02


「グレイル殿下。また新しい戦力が砦に入ったようですよ」

ヴェルト砦の方向を双眼鏡を使い、窓から眺めていた灰色髪に水色の瞳を持つ側近ジーンの言葉に指令室として使われている執務机に行儀悪く腰かけていた、漆黒の髪に紅い瞳を持つ青年、シュリエス皇国第二王子グレイル=シュリエスが不機嫌な声で答える。

「ふん、いくら戦力を積んでこようが蹴散らしてくれる」

俺の可愛いアルシウスを奪った罪、その身を持って償って貰うぞ。トワイネルの人間共。

感情の昂りと共に紅玉の瞳が鮮やかさを増す。シュリエス皇国の王族には遙か昔大陸に存在していたと言われる魔族の血が細々と受け継がれていた。その力は知識から武力まで内外のどちらかに優れた力を与えていた。

「…アルシウス様。ユリス様。彼女らが消息を絶ったのが確かこの砦の近くにある小さな村でしたね」

「あぁ、そうだ。叔母上は静養の為に自然が豊かなあの村を訪れていたんだ。俺は叔母上が王都を出る前日、叔母上からお腹の中にいる子の名前を聞いた」

それがアルシウス=バシュレ。グレイルの従兄弟となるはずだった子供の名前だ。

「俺はアルシウスが生まれてくるのを楽しみにしていたんだ」

グレイルには兄がいるが弟はいない。
ユリスはそんなグレイルにアルシウスが生まれたら仲良くしてあげてねと、遊んであげてねと度々お願いしていた。だからグレイルもアルシウスが生まれてきたら何をしてやろうかと色々と考えたりしていた。

しかし、王都に届いたのは凶報。
ユリスの滞在していた村が山賊と思わしき集団に襲われ、村人達が殺されたのだという。ユリスを護衛していた騎士達も多勢に無勢で殺されたらしく、その場には夥しい程の血が流れていたと聞く。それにも関わらず、何故かその場からユリスの亡骸が見つかることは無かった。
その一件の後、直ぐにユリスが消息を絶った村はトワイネル国に呑み込まれ、シュリエス側が調べることは出来なくなってしまった。ヴェルト砦を挟んで戦となったのだ。

その事からもますますトワイネルに疑惑が募り、皇帝からトワイネル国へと山賊の件について問う書簡を送ったが、返事は知らぬの一点張り。
更に疑惑を決定的にしたのが、その頃、村から一番近い町に御忍びでトワイネルの国王が訪問していたという事実だ。トワイネルの国王は女好きだと聞いた事があり、ユリスは幼かったグレイルから見ても美人であった。

「だから…俺は叔母上達の為にも必ずヴェルト砦を落とし、真実を手に入れてみせる」

そこで得た真実が到底許せぬものだったら、このままトワイネルの中心部へ軍を進める事も辞さない。

「向こうの戦力がどれ程のものか、先ずは先遣隊を出して小手調べだジーン。併せて何処の部隊が砦に入ったかも探らせておけ」

「はっ、直ちに」

ジーンはグレイルに頭を下げると、速やかに命令を実行する為執務室を後にした。



シュリエス側に動き有りとアルスが砦の物見から報告を受けたのは 、砦の責任者と話し合いを始めようとした時であった。

「アルス第四騎士団隊長。話し合いはまた後にしよう」

砦の責任者はこの地域を治める名も知らぬ貴族だったが、実質的に権限を振るっているのは王宮から直接雇われたという傭兵隊の隊長であった。
アルスはその言葉に頷き、囚人であった女子供の事を砦に預けて、自分達はシュリエスの軍を迎え撃つべく配置に着く。しかし、第四騎士団はまだ到着したばかりであったので、この時は砦全体の指揮を執っていた傭兵隊の援護という形での出陣となった。

