03


「先輩って一人暮らしだったんだ…」

あれから場所を移動して俺は先輩の家に来ている。

さすがにぼろぼろの服装では家に帰れない。

そう言ったら先輩が服を貸してくれるって言うから来たんだけど…。

「服はここに置いとくぞ」

「あ、うん」

キュッとシャワーを止めて俺は返事を返した。

何で俺が先輩ン家でシャワーを浴びてんのかって?それは…。

「お前先にシャワー浴びてこい」

「え?何で?」

「何ででもだ。その間に服とか用意してやるから」

と、いうように家に入って早々先輩に風呂場におしやられたからだ。

「先輩?」

俺が着替えてリビングに行くと、先輩はソファーにもたれ掛って目を瞑っていた。

もしかして寝てる?

俺がいるのに?

そおっとソファーに近付いて俺はもう一度声を掛けてみた。

「先輩?……よういち」

ぴくりと瞼が震えて、うっすらと目が開いた。

「浬」

洋一は俺の名を呼ぶと両手を伸ばし、俺を自分の膝の上に横抱きにして座らせた。

「洋一?」

俺は先輩が何をしたいんだか分からず、ただ首を傾げて先輩を見た。

洋一はソファーから身を起こすと俺の耳元で囁く。

「消毒、してやる」

「消毒?」

ますます意味が分からず俺は疑問符を飛ばした。

その間にも、洋一の右手が俺の着ていただぼだぼのTシャツの中に侵入してきた。

「え?先輩何して…」

「ん、だから消毒。それより名前で呼べよ」

洋一はそう促して、俺のこめかみにキスをする。

右手は依然俺の服の中にあり、胸の辺りを撫でられて俺は擽ったさに身をよじった。

「やっ、擽ったい」

「これは?」

「…っあ、やっ…よういちぃ」

俺はぴりっと走ったよく分からない感覚に肩を揺らして洋一にしがみついた。

「浬」

洋一はしがみついた俺の頭を優しく撫で、俺を安心させるよう顔中にキスを降らせる。

「浬」

「んっ…」

額、瞼、鼻、頬、唇に軽く触れる。

そして、自然と閉じていた目を開けると間近にいた洋一と視線が絡みあった。

洋一は左手を俺の頬に添えてフッと笑って言う。

「俺のこと好きか?」

はっきり先輩が好きなんだと自覚した俺は気恥ずかしさから顔を朱に染めて頷いた。

「可愛いな浬は。でもそれじゃ駄目だ。俺は言葉が欲しい」

浮気の原因は俺が気持を素直に伝えなかったから…。

あんな思いはもうしたくない。先輩が俺以外の人に笑いかけて、腕を組んで楽しそうにしている姿なんて…。

「…………好き」

「うん」

「……好き、だから。もう浮気なんてしないで」

「しねぇよ。浬がするなっていうならな」

俺は付き合い始めてから、初めて自分から洋一にキスをした。

「絶対、だからな…」

さらに赤くなった顔を隠すようふぃと顔を反らして言った。

「もちろんだ。俺の可愛い浬に悪い虫がつかないよう見張ってないといけねぇしな」

「何だよそれ。洋一の方こそ誘惑されて付いてったりすんなよ」

この際、自分の気持ちに正直になろうと開き直った俺は洋一を見上げ、素直に嫉妬心も露に言ってみた。

「お前それはヤバいだろ…」

しかし、洋一は左手を顔に当ててそんなことを言う。

「何がヤバいって?」

「その上目使いと言動。誘ってんのか?」

「なっ!!」

俺はただ正直に自分の気持ちを伝えただけだ!!

真っ赤になった俺を眺め洋一は一人呟く。

「まっ、とりあえず先に消毒して、話の続きは俺がお前の肌に触れて理性が残ってたらな…」

よいしょ、と俺を横抱きにしたまま持ち上げて洋一は寝室に向かう。

「やっぱ最初はベッドがいいだろ?」

「なっ、ななな何言って…」

「だから消毒。あいつらに触られた所は俺が消毒してやる」

「いっ、いい!!結構です!!」

不穏な雰囲気を感じとった俺はぶんぶんと首を振って拒否する。

しかし、洋一は俺が気に入らねぇ、と言って有無を言わせず俺を寝室に連れて行った。











翌日、腰痛に悩まされた俺だがその日から洋一の浮気も無くなり俺は今日も洋一の隣で幸せに笑っている。



END

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