-血濡れた再会 裏-


やくそく?わかった。ぼく、まってる。ずぅっとまってるから。



-血濡れた再会-裏-



その光景を目にした瞬間、脳が理解するより先に引き金を引いていた。

呆然とする人物の背後へ近づけば、そいつは俺に気づく素振りもみせず、いったい何が…、と呟いた。

何が?だと、ふざけんじゃねぇ。俺がもう少し遅かったらそこに転がってんのはお前だったかもしれねぇんだぞ。

俺は激情を押し殺し、努めて冷静な声で告げた。

「俺が殺した」

ぴくり、と肩を震わせソイツが聞き返す。

「何故?」

そんなもん決まってる。

「俺が殺らなきゃお前の命が消えてた」

何年もかけてやっと見つけた俺の大切な者。失うわけにはいかない。

手の届かない所へなんて行かせやしない。

俺は目の前の華奢な身体を抱き締めた。

「俺を忘れたか?」

「…ま…さか、-レイ-?」

「そう、俺だ」

何年振りかに聞く自分の真名は心地好かった。

この世界で唯一お前だけが知る俺の本当の名前。

そして、お前の真名を知る者も今じゃ俺だけ。

「ナギ」

囁く様に名を呼んで、振り向かせたナギは瞳から涙を溢した。

その涙の意味は…。







ナギが涙を流す姿は綺麗だった。でも、俺が見たいのは笑顔だ。

「泣くな」

その想いを込めて、頬を伝う滴を舌で舐めとってやる。

しかし、今まで大人しく身を預けていたナギは身じろいで離れようとした。

「止めろ。放せ」

誰が放すか。お前がどんなに嫌がっても俺はもう、お前を放さないと決めた。

後悔するのは一度で沢山だ。

「そうやって俺をまた裏切るのか?」

「裏切るって何言って…?」

「俺より死を選ぼうとした。そして、今度は俺を拒む。これ以上ない酷い裏切りだ」

「そんなつもりじゃ…」

だったらなんで俺から離れようとする?

その問いに、ナギから涙混じりの震えた声で答えが返ってきた。

「お前は…、俺の、手が…血に染まっていると知っても俺の手をとってくれるのか…?」

あぁ、そんなことか。それだったら俺の方がよっぽど罪深い。お前より遥かに。

「お前だけじゃない。俺の手だってお前とさして変わらねぇ」

俺の言葉にナギはハッ、と息を飲み、俺の顔を困惑したように見つめた。

「どうして…」

この世界に身を落としたか、って?

そんなもの決まってる。

お前がいるからだ。



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