戦況としてはまだヴェルト砦に籠っての籠城戦を展開しているわけではなく、砦に本陣を置いての野戦が目の前で繰り広げられていた。

「これの何処が小競り合いなんすかね」

「立派に戦じゃねぇか」

噂にだけ聞いていた戦況と現状が釣り合わない。
これでは死者が出るのも頷けるというもの。

「遠目に見た所、周辺の村や町はシュリエス側に落とされている様です」

常にアルスの側に付き従っているホルンが周囲を観察して伝えて来る。

「砦を孤立させ、補給路を奪うのが敵の目的というわけか」

それならばトワイネル側が籠城戦に持ち込まぬ理由も分かる。
アルスは冷静に分析しながら、こちらへ飛んで来た矢を抜き放った剣で斬り飛ばす。

「これは一気に攻め落とすのではなく、じわじわと真綿で首を絞められているようなものだな」

戦況は五分に見えて、その実シュリエス側に傾いていた。
第四騎士団が派遣されたのも兵力が落ちた為の補強故だったという可能性も浮かび上がって来た。

「さて、砦の指揮官はこの状況をどう考えているか聞く必要がある」

日没を待ってシュリエス側が退き、トワイネル側で歓声が上がる。
だがその翌日にはシュリエス側で歓声が上がり、戦場では一進一退の攻防が繰り返されていた。

そしてその日もまた。

「戦場に第二王子が出て来たぞ!」

戦況が動いたのは昼食を食べている最中のことであった。

シュリエスの第二王子。グレイル=シュリエス。二十二歳。若いながらも有能で武道に長けた敵国の指揮官であるとアルスは傭兵隊長から聞かされていた。そしてその首を取る事が第四騎士団隊長としてアルスに課せられた使命でもあった。この状況を引っ繰り返すにはそれしかないと傭兵隊長や貴族との話し合いで出た結論だ。

アルスは飲みかけのスープの器をテーブルに戻すと、大人に混じって配膳を手伝っていた子供に声を掛ける。

「スープ美味しかった。ありがとう」

「あ、いえ…っ、その、ごめんなさい」

何を謝る必要があると子供の柔らかな髪を撫で、アルスは仲間達と一緒に食事をとっていたホルンを呼ぶ。

「行くぞ。出撃する」

「はい。いよいよですね」

砦内に散っていた第四騎士団がアルスの声に答えて集まった。







「今回砦に入った部隊は不死鳥の名で知られるアルス隊です」

「ほぅ、例の負け知らずの部隊というわけだ」

トワイネル国の第四騎士団。その隊長であるアルスはまだ少年の域をでない年だと聞いたことがある。

「そんな部隊を回してくるとはそろそろトワイネルの国王も痺れを切らしてきたか。未来ある少年隊長には悪いが、これも戦だ」

俺の前に立ちはだかるというのなら、死んでもらう。

「行くぞ!俺に続け!」

きらりと陽の光を受けて輝いた刀身が砦に向けて振り下ろされた。

間もなく、シュリエスの騎馬隊と砦の前線を守るトワイネルの軍が衝突する。
弓矢が宙を飛び交い、馬に向けて槍が突き入れられる。土煙が舞い上がり、そこかしこで剣戟の音が響いた。これまでで一番激しい戦いの始まりでもあった。

「この隊の首級はどいつだ」

「あの頭巾の傭兵かと」

先陣を切って駆けたグレイルの背後にはジーンが立ち、その背を守っている。
混沌とする戦場の中でグレイルの剣捌きは飛びぬけて鋭く、力強くもあり美しくもあった。
開戦後直ぐに一つの首が飛ぶ。
傭兵の隊に属していた平民上がりの兵士はグレイルの強さを目の当たりにして腰を抜かす。また、傭兵隊長が討たれたと知れば逃げ出す者までおり、グレイルはその様相を冷めた紅い瞳で睥睨した。

