07
そうしてゆっくりベッドから下りた龍ヶ峰は、同じくベッドの下に足を下ろした飛鷹へ目線を流す。
「誉」
「あァ?」
「これでお前は満足か」
飛鷹は龍ヶ峰に触れるだけで自身は何もしていない。流された眼差しの意味を正確に理解した飛鷹は入室した時と同じ獰猛な獣染みた笑みを閃かせ笑った。
「満足ねェ…。俺は身も蓋もなく善がる、這い上がれねぇほどの悦楽に堕ちたアンタの瞳が見てぇンだ。想像しただけで勃ちそうだろォ」
「ふん…なるほど。良い趣味してるな」
「だから俺が先に堕ちちまったら意味がねぇ。ンなわけで今ンとこ、アンタに突っ込む気はネェよ」
旗屋は違うみてぇだけど、と付け足された言葉に龍ヶ峰は仮眠室の扉に足を向ける。
その後を上機嫌な飛鷹が追った。
一時間もしないうちに開いた仮眠室に、書類に目を通していた旗屋が顔を上げる。
飛鷹の行為のせいか、更なる色気と艶やかさをその身に纏った龍ヶ峰。
自制の心を忘れずきちんと自分の仕事をしていた旗屋に龍ヶ峰は満足気に瞳を細め視線を絡めると旗屋を呼んだ。
「来い、旗屋」
ばさりと手にしていた書類を置き、旗屋はソファから立ち上がる。
龍ヶ峰の横を通り抜け、先に帰ろうとした飛鷹の背中へ龍ヶ峰は声を投げた。
「誉。お前の仕事は旗屋の横に置いてある」
「はァ?俺は風紀じゃねぇンだけど」
「はみ出し者を締めるのはお前の管轄だろう?それに…上手く処理出来た暁にはまた褒美をくれてやる」
「っ、はっ…いいぜ。引き受けた」
振り返った飛鷹は赤い双眸をギラつかせ、舐めるように龍ヶ峰を見返した。
それを受け龍ヶ峰は薄く笑い、旗屋と共に仮眠室に姿を消す。
バタンと背後で閉まった扉に、旗屋は龍ヶ峰の背中を見つめて口を開く。
「本当に良いんですか龍ヶ峰」
「くどいぞ」
ベッドのすぐ横で足を止めた龍ヶ峰は振り向くと旗屋を鋭い双眸で射抜き、言う。
「俺はお前達にならと思って許した。だが、その褒美が要らないというのであれば…」
「龍ヶ峰。俺は飛鷹より優しくはありませんよ?」
自制の利いていた旗屋の涼しげな表情がすっと激しい恋情を宿したものに変わる。飛鷹の全てを喰らい尽くすような熱い眼差しとは違う、龍ヶ峰の身もろとも焼き付くすような激しい熱の隠った目。
「むしろ欲望に忠実な飛鷹より理性が利いている俺の方が余計…」
喋り続ける旗屋の頬に龍ヶ峰は手を伸ばし触れる。まだ抑制されている旗屋の目を覗き込み、そのリミットを外すように低く熱っぽい声で囁く。
「見せてみろ。お前の本性を…斎」
そして、旗屋の目元に唇が触れた。ふつりと自分の中で糸が切れる音を聞き、旗屋は理性を手放す。
「俺は警告はしましたからね、龍ヶ峰」
ぎらりと妖しく光った瞳は緩やかに笑い、旗屋は龍ヶ峰の唇を奪うとそのままベッドに押し倒した。
「ん…ふっ…」
噛み付くように情熱的なキスをして、唇を割る。
歯列をなぞり、上顎を舐めて舌を絡める。旗屋を受け入れた龍ヶ峰は抵抗することなく旗屋の舌を受け入れ、激しく絡んだ舌がくちゅくちゅと粘着質な音を立てる。
「は…っ…りゅ…がみね…」
自分の身さえ焼いてしまいそうなほど強い恋情に旗屋は組み敷いた龍ヶ峰の体を強く抱く。
呼吸する合間に龍ヶ峰の名を呼び、何度も何度も口付ける。
飛鷹とは違う触れ方に龍ヶ峰は瞳を細め、唇が離れた隙に言葉を紡ぐ。
「……狼、だ。…斎」
