-変わったモノ、変わらないモノU-
どこにいたってかならずみつける。だから、そのときは…。
-変わったモノ、変わらないモノU-
携帯をテーブルに置き、レイが立ち上がる。
「死ぬのが怖いか?」
「………」
「銃口を向けられたお前を見た時、俺はもっと怖かった」
そう言って震える身体を抱き締められる。
耳元に唇を寄せられ、低い声が鼓膜を震わせる。
「言ったろ?お前が手を汚す必要はもうない。お前は俺が守る」
「そうだけど!レイは分かってない!!俺の組織の残酷さを、規模の大きさを!」
逃げ切ることなんて到底不可能だ。
「分かってる。お前の言いたいことは。でも、大丈夫だ」
何が大丈夫なんだっ、と怒鳴り返そうとしたらテーブルに置かれた携帯が振動した。
きっと組織からの連絡だ!
俺はレイの腕を抜け出し携帯を取ろうとしたが、先にレイに取られた。
『ルークか?お前、組織を裏切るつもりか?』
「残念だが俺はルークじゃねぇ」
携帯を取り返そうとした俺はレイに身動きを封じられてしまった。
そして、電話口から聞こえた声に身を固くした。
その声は俺の直属の上司の声。
『誰だ貴様』
「そうだな、J-ジェイ-、って言えば分かるか?」
J!?レイがあの!
俺の組織と対立関係にある組織の幹部だったなんて!?
『なっ、貴様Jackか!?ルークをどうした!!』
「奴はもういない」
『…それがどいうことか分かってるのか!』
「あぁ、理解してる」
俺の組織とあんたン所の組織の開戦の幕開けだな。
クククッ、と愉快そうに笑ったレイに俺は言い知れぬ恐怖を感じた。
それから二言三言会話を交わし、通話を切ったレイは電源を落とし俺に返してきた。
「もう使わねぇだろうがな」
「レイ…」
知ってたのか?俺が敵対組織にいたこと。ルークという名の暗殺者だってこと。
本来なら顔を合わせた時点で殺し合いになっている。それ程に俺の属する組織とレイの属する組織の溝は深い。
返された携帯を受け取る手が震える。
だけどレイは何も言わず携帯を渡すと俺から離れた。
「あっ……、レイ!俺、俺…」
その後ろ姿が悲しみを帯びてるような気がして俺は気づけば呼び止めていた。
しかし、考えがまとまらず自分でも何を言いたいのか分からず先が続かない。
それでもレイになんとか伝えたくて、俺は背を向けたレイの背中に抱き付いた。
「レイ…」
「…今日は色んなことが一辺にあったからな。考えるのは明日にして今日はもう寝ろ」
レイはそう言って、体に回していた俺の腕を取ると、寝室へ向かった。
俺をベットに押し込め、レイもベットに上がる。
掛け布団の上からポンポンと軽く叩かれ、横になったことで、張り詰めていた糸が切れたのか、急速に眠りに引き込まれた。
「レ…イ…」
「おやすみ、ナギ」
その日、俺は、この世界に入って初めて人の温もりを感じながら深い眠りに落ちた。
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