02


ギィと扉を開ける。
夕食後から風呂に入ったり、また漫画を読んだりゲームをしたり、明日も休みだからとついやり込んでいたら軽く日付を越えていた。

寝室に入れば、何時もの如く上半身裸の兄貴が抱き枕を床に落として二段ベッドの下の段に潜り込む所だった。
扉が開いたのに気付いたのか兄貴が振り向く。

無言で兄貴の隣を叩かれ、意味もなく頬に血が昇った。
扉の前から動こうとしない俺を兄貴は訝しげに見る。その目は不機嫌になるにつれ鋭さを増した。

「何してる?さっさと来い、葉月」

「うぐっ、命令すんな…」

口では反抗しながらもそろりと足を動かす。
ベッドの側へ近付けば、上体を起こした兄貴に腕を掴まれ強引にベッドの中へと引き摺り込まれる。

「うわっ!?」

「ちんたらしてんな。俺は眠いんだ」

「ならさっさと寝ればいいだろ!離せっ」

じたばた暴れても簡単に押さえ込まれてしまう。

「あんま喚くとその口塞ぐぞ」

「えっ…ゃ…あぅ…っ」

腰に腕が回され、兄貴の胸に頬がくっつく。足を封じる為か、両足の間に兄貴の足が割り入れられ変な声が口から漏れた。

羞恥にカッと頬が熱くなる。

そんな俺を他所に、兄貴は抱き枕がわりの俺を抱き込んで満足したのか一人マイペースに瞼を閉じる。

「うぅっ…」

抜け出せない拘束の中、俺は理不尽さを感じた。

なんで俺ばっかり。

「兄貴の馬鹿」

「あ…?」

瞼を閉じただけでまだ寝てはいなかったのか、反応が返されたことに慌てる。

「な、なんでもねぇよ。おやすみ」

こんな至近距離で睨まれたくはないと、兄貴の胸に顔を隠すように押し付け俺は堅く瞼を閉じた。
また心臓がばくばくいってる。眠れない。
兄貴の胸に押し付けた耳からも、とくり、とくりと強い鼓動を感じる。

それに気付いて余計じわりと身体の芯が火照ってきた。

「――っ」

堅く閉じた瞼をぎゅっと瞑って俺は別の事を考えようと、先程までやっていたゲームの内容を思い出す。
そうやって意識をあちこちに飛ばして、俺は知らぬ間に眠りに落ちていた。



ふっと和巳の瞼が持ち上がる。
自分の胸元に顔を押し付け小さく寝息を溢す葉月に和巳は口端を緩めた。

何されても結局お前は俺の所に戻ってくる。

今はまだ無意識であれ、口で何と言おうと最終的に葉月は和巳には逆らわない。
そうなるよう少しずつ仕向けたのは和巳であるが、従ったのは葉月自身だ。

「馬鹿はお前だ、葉月」

腕の中に抱いた可愛い弟を想って和巳は喉の奥で低く笑った。








翌日、朝―…


「ぅ…っ…ン…」

ふるりと身体に走った甘い痺れるような感覚に意識を揺さぶられ目が覚めた。

「ふぁ…?」

眠たい瞼を押し上げ、顔を動かせば隣に兄貴の整った顔が見える。
そして、下肢に血が集まる感じがしてぞくんっと甘い疼きが腰に走った。

「ひ…ぁっ…―っ、なっ、なにっ」

身体を起こそうとすれば腰に回された腕に阻まれる。

「あに…きっ」

声をかけても寝穢い兄貴はそれだけじゃ起きない。けれども今すぐ起きて欲しい。
下肢に絡んだ兄貴の膝が整理現象を催した中心に微かな刺激を与えてくる。

「〜〜っ」

兄貴に悪気がないのは、ぐっすり眠る寝顔を見れば分かる。だが、俺もそれどころじゃない。
腰に回されていた腕を何とか引き剥がし、絡んでいた足を引き抜く。

「ぅ…はっ…はっ」

悪戯に刺激されて冷めそうにない熱を持て余す。

「う〜〜っ」

兄貴の隣に抱き枕を突っ込み、俺は自室に駆け込んで鍵をかけた。
適当に音楽をかけ、力尽きたように床に座り込む。

そろそろとズボンの中に手を入れて、頭をもたげた中心に触れた。

「んっ…」

兄貴が起きてくる前に処理しねぇと。

ズボンと下着を下げて、右手を上下に動かす。

「ぅん…っ…んっ…」

くちゃりと零れてきた蜜の滑りを借りて、ぬちゃぬちゃと抜く。時おり先端を親指の腹でぐりぐりと強く刺激して、乱れた息を吐く。

「はっ…はっ…ぁっ…ン」

込み上げてくる熱に身を委ねて、手の動きが早くなる。手の中のものはカチカチに張り詰めて、今にも達せそうなのにあと一押しが足りない。

「ぁっ…ン…」

ぐちゃぐちゃと右手を上下に動かして、快楽に流されながらそうじゃないと本能が言う。

兄貴がしてくれた時はもっと…

《こんなに零して、気持ち良いんだろ…?》

「ひゃ…っ…う…」

葉月と低い声が耳元で囁き、逃れられない。
脳内で再生された声音に身体の芯がぐずぐずに溶かされ、張り詰めていた熱はその声に促されるように呆気なく弾けた。

「――っ、はっ…はっ…ぁ…」

とろりと手を汚した熱に身体から力が抜ける。
のろのろとティッシュに手を伸ばし、汚れた手を拭きながら俺は熱に浮かされ火照っていた顔を青ざめさせた。

「やばい…っ、俺…なにして…」

兄貴にされたことを思い出してイくって、有り得ないだろ。…そりゃ一人でするより遥かに気持ち良かったけど。

「やばい…どうしよ…」

後ろめたくて本格的に兄貴と顔を合わせずらい。

とにかく身支度を整えて俺は頭を悩ませた。



(葉月)
(………)
(人と話す時は目ぇ見ろって言ったよな?)
(〜〜っ、やっぱ無理!)


END.

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