息継ぎの間に囁かれた言葉に一瞬旗屋の動きが止まる。
「ろう、…狼」
「そうだ…。そう呼べ」
激しい口付けに息を乱しながらも変わらず射抜くような強い眼差しを向けてくる龍ヶ峰。その眼差しに堪らなく心が震え、どろりと溢れる欲望に突き動かされるまま旗屋は龍ヶ峰の服に手をかけた。
肌けたシャツの下から引き締まった上半身が現れ旗屋は喉を鳴らす。
熱く混じりあった唾液で濡れた唇から口を離し、僅かに身体の位置を下げた旗屋は程よく鍛え上げられた肌に唇を落とすとうっそりと瞳を細めた。
臍から腹筋に右手を這わせ、その触り心地を確かめると味わうように胸の飾りに舌を這わせる。
「…ッ」
ぴくりと龍ヶ峰の肩が揺れ、肌を撫でていた旗屋の右手がもう片方の飾りを摘まむ。ぐりぐりと押し潰すように捏ね、時おり強く引っ張っては引っ掻く。
「狼…感じているなら貴方の声が聞きたい」
しつこいぐらい弄られた飾りはやがて赤く熟れ、ぷっくりと立ち上がる。その実を舌の上で転がしながら旗屋は熱っぽく乞うた。
「は…っ…そう思うならもっと本能に従え」
がじりと熟れた実に歯を立てられ、龍ヶ峰の身体が震える。
「どうやら…俺より貴方は自制心が強いようですね」
唾液をたっぷり絡めた飾りから唇を離し、旗屋は本命である龍ヶ峰の下肢へと右手を伸ばす。
ズボンの上から目的のものをそっと包むように撫で上げ、ぎゅっと握る。
「っ…」
「それでも幾らかは感じて下さってる、と」
やわやわと反応を見せる中心をズボンの上から揉みしだき、旗屋は熱い息を吐く。それから間接的にではなく直に触れる為に龍ヶ峰のズボンのベルトを外し、前を寛げた。
ずるりと取り出した中心は旗屋の手で緩く立ち上がり、先端から蜜を滲ませる。平然とまだ態度を崩さない龍ヶ峰の唇に再度食らい付き、口付けながら旗屋は自分のベルトに手をかけた。
「ン…ふ…っ…」
前を寛げ、自身の熱を取り出した旗屋はその手で龍ヶ峰のものを掴む。
ドクリと触れ合った熱い塊が反応し合い、間近で絡んだ龍ヶ峰の瞳が熱に揺れる。
ドクドクと掌に伝わる熱い脈動に旗屋は唇を歪め、纏めて掴んだ熱塊を上下に抜き始めた。
「ん…っ…」
「…っ…ふ…狼」
口端から零れた甘い声に旗屋は唇を離す。
下肢で擦れ合う互いの熱に腰が震え、中心を弄る旗屋の手の動きが早まる。
「…気持ち…良い、ですか?」
「……あぁ。っ…お前のが…熱くて」
「それはっ…貴方のせいです…ッは…」
とろりと旗屋の先端から零れた密が龍ヶ峰のものと混ざり合い、ぐちゅぐちゅと湿った音を立てる。旗屋の手を汚す蜜は必然と、組み敷いた龍ヶ峰の腹にぱたぱたと落ちた。
「まさか…こうして、貴方を…汚す日が来るなんて…」
熱に浮かされ剥き出しになった感情そのままに旗屋は嬉しげに愛しげに龍ヶ峰を見下ろし笑う。
「汚すとは…ンっ…随分、大袈裟、だな…。俺は…っ…そんな大層な、もんじゃないぜ…」
「いいえ…っ、ん…貴方はそれだけ…大きな存在、なんです…っ」
会話を交わしている間も旗屋の手は止まらず、絶頂に向け熱を高めていく。
「…ッ…ン…っ」
荒く乱れ出した呼吸と、堅く張り詰めぶるぶる震え出した熱に龍ヶ峰の目元は赤く色付き、壮絶な色気を纏った切れ長の瞳が旗屋を見上げる。
「はッ…斎…」
