06
龍ヶ峰は食堂で起こった騒ぎなどなかったかのように落ち着き払った態度で、普通に生徒会室で仕事をしていた。
旗屋と飛鷹が入室して、書面から目を離さぬまま告げられたのは賛辞。
「中々に面白い演出だった」
声の調子から龍ヶ峰の機嫌が良いのが伝わってくる。
「楽しんで頂けましたか?」
「そりゃ光栄だ」
龍ヶ峰の機嫌の良さに釣られるように旗屋も飛鷹も口許に笑みを浮かべた。次いで龍ヶ峰は興味深そうに飛鷹へと言葉を投げてくる。
「まさかお前まで動くとはな。…その力、隠していたな?」
「まさか。隠してたわけじゃねぇ。俺が出ばるまでもなくアンタが学園を締めてた。ただ単に使う機会がなかった、それだけのことだ」
「それだけ貴方の存在が大きいということです」
事実、飛鷹が力を発揮するまでもなくこの学園は龍ヶ峰一人の力で抑えられていた。それだけの力が龍ヶ峰にはある。
無法者共を従えている飛鷹が従いたくなるほどのものを龍ヶ峰は持っていた。だから飛鷹は龍ヶ峰を一目見た時から特別視していた。
自分の全てを賭してもいいと思えるほどに。
胸の奥底からちりりと沸き上がる熱に身を焦がしながら飛鷹は龍ヶ峰を見つめる。
ようやく書面から視線を離し顔を上げた龍ヶ峰に飛鷹はゾクリと心を震わせた。
ビクリとも揺らがぬ強い眼差しが飛鷹と旗屋を見ている。
そしてふっと弧を描いた唇が二人を認めた。
「なんであれご苦労だった、旗屋、飛鷹」
かけられた声に旗屋は当然のことをしたまでと、さらりと返す。
「労わられる程のことでもありません」
「そうだぜ。俺達が好きでやったことだ」
飛鷹も、龍ヶ峰に命令されて動いたわけではない。自らの意思で、自分がしたいと思ったことをしたまで。
その思いが伝わったのか龍ヶ峰は口角を上げ、納得したように呟く。
「そうだな…」
パタリと手にしていたペンを置き、龍ヶ峰は艶を帯びた表情で唇に触れる。
旗屋は微かに眉を動かし、飛鷹はちりっと熱さを増した胸に龍ヶ峰を熱い眼差しで見つめた。
その直後、二人は思わぬ眼差しで龍ヶ峰に絡めとられる。
「褒美は…何が欲しい?」
ずくりと雄を刺激するような色気を纏った龍ヶ峰から二人へ甘く響く問いを投げられた。
「ほんとに何でもイイのかァ?」
「二言はない。旗屋、お前もだ」
煽るような色気を滲ませたまま流された眼差しにコクリと小さく旗屋の喉が鳴る。その隣で飛鷹はクッと肩を震わせて、剥き出しの熱を宿した目で龍ヶ峰を見返した。
「だったら俺はアンタのその目を…、目を含めた全部が欲しい」
何事にも揺るがねェ、強い意志を宿した目。思わず膝を折りたくなるその目に俺だけを映して、俺だけしか見れなくして、メチャクチャに。俺の手で激しく、どろどろに溶かしたらアンタは俺にどんな目を見せてくれる?
飛鷹の要望に龍ヶ峰はうっすらと唇を綻ばせる。
「旗屋、お前の希望は?」
そうして龍ヶ峰に促され旗屋も口を開いた。
「貰えるのであれば俺も、龍ヶ峰…貴方を」
二人の望みを聞いた龍ヶ峰は低く喉を鳴らすとゆったりとした動作で座っていた椅子から立ち上がった。
まず飛鷹に目を向け、一言告げて歩き出す。
「来い」
龍ヶ峰が足を向けた先は生徒会室内に設けられている仮眠室。後を付いてきた飛鷹を先に仮眠室の中へ入れ、龍ヶ峰は旗屋を振り向く。
「風紀へ出す書類はお前の前に置いてある。確認しておけ」
言うだけ言って仮眠室の扉は閉ざされた。
「さすが龍ヶ峰。貴方はどこまでも冷静ですね」
指示された書類を手に取り、旗屋は熱を冷ますようにふぅと吐息を溢した。
バタリと扉が閉まると同時に掛けられた鍵に飛鷹は真っ直ぐ龍ヶ峰を見つめる。
今か今かと許可を待つ獰猛な獣を前に龍ヶ峰は落ち着き払った態度で自ら飛鷹に近付く。ぎらぎらと光る紅い目と視線を絡め、言葉を落とす。
「褒美をやると言ったがまさか俺の目が欲しいとは…お前にとって俺の身体はオマケか。予想を裏切られた気分だ」
クツクツと肩を震わせる龍ヶ峰は上機嫌で、微動だにしない飛鷹へ手を伸ばす。人工の赤を嵌め込みながらも射抜くような鋭さは変わらない、飛鷹の双眸。その目元に指先を滑らせ龍ヶ峰は顔を近付けた。
ピクリと身体を反応させた飛鷹に龍ヶ峰は瞳を細めて、囁くように許可を与える。