「どうやら戦力はもう十分に削げていたようだな。これも兄上の策が成った成果か。長かった戦もこれで漸く終わらせられそうだ」

「殿下。お気を付け下さい」

ひそりと囁かれた声に、ジーンが警戒を払った先を見れば噂の第四騎士団が戦場でシュリエスの部隊を押し返していた。

「ほぉ…面白い。あの先頭に立つ小柄な男が隊長か」

「そうだと思われます」

明らかに不利に追い込まれている場でもアルスの隊は退く事無く、剣を振るう。
シュリエスという国に恨みはないが、第四騎士団の隊員は皆生きる為に、アルス隊長の為に目の前の敵を斬り捨てていく。

「っ、アルス隊長!」

右から来ますとホルンの焦った様な声が戦場に木霊する。
シュリエスの兵士と斬り結んでいたアルスはその警告に従い咄嗟に剣を引くと、後ろへと大きく飛び退いた。
その空間を裂くように横合いから鋭い剣の一撃が突き入れられる。

「っ…」

次の攻撃を警戒しながらも、敵の顔を確認しようと振り向いたアルスはその過程でくらりと歪んだ視界に、思わずその場で膝を折る。

「「隊長!!」」

「おいおい、どうした。俺の一撃はあたってないぞ」

完全に避けられたと興味深そうに紅い瞳を細めたグレイルは、剣からも手を放し、口元に右手をあてたアルスに訝し気な眼差しを向けた。
次の瞬間、口元を押さえたアルスの指の隙間から赤い血が滴る。

「――っ、…う、がはっ」

アルスは咳き込むように身を折ると、その口からぼたぼたと血を吐き出した。

「っ隊長!アルス隊長!」

これにはさすがのグレイルも目を見開き、すぐ近くに居た第四騎士団の隊員やホルンが戦の事など構わずにアルスに駆け寄る。

「彼には何か持病が…?」

思わず問いかけたジーンだが、彼等も混乱しているのか敵にも関わらず答えてくれた。

「ないっすよ!隊長は日頃から元気だけが取り柄だって!」

どういう事だと、グレイルも眉を寄せる。
しかし、その答えは意外にも咳き込んでいたアルス自身が齎してくれた。

「ごほっ…はっ、…は、…ごめんなさいは、そういう事か…っく…」

「隊長!喋らないで下さい!直ぐに退却して手当てを…」

肩を貸そうとするホルンを片手で押し留めアルスは首を横に振る。

「どうやら、毒を…盛られたらしい…っ」

「なっ!」

絶句する周囲を置き去りに、ははは…と口元を赤く染めながらも薄く笑うアルスはそれでもなお光を失わぬ瞳で言う。

「だが、俺はまだ死んでやるわけにはいかない」

強い光を宿した紅茶色の双眸が、その意志に応えるかのように赤みを帯びていく。
自身も知らぬ間に受け継がれし血が、アルスの身を蝕んでいた毒の効果を打ち消していく。
その瞳の色の変化にグレイルは愕然と目を見開いた。

「まさか……そんな、お前は…っ」

気が付けばグレイルは敵陣の中であることを忘れ、アルスの部下達を押し退けてアルスの側へ寄ると顔を覗き込むようにその場で膝を付いていた。

「殿下!」

側近の慌てたような言葉も耳に入らないぐらいグレイルはアルスだけを見ていた。
強引に頬を掴んだ手でアルスの顔を上げさせ、じっと紅い瞳で見つめる。

「ーーお前はアルシウスなのか」

「…っ、何故、その名を」

アルシウスという名前はアルスと母であるユリスしか知らない、アルスの本当の名前だ。あの国王すら知らない母と二人だけの秘密だ。それを何故、目の前のこの男が知っているのかアルスは意味が分からず戸惑う。だが、グレイルはアルスの言葉に答える事無く、逆にアルスの問いかけに確信を抱くと力一杯アルスの身体を抱きしめた。