掠れた吐息に混じって名を呼ばれ旗屋の鼓動が強く脈打つ。向けられた熱い眼差しにゾクゾクと身体を震わせ、手だけでは足りず旗屋は触れ合った熱を擦り合わせるよう熱塊に右手を添えたまま腰を前後に動かし出した。
「は…っ…ふっ…ン…っ」
「…クッ…はっ…」
密で濡れた熱がぐちゅぐちゅと水音を立て、滑りを良くする。
ビリビリと擦れる摩擦に痺れるような快感が走って重なり合った先端からとぷとぷと密が零れる。
「はっ…ぁ…狼…ッ、一緒に…」
ガクガクと揺れる腰に滴る密の量も増え、もはや限界を迎えようとしていた。昂った熱塊に旗屋は最後のひと押しとばかりに握った先端を強く指でぐりぐりと虐め、爪を立てた。
「…くっ…ゥ…っ…ん…――ッ」
ビクンッと龍ヶ峰の身体が大きく跳ね、どぷりと薄れた密が先端から飛び出す。
声を圧し殺した旗屋も同時に熱を弾けさせ、龍ヶ峰の腹の上を汚した。
「っは…、はっ…はっ…あぁ…貴方は、どんな時でも…気高く、美しいんですね…」
熱を放つ瞬間もジッと龍ヶ峰を熱い眼差しで見つめていた旗屋は悩ましげな溜め息を吐きながら言う。
「は…っ…、お前達こそ、最高、だぜ…」
肩で息をし、龍ヶ峰が乱れた呼吸を整えてる間に龍ヶ峰の上から退いた旗屋はボックスからティッシュを引き抜き、龍ヶ峰の腹を汚した密を綺麗に拭き取った。
そこまでして結局、旗屋もその先を龍ヶ峰に求めることはなかった。
「よく考えたら何の準備も整っていないのにこれ以上のことをしたら貴方を傷付けてしまうだけだ。それは俺の望むところではありません」
はだけた服を着直す龍ヶ峰に、ベッドから下りた旗屋はベルトを締めながら涼やかな表情を取り戻して言う。
「飛鷹の相手をした上に俺まで何て負担も掛かるでしょう」
どんな時でも気高さを失わない龍ヶ峰に、一度は手放した理性をぎりぎり繋ぎ直して旗屋は浮かれていた自分自身を戒めるように息を吐く。
平静さを取り戻した旗屋に龍ヶ峰は残念がるでもなく口端を歪めると愉しげに言った。
「俺に触れる唯一の機会を失ったとしてもか?」
その声に旗屋は龍ヶ峰を見返し、ゆるりと笑う。
「えぇ、それでも。俺は貴方を傷付け後悔はしたくない」
「くっ…、立派な志だな」
身形を整えた龍ヶ峰は喉を鳴らしてベッドから降りると、自分とそう対して変わらない長身の旗屋と向き合う。
そしてすっかり成りを潜めた冷徹ともいえる冷えた眼差しを見つめ、飛鷹にかけた言葉と同じ言葉を旗屋にも送った。
「今後の働き次第ではまたお前の望む褒美をくれてやる」
「それは非常に嬉しいですが、貴方はいつもこんな事をしているんですか?」
眉を寄せ、心なしか憤った様子で訊いてきた旗屋に龍ヶ峰はツィと瞳を細める。
「お前はどうだと思う?」
「訊いてるのは俺なんですが…、貴方が俺と飛鷹以外にも許しているとしたら虫酸が走ります。あぁもちろん、相手にですが」
吐き捨てるように冷ややかに告げられた声音は旗屋の本心を隠すことなく伝えてくる。
それで真実はと急かすように目線で促す旗屋に龍ヶ峰は一つだけ気になっていたことを口にした。
「他は駄目で飛鷹なら良いのか」
「飛鷹については俺も気に入っていますし、飛鷹は愚策を弄すような卑怯者ではありませんから」
「あぁ、アイツは凶暴だが根は真っ直ぐだからな。ある意味それが心地良い」
「貴方も分かりますか?俺も同感です」
思わず反れた話にほんのりと場の空気が和む。