「受けとれ…誉」
龍ヶ峰自ら飛鷹に唇を重ね、触れることを許された飛鷹は噛み付くようなキスで返して龍ヶ峰をベッドの上に押し倒した。
「はっ…龍ヶ峰…」
性急に舌を割り侵入してきた舌は吐息すら奪うように絡められる。
くちゅくちゅと水音を立てながら唾液を交換し、飛鷹の手は待ちきれないとばかりに龍ヶ峰のベルトにかかる。
カチャカチャとベルトを外され、ほんの少し口付けから解放された合間に龍ヶ峰が言う。
「…っ…誉、…狼だ。狼と呼べ」
「…!」
龍ヶ峰 狼、飛鷹が次に許されたのは龍ヶ峰の名前を呼ぶことだった。
そして、ベッドに押し倒した龍ヶ峰のベルトを外した飛鷹は口付けを止めると身体を龍ヶ峰の足元に移動させる。
ジジッ…と龍ヶ峰の履いていたズボンのジッパーを下ろし一緒に下着も下げると、微かにだが反応をみせる中心を手にとる。ちらりと飛鷹は龍ヶ峰を見上げ、躊躇いもなくそれを口に含んだ。
「ほま…っ…ン…!?」
これにはさすがの龍ヶ峰も驚き、息を詰める。
唐突に生暖かい感触に包まれた中心は飛鷹の口腔で愛撫を受け、じわじわと先端から蜜を滲ませる。
「は…っ…」
口に入りきらなかった根本には飛鷹の指が絡み、巧みに上下に抜かれる。
「…ッ…誉」
力の入った龍ヶ峰の腹筋がびくびくと震え、感じ入っている龍ヶ峰の顔をジッと見ながら飛鷹は口を動かす。
びくりと一番反応の大きかった裏筋を尖らせた舌先で舐め、とろりと溢れた蜜に飛鷹はギラついた双眸を鋭く細めた。
飲み込みきれなかった密が飛鷹の唇を汚し、口端から滴る。
「ン、はっ…気持ちぃかァ狼?」
ずずっと吸い付くように唇をすぼめ、ぐじゅぐじゅと音を立てて上下に顔を動かす飛鷹は器用に言葉を発しながら龍ヶ峰を見上げた。
ばちりと絡んだ視線の先には、興奮で目元を赤く色付かせ、瞳を細めた龍ヶ峰がいる。
はっ…と薄く開いた唇から甘く掠れた声が溢され、赤い舌がちらりと覗く。
「んっ…なかなか…いいぞ、誉」
それでもまだ余裕があるのか、伸びてきた手が褒めるように飛鷹の頭を撫でる。
快楽にも流されない強い眼差しにゾクゾクと飛鷹の背筋が震えた。
やっぱりお前は最高だなァ、狼。
熱い息を吐き、とろとろと蜜を溢す先端を舐めると飛鷹はグッと限界まで龍ヶ峰のものをくわえこむ。ずるずると裏筋を刺激しながら飛鷹は激しく頭を動かした。
「く…っ…」
すると一瞬、龍ヶ峰の眉がしかめられ僅かにだが瞳が揺れる。
僅かとはいえ崩れた龍ヶ峰の表情にズクリと飛鷹の嗜虐心が刺激され、攻める手に力が隠る。
「…ぅ…っ…」
口腔に取り込んだ中心が質量を増し、次第にびくびくと反応が大きくなる。
その変化に熱心に龍ヶ峰を見つめていた飛鷹の口許が緩む。
そろそろかァ?
じわじわと高まる熱に犯されながらもそれに負けじと揺らめく強い瞳に、早く快楽の渦に落ちろと飛鷹は今か今かと興奮した目で見つめる。
ぐちゅぐちゅと口腔を出入りする熱塊を更にキツく吸い上げ、最後のひと押しとばかりにべろりと強く裏筋を擦り上げた。
「ふっ…く…ッ…」
ビクンッと大きく龍ヶ峰の下肢が跳ね、飛鷹の頭に触れていた手に力が隠る。その直後、ドクンッと飛鷹の口腔で硬く昇り詰めていた中心が力強く脈動し、高められた熱い熱が飛鷹の口腔で弾けた。
「――ッ」
勢いよく喉の奥まで飛んだ熱い飛沫を飛鷹はゴクリと喉を鳴らして飲み込む。ゆらゆらと飛鷹の与える快楽に揺らめいた瞳は刹那の熱に浮かされ、甘く溶ける。
口端から零れ落ちた滴一滴さえ残さず飛鷹は貪欲に舐めとり、龍ヶ峰の快楽に塗り替えられた瞳を下から見上げて口許に弧を描く。
「…ン…はっ…は…」
鼻に掛かったような甘ったるい息を吐きながら、熱塊に付着した蜜を綺麗に舐めとった飛鷹は最後に愛しげに先端に唇を寄せるとリップ音を立て、口付けてから濡れた唇を離した。
「…どうだァ?俺の口の中は、気持ち善かったろ」
「は…っ、あぁ…。上手いなお前」
熱に浮かされていた瞳は飛鷹の問い掛けに強い光を取り戻す。僅かに乱れた息を整えながら龍ヶ峰は下着とズボンを引き上げると何事も無かったかのように身形を整えた。
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