-明けない夜はないT-
やみのなかにみつけたひとすじのひかり。
-明けない夜はないT-
お互い初めて知る過去にその場に沈黙が落ちた。
レイは俺をずっと探してくれていた―?
痛いくらい抱き締めてくるレイの背にソッと腕を回して、目を伏せる。
ずっと一人で、何処に居るのかも分からない俺を探してくれていたんだ―。
ギュッ、と服に皺が寄るのも気にせず俺もレイを力一杯抱き締めた。
鼻がツンとして、閉ざした瞳からボロボロと涙が溢れ、レイの肩口を濡らしていく。
噛み締めた唇からは抑えきれない嗚咽が漏れる。
俺を探しにココまで来てくれたんだね。
「ひっく…ぅ…うっ…」
「生きててくれて良かった」
「んっ…ぅう…」
大きな掌が何度も何度も俺の頭を優しく撫でる。
「…ぅ、レイっ…れいっ…」
言葉にならなかった。
探してくれてありがとう。
見つけてくれてありがとう。
来てくれてありがとう。
側にいてくれて…。
言いたいことは一杯あるのに。
「ナギ…」
熱い吐息が耳元にかかり、溢れ落ちる涙を舌で掬い取られる。
「んっ…」
「よく頑張ったな」
泣いて赤くなっているだろう目尻にふわり、と優しくキスを落とされた。
生きててよかった。今は心の底からそう思える。
だってレイにまた会えた。
俺が落ち着くまでレイはずっと俺を抱き締めてくれていた。
「ん。もっ、平気だから」
そう言った俺にレイはフッと優しげな笑みを浮かべ、最後に唇に触れるだけのキスをして離れていった。
「…っ///」
初めて受ける行為に俺は一瞬で顔を真っ赤にさせた。
なのに、その張本人はまったく気にした素振りも見せず、元居た席に戻った。
「この後、俺は本部に行くけどナギも一緒に来てくれるか?」
「え!?本部って、俺…」
レイのいう本部は俺からしたら敵地だ。
テーブルに視線を落とした俺にレイは続ける。
「大丈夫だ、俺がついてる」
「けど…」
俺が平気でもそんなことしたらレイの立場が悪くなる。
「大丈夫だ」
それでもレイは大丈夫だからと繰り返す。
「本部へ行って全てに決着をつけるんだ。それが終われば俺達はこれから先ずっと一緒にいられる」
「ずっと一緒…」
「あぁ。もう手を汚さなくていいし、追われる事もない。ナギとして俺の側にいてくれ」
追われる事もない、ってレイは俺に差し向けられた追っ手をどうする気なんだ?
でも、そんなことより不謹慎かもしれないけどレイに、側にいてくれと言われたことが俺は嬉しかった。
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