ふっと緩く表情を崩した龍ヶ峰は旗屋に背を向けると、その飛鷹が待つ生徒会室へ続く扉に向かって歩き始める。
「さっきの答えだが、俺が後にも先にも触れるのを許したのはお前達二人だけだ」
「それは…」
背中越しに言葉を投げ、旗屋が更に言葉を重ねようとしたのを遮るように龍ヶ峰は手を掛けた扉を開けた。
ガチャリと、思っていたより早く開いた扉にソファに座っていた飛鷹は目を向ける。
龍ヶ峰はちらと一瞬飛鷹と目を合わせたが、何も言わず生徒会長の机に向かうと椅子を引いて腰を下ろした。後に続き仮眠室から出た旗屋は飛鷹のいるソファに足を向け、不思議そうに見てくる飛鷹に微笑を浮かべて返す。
「まだ全てを頂いてはいませんよ」
「へぇ…でも、味見ぐらいはしただろ?」
「それはもちろん」
にやにやとからかうように瞳を細めた飛鷹に旗屋が答えていれば、生徒会長に席に着いた龍ヶ峰が二人の名を呼ぶ。
「…誉、…斎」
名前を呼ばれた二人は互いに名字呼びから名前呼びに変わっていることに顔を見合わせ、薄く笑う。
「何ですか?」
「何だァ?」
飛鷹はソファから立ち上がり、旗屋も龍ヶ峰の方に身体を向ける。
並んで立つ二人を視界に入れた龍ヶ峰は満足気に口許に弧を描くと、ただ一言威厳のある声で言った。
「今後も期待してるぞ」
龍ヶ峰から寄せられた信頼と期待を裏切らない働きを、言われるまでもなくその日以前もその日以降も重ねてきた旗屋と飛鷹は今日また、龍ヶ峰から呼び出しを受けていた。
「今日はどんな用事だろォなァ?」
今度は時間指定付きで、それも場所は生徒会室では無く寮の特別室。生徒会長、龍ヶ峰の私室だ。
そしてその部屋にはまだ誰一人として招かれた者はいない。
飛鷹の言葉に旗屋は口許にうっすらと笑みを形作ると言う。
「用事がなんであれ狼の私室に招かれたこと事態嬉しいですね」
「あァ…それ分かるわ。少しずつ許されてる感じがすンな」
公での龍ヶ峰との接触は旗屋と飛鷹で話し合い、あの日だけに留めていた。龍ヶ峰が風紀と手を組んだというあらぬ疑いをかけられぬよう。生徒会と風紀、第三勢力のパワーバランスが崩れぬよう、旗屋と飛鷹は細心の注意を払ってきた。
故に二人が龍ヶ峰と直に会うのは久し振りのことでもあった。
ちらりと室内の時計に目を走らせ旗屋はソファから立ち上がる。
「貴方はそろそろ躾の時間では?」
「んァ?あぁ、奴等な。あんな常識もねェ奴等が狼の下で働いてた何て侮辱もいいトコだぜ」
「まだアレに執着しているんですか?」
「まるで洗脳されたみてェになァ。アレに会わせろって毎日煩くて敵わねェ。狼の手前ウチで預かったが、矯正させるにゃまだ暫くかかる。で、…ソッチはどんな状態だ?」
飛鷹も座っていたソファから立ち上がり、旗屋は問われた内容に冷ややかに唇を歪める。
「あと少しと言ったところですか。まだ一ヶ月も経ってませんが良い具合に出来上がってますよ。…今なら人恋しさに少し優しい言葉をかければコロリと落ちるかも知れません」
その情報を聞いて飛鷹の赤い瞳が爛々と輝く。
「なら、餌はこっちで用意しておくぜェ。絶対に手に入らねェ架空の人間を一人」
飛鷹の率いる問題児の中にはサボりや遅刻、喧嘩の常習犯だけでなく、特殊な特技を持った人間もいる。
例えば、女装や変装、鍵開けにハッキング。自分の趣味をとことん極めた人間達。