「そうか、良かった。よく…生きててくれたっ」

耳を掠める安堵と歓喜の入り混じった声にアルスはただ戸惑う。

「あの…」

「殿下、…本当にそちらがアルシウス様なのですか」

他にも戸惑いを隠せないアルスの部下達に囲まれたジーンがグレイルへと声を掛ける。

「あぁ、間違いない。俺と同じ瞳に、ユリス様の面影もある」

突然出て来た母の名にアルスの肩が揺れる。

「お、…お前達は一体何者だ」

アルスの困惑した声に漸くグレイルがアルスから身体を離す。

「あぁ、そうだったな。まだ初めましてだったな。俺はシュリエス皇国第二王子グレイル=シュリエスだ」

「第二王子!?」

敵国のと、アルスが身構えればグレイルは敵では無いと即座に返す。

「グレイル殿下はアルシウス様の従兄弟となります。私はグレイル殿下の側仕えでジーンと申します」

ジーンはそう言ってアルスに向けて頭を下げた。

「お前がアルシウスであるなら、俺にはお前と戦う理由はない。俺と来い、アルシウス」

唐突に与えられた情報を飲み込めずにいるアルスの目の前で、グレイルは言葉通り手にしていた剣を鞘に納めてしまう。それどころかアルスに向かって右手を差し出してきた。

「…よく話が分からないが、それは断る」

「何故だ」

「俺は此処を離れるわけにはいかない」

アルスは自力で立ち上がると、グレイルに向けて剣を構える。
紅茶色に戻った瞳と紅い色を宿した双眸がぶつかる。ふっと先に視線を外したのはグレイルの方であった。

「お前の初めての我が儘は聞いてやりたいと思っていたが、これは話が別だな」

そちらの事情がどうあれ、毒を盛られる様な場所にみすみすお前を帰すつもりはない。
強引にでも一緒に来て貰うぞと告げたグレイルに、意外な所から援護の声が上がった。

「そうだ、隊長。あんたはこんな所で死んでいい人間なんかじゃねぇ!そいつも信用できねぇが、王宮の野郎共よりはマシだ」

「隊長を心配してるのは嘘じゃないみたいっすからね」

「俺達も話はよく分からないが、俺達は戦の勝敗なんかより隊長には生きてて欲しい。捨て駒だった俺達第四騎士団の人間がアルス隊長に救われた様に、俺達も隊長の事を救いたい。恩返しをさせて下さい」

「アルス隊長。これは砦への任務が決まってから、第四騎士団の隊員全員で出した総意です。隙を見て貴方を此処から逃がす」

副隊長であるホルンが決然と告げた。

「良い部下を持ってるじゃないかアルシウス」

思わぬ援軍にグレイルは面白そうに瞳を細めた。だが、それでもアルスの決意は堅いのか何かを口にしようとして閉じてしまう。その仕草をみとめつつ、グレイルは周囲の戦況を確認した。自分達のいる場所は既に自国の兵で固めているが、落ち着いて話の出来る状況ではない。

「やはり、強引にでも連れて行くしかないか」

「……っ、無理だ。…母上が、王宮にいるんだ」

だから俺は此処から逃げるわけには行かない。退くわけにも行かない。

唐突に落とされたその独白は掠れる様な声で、これまで強い意志を宿していた瞳とは真逆の感情を覗かせて、グレイルの心に届く。

「王宮だと?」

眉をしかめたグレイルの視線にジーンが答える。

「我々の調べた限りトワイネルの王宮にはユリス様らしき人の姿は確認出来ませんでした」

「そうだな。確認出来ていれば、こんな所で証拠集めの為の戦などしていない。それこそユリス様奪還を名目にトワイネルなど地図上から消し去っている」

「まぁ、陛下ならばやりかねない事ではありますが。現にアルシウス様の事も、王宮を出られて騎士として行動していたのでその存在を今まで掴めなかったのでは?」

素直にジーンの言葉を信じるなら、ユリスは王宮にはいない。だが、それならば…。何時からだ?アルスがユリスから引き離されたのはいつだった?ユリスが病に掛かっていると言ったのは誰だった?アルスが自分の目で母の姿を最後に目にしたのは…。
ーーつまりはそういう事なのだろう。

