎる。
…仕方ねぇ。

「じゃあブルーノ、俺あいつら止めてくるわ」
「うん。…あ、でももう必要ないかも」
「…は?」

ブルーノが指差した先を見ると何故か手を握りあって互いを見つめあっている。しかし、なんか遊星はばっくになんかキラキラしたものを背負った笑顔でジャックに笑いかけてるし、そのジャックはジャックで僅かに頬を赤くしてるし…ってお前ら。

「仲直りしたみたいだよ二人共」

相変わらずの穏やかなブルーノの声を耳の端に捉え、視界にはいちゃつき始めたバカップルの姿を映していた俺の頭の中で何かがキレるような音が聞こえた気がした。


悩み多き青年の主張



(お前らいちゃつくなら他所でやれ!)
(?何を怒ってるんだクロウ?)
(そんなに大声をあげるとゾラに怒られるぞ)
(どの口が言うんだ…その台詞…!!)
(あはは、頑張ってクロウ)





素敵遊ジャ企画王座をハイジャックに参加させていただきました。
余り遊ジャっぽくなくなってしまった上に、タイトルがまさかのクロウさんオチである。
遅くなった上にこんなに残念なものになってすみません。
ここまで読んでいただきありがとうございました!

2010.10.05

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -