-白日の下へT-


かげにかくされていたもの。



-白日の下へT-



組織はもうない…。

俺はその台詞に驚きで目を見張った。

どうして、どうやってあの巨大な組織を…?

俺は信じられない思いで目の前の光景を眺めていた。

あれほど恐怖の対象になっていたボスは見る影もなく、レイに追い詰められている。

「お前の命は俺達が握っている」


躊躇いなくレイの口から紡がれたその台詞に、本当にレイまでこの世界の住人になってしまったんだ、と今さらになって俺はぼんやりと実感した。

「スペード、お前のエモノ貸してくれ」

レイはそう言ってスペードから短刀を受け取る。

そういえばレイはあの時銃を持っていた。あれがレイの武器だったのかな。

人は自分の許容出来る範囲を越えてしまうとどうでもいいことが頭の中に浮かぶらしい。

「しっかりしなよ、ルーク」

そんな事を思っているといつの間に側に来たのかクイーンに肩を叩かれた。

「貴方は見届けるべき人間でしょ」

本部へ行って全てに決着を…

ここへ来る前レイに言われた言葉が頭をよぎる。

「アイツはてめぇの為にここまで来たんだぜ。ダブルネームなんて者に…」

「キング。今は余計な事は言わないの」

ダブルネームってなに、と聞き返そうとした時、室内に悲鳴が上がった。

生臭い血臭と共に。

そちらを見れば銀の刃が椅子に縛られた男の右肩を貫いていた。

「ぐぅぅ……」

「いいか、俺の質問に嘘偽り無く答えろ」

ボタボタと地面に落ちていく血を見ても表情一つ変えずにレイは続ける。

これがレイ…?

俺は初めて目にしたレイの冷酷な面に、体が恐怖で震えた。

「お前の組織にいる人間達は何処からどうやって集めた」

「……知らな」

男が言い終わる前にレイは握り締めた短刀の柄をぐっと捻った。

「ぅがぁあ…」

「嘘を吐くな。闇市、人身売買、誘拐、お前は自分の組織を強くするために色んな事をしただろう?」

握り締められた柄がギリギリと不快な音を立てる。

痛みから逃れるためか、それとも否定しているのか男は顔を歪め、ブンブンと首を左右に振る。

それをレイは柄を握る手とは逆の手で男の頭を掴み止めさせると、視線をを合わせるように顔を上げさせた。

「その中に幾つか施設があったな?」

え?何言って…、まさかっ!?

「お前の組織にルークというコードネームの暗殺者がいたな。ソイツは何処から連れて来た?いつ、目をつけた?」

レイは質問というより確認するように一つ一つ問い掛ける。

それはまるで俺に聞かせるように。



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