-明けない夜はない-裏-


やみがあるからひかりがある。



-明けない夜はない-裏-



ナギの口から呆然とした声で黒幕を指す言葉が溢れ落ちた。

間違いない。確認はとれた。

気絶しているのか目を開けない男に、俺は側に立つスペードに再び指示を出す。

「バケツで水持ってこい」

頷いたスペードが部屋を出て、残りの二人が寄ってくる。

「こんな奴さっさと消しちまえばいいだろ」

「キング。怒ってくれるのは嬉しいけどジェイの指示は守んなきゃ」

殺気を撒き散らすキングと妖艶に笑うクイーンに圧倒されたのかナギは俺の服をギュッと握ってきた。

俺はそんなナギの肩に手を置き、安心させるように出来るだけ優しく言った。

「ルーク、この二人がキングとクイーンだ」

「…初めまして」

「こいつがお前の命より大事な奴か。ちっちぇな。本当に男か?」

「あら、可愛いじゃない」

じろじろ見てくる二人の視線に居心地が悪いのかナギは俺を見上げてきた。

俺はそんな二人からナギを庇うように背に隠す。

「もういいだろ」

そこへタイミングよくスペードが戻ってきた。

「ジェイ、水です」

バケツを受け取り、周りにいる奴等に少し離れるように言う。

「ジェイ?」

その行動にナギはまさか、といった感じに俺の名を呼んだ。

俺はそれに応えるようにうっすら口元に笑みを浮かべ、思い切り水を気絶している男に向かってぶちまけた。

「うっ、ぐっ…」

水が傷に染みたのか男は顔を歪め呻いた。

そして、ぼんやりと目を開ける。

俺はバケツをスペードに渡し、男の顎をつかんで上向かせた。

「目は覚めたか?」

「……っ、貴様っ!」

焦点を結んだ瞳が俺を捉え、殺気を含んだ鋭い眼差しが俺に向けられる。

「こんなことしてただで済むと思うな」

低く唸るように吐き出された言葉に、視界の端でナギがビクリと肩を揺らしたのが見えた。

ただで済まねぇのはてめぇの方だぜ。

俺は酷薄に笑みを浮かべ現実を突き付けてやる。

「残念だがてめぇの組織はもうねぇぜ。俺達が潰してやった」

俺の台詞にナギが息を飲む。

「はは、何を馬鹿な事を。俺の組織が潰れた、だと?そんな事ある筈無い!」

そして、静かな室内には男の怒鳴り声が響いた。

「なら何で誰もアンタを助けに来ない?何でアンタはここにいる?それがなによりの証拠だ」

俺は畳み掛けるように告げて、男の戯れ言をばっさり切り捨てて顎から手を離した。

そうすれば漸く現実を認めたのか男は項垂れたように俯いた。

「理解したな。理解したならもう一つ理解しろ。お前の命は俺達が握っている」

だが、安心しろ。すぐには消さない。ナギが味わった恐怖と苦しみ、孤独、それ以上の地獄を与えてから消してやる。



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