はーとふるせんせーしょん | ナノ


校中。


学校は面倒だ。特に授業が面倒である。僕は中学の春休みに高校の全科目全教科の勉強をざっと終わらせてしまったのだ。
もう知っている知識を何故また教えてもらわなければならないんだろう。
しかも授業中にちんぷんかんぷんな答えを連発する馬鹿者が二人もクラスにいるとはどういう了見だ。
うちの高校は県内有数の進学校である。どうやって入試を突破したんだお前たちは、と思わず言いたくなる程の微々たる、いや、ミジンコ並の学力しか持ち合わせていない馬鹿が何故クラスに二人もいるのだろう。

「いってきます……」

憂鬱な授業を思うと自然と俯いてしまった。僕はそのままの体勢で玄関のドアを開ける。

「よお、畑中」
「畑中の眼鏡は虹色メガネだな、かっこいいぞ畑中!」

畑中は僕の名字である。この付近に畑中はうちだけなので多分僕に話し掛けているんだろうが、僕は眼鏡をかけていない。
誰だろうかと前を向く。すると見知った顔が整列していた。例の馬鹿二人組である。

え、なんで、なんであいつら家の前にいるの!?
ていうかなんで家の場所知ってるの!?

混乱しながらもとりあえずドアを閉めた。家の中なら安全だ。
早くどこかへ行け、行ってしまえ。

「なんで閉めるんだよ畑中!」
「碓井がまた変なこと言うからじゃん」
「どこがだよ!虹色委員長って素敵じゃないか」

虹色委員長って何!?
ていうか僕、委員長じゃないんですけど!ただの美化委員ですけど!

ドアを少し開けてそっと外を見る。
やたらと爽やかな男子と、茶髪の男子が何やら揉めている。
爽やかな方が早川で、茶髪が碓井である。
二人が揉めているいまのうちに走ればなんとかなるかもしれない。
僕はそっと外に出て、そして全力で走った。

「あ、逃げた!逃げたぞ碓井!」
「まじかよ!」

後ろから間抜けな声が聞こえてくる。ざまあみろ。
こう見えても僕は陸上部に入りたかった位に走ることが好きである。足は速い方だ。中学では一番だった。
流石の早川も追いつけまい。余裕である。
調子に乗って鼻歌を歌っていると、右手をものすごい力で捕まれた。

「つかまえたぞ!」
「まじ!?」

早川ではなく碓井が僕の右手を掴んでいる。笑顔だ。
そういえばこいつ、体育だけは学年一番なんだったっけ。

「やったぞ早川!あれ、早川どこだ?」
碓井はきょろきょろとあたりを見回した。早川はいない。多分ゆっくりと歩いているのだろう。
僕は去年も早川と同じクラスだったが、彼が走っているところを見たことがない。体育の授業はおろか、短距離走でさえも歩いているのだ。

「……あの、僕に何の用ですか?」
「あのな、畑中。俺らうっかり体操服忘れたんだがとりに帰ってもいいか?」

そんなの先生に聞け!なんで僕なんだ!

心中を察したのか、碓井ははにかみながら口を開く。

「ほら、お前、体育委員長だろ?」

僕は美化委員だ!
だいたい体育委員長ってなんだよ!

そんな馬鹿らしいことで待ち伏せされていたのか。待ち伏せする前に家に帰ればよかったものを。やはり馬鹿である。

そして僕はある重大なことに気づいた。

「ていうか今日体育ないですよ」
「え、そうだっけ?」
「死ね」
「!?」

数分後、てくてくと歩いてくる早川は半泣きの碓井を見て爽やかに笑った。



+++



碓井は意外にナイーブ。
畑中くんはイライラするとこわい。

因みに碓井はスポーツ推薦、
早川は帰国子女枠で高校に合格したのです。

2010.04.24

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