「ソイツに落とさせりゃイイ。そうすりゃもう誰も被害は被らねェし、いくらアレが執着しようが存在しねェ人間だからなァ」
「それはまた斬新な案ですね。その案、面白そうなので検討しておきます」
「あァこっちはいつでも決行できるよう用意はしておく。じゃぁな」
「えぇ、また。次は…龍ヶ峰の私室で」
愉快気な笑みを浮かべ踵を返した飛鷹の背中を見送り、旗屋も自分の仕事に戻る。一人、監視部屋生活を送る空川の元へ様子を見に足を運んだ。
やがて寮の各部屋に明かりが点る。ざわざわと人が行き交う夕食の時刻を過ぎ、人気も薄まった十一時過ぎ。
特殊な鍵を手にした旗屋と飛鷹は最上階奥にある龍ヶ峰の私室の前に立っていた。
「飛鷹、その鍵は?」
「寮部屋に帰ったら届いてた」
礼儀としてインターフォンを旗屋が鳴らし、繋がった機械の向こうから短い返事が返る。
『入れ』
言われた通りに飛鷹が手にしていた鍵で扉を開け、二人は龍ヶ峰の私室に初めて足を踏み入れた。
「お邪魔します」
「邪魔するぜ」
そして部屋の主はというとリビングのソファで悠然と、長い足を組み二人が来るのを座って待っていた。
「呼ばれた意味は分かるな?」
初めて生徒会室に呼び出された時と同じシチュエーションに旗屋と飛鷹は頷く。
「先の件の後処理に加え俺の頼んだ仕事。忙しい中さっそく片付けてくれたようだな。…ご苦労だった、斎、誉」
「いえ、何度も言うようですが労われる程でも」
「半ば自分の趣味だしなァ」
変わらない二人の反応に龍ヶ峰は口端を吊り上げ、対面のソファに座るよう促した。二人が座ったのを確認し本題へと入る。
「それで次の褒美だが…何が欲しい?」
「俺は…貴方の時間を。次の日曜日、俺と街へ出掛けませんか?」
今度は先に旗屋が答え、後に飛鷹が口を開く。
「それじゃァ俺は…」
ふむと一拍間を置き、飛鷹は突拍子もないものを褒美として龍ヶ峰に求めた。
「アンタに変装して欲しい。オマケで茶番に付き合ってくれると尚イインだけどなァ」
「まさか飛鷹、あの役を狼にやらせる気ですか?それは余りにも勿体無いというもの」
「…話は見えないが、それは面白いことか?」
「あァ、もちろん。アンタに退屈はさせねェ」
「飛鷹」
咎めるような旗屋の声を聞きながら龍ヶ峰は思案し、結論を出す。
「まぁ良いだろう。それがお前達の望みなら叶えてやる」
わけも聞かず了承した龍ヶ峰に飛鷹は喜び、旗屋はやれやれと息を吐く。
「貴方は飛鷹に甘いですね」
「信頼してるからこそだ。お前も誉には甘いだろう?」
食堂で飛鷹が壊した物を風紀が弁償し、その際飛鷹に与えられた罰は一日の謹慎だけと報告が上がってきている。
「それは飛鷹の働きと相殺した結果です」
「あ〜、どっちでもイイけどよォ、早いとこ話詰めちまおうぜェ」
流石に目の前で自分の話をされるのは居心地が悪いのか飛鷹が口を挟む。
珍しいその様子に龍ヶ峰と旗屋は微かに口許を緩め、飛鷹の希望を聞いて話を進めることにした。
既にその時点でお互い飛鷹には甘かったのだが。
それから一週間。学園は何事も無かったかのように平穏な日々を取り戻していき、その裏で…
「斎、誉。次の褒美は何が欲しい?」
三人の密かな会瀬は続いていた。
end.
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