「はっ……」

アルスの口許に自嘲の笑みが浮かぶ。
本当はその事も心の何処かで予想していなかったわけではない。それでも俺は…。

辿り着いてしまった残酷な結末に、足元が崩れていく感覚に襲われる。だったら俺は今まで何の為に。

「アルシウス」

母と自分だけしか知らないはずの、母しか呼ばなかった己の本当の名前を呼ばれる。
その声に暗い闇へと沈みそうになる意識を引き上げられ、視線を合わせれば、ひたりとこちらを見据えた鮮やかな紅い瞳に胸に巣食った暗い思いを取り払われる。

 「もう一度言う。俺と共に来いアルシウス。シュリエスにはまだお前の帰りを待つ者がいる」

決してお前は一人ではないと、グレイルは力強く言う。

「誰が…俺なんかの事を待っているというんだ」

アルスは生まれてこの方、トワイネル国から出た事はない。そんな自分を一体誰が待つというのか。

すっかり気落ちした様子のアルスにグレイルはその空気を吹き飛ばす様にきっぱりと告げた。

「お前の父親だ。お前は必ず生きていると今も信じてお前の帰りを待っている」

「!?」

「他にも陛下や俺の兄。皆がお前の帰りを待ち望んでいる」

「でも、俺の父は…」

母ユリスはトワイネル国王陛下の側室が一人だ。何処か噛み合ってない話に、グレイルはアルスのその認識の間違いを正すべく自分が知りうる真実をアルスへと伝える。

「違う。あの男はお前の父親なんかではない。お前の本当の父親はシュリエスきっての知恵者。ユリス様の幼馴染みでもある男だ。お前の顔立ちはユリス様似だが、その髪色と紅茶色の瞳は父親譲りのようにそっくりだ」

「っ、」

「ユリス様は御懐妊なされている時に、この砦近くにある静養先の村で何者かに拐われたのだ」

初めて聞く話にアルスは驚き、戸惑い、瞳を揺らす。何を、誰を信じて良いのか分からない。
その様子にジーンが遠慮がちに口を挟んだ。

「アルシウス様はユリス様から何も聞かされていないのですか」

「母上は…あまり、話の出来る様な病状では無かった」

ユリスの拐われた時の状況を考えるにまともではいられなかったか。辺り一面は血の海で、護衛の騎士達もその悉くが無惨な状態で発見されたと聞く。
こうしてアルシウスが無事に生きていることだけでも奇跡といって良いかも知れなかった。

「そうか」

返されたアルスの言葉にグレイルは瞼を伏せ、短く相槌を打つことしか出来なかった。

途中から口を挟めるような雰囲気では無くなり、黙って話を聞いていた第四騎士団の隊員が口を開く。

「つまりアルス隊長は元からシュリエスの人間だったって事っすか?」

「しかも今まで人質を盾に働かせられてたなんて…ふざけた野郎だ!くそっ!人を何だと思ってやがんだ!」

「アルス隊長。我々もその様な真似をするこの国にはもうついていけません。元より戻る場所も無い身。俺達も貴方と共に行きます」

ホルンが姿勢を正し、アルスに決断を促すように言った。その背後にはいつの間にか第四騎士団の隊員が揃い、皆アルスの決定を待つように直立して待っていた。

「お前達…」

「不安ならそいつらを連れて来ても良い。お前がそれでこの手を取るなら」

先程は強引にでもと言ったが一番大事なのはお前の意思であり、なるべくならそれを損ないたくはない。お前が大事なのだ、アルシウス。

そう言ってアルスの前に三度、右手が差し出された。

「俺は……」



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