-血濡れた再会U-
なくな!だいじょうぶ。ぜったいまたあえる。だからさよならはいわない。
-血濡れた再会U-
響いた銃声は一発。
しかし、いっこうに胸に衝撃はこない。
不思議に思って瞼を開けば、ターゲットは銃を握ったまま倒れ伏していた。
その側頭部から赤黒い血が流れ、瞬く間に地面に広がっていく。
「いったい何が…」
ふと溢した呟きに、背後から答えが返った。
「俺が殺した」
声を発されるまで俺はその存在に気づかなかった。
気配を一切感じなかった。
「何故?」
「俺が殺らなきゃお前の命が消えてた」
お前、とどこか親しさを感じさせる言い方に戸惑いを覚えた。
光無き闇の世界に俺は独り。属する組織に従ってはいるが、その中でさえ誰一人として心を開いたことはない。
俺が心を向けるのは過去も現在も未来も親友のみ。
しかし、こんな場所にアイツがいるはずない。いてはいけない。
なのに、…背後からフワリと優しく抱き締められ、
「俺を忘れたか?」
なんて、記憶の中より幾分か低くなった声で囁かれた瞬間、不謹慎にも俺の心は喜びに震えた。
「…ま…さか、- -?」
「そう、俺だ」
言葉と共に振り向かされた俺の視界に、滲んでぼやけた親友の顔が写った。
何年振りかに溢した涙はとどまることなく溢れ落ちていく。
「泣くな」
頬を伝う滴を舌で舐めとられ、その感触にこれは夢や幻なんかじゃないんだ、と嬉しくて嬉しくてどうにかなりそうだった。
でも…、
「止めろ。放せ」
汚れきったこの身では、もうお前の隣に立てない。抱き締めてもらう資格なんてありはしない。
「そうやって俺をまた裏切るのか?」
放すどころか逆に力強さを増した腕に、苦しくなる。
「裏切るって何言って…?」
「俺より死を選ぼうとした。そして、今度は俺を拒む。これ以上ない酷い裏切りだ」
「そんなつもりじゃ…」
言葉が続かない。考えれば簡単に分かること。
俺は一瞬でもコイツより自由を、解放を選んでしまった。その上、コイツの為と言いながら自分を守ろうと切り捨てようとした。
なんて俺は醜い。
「お前は…、俺の、手が…血に染まっていると知っても俺の手をとってくれるのか…?」
情けなく声が震えた。
「お前だけじゃない。俺の手だってお前とさして変わらねぇ」
その台詞にハッ、と顔を上げた。
正確に撃ち込まれた一発の銃弾。血溜まりに沈んだ塊。
そうだ、
「どうして…」
お前までこんな世界(トコロ)にいるんだ、歓喜の次に覚えたのは疑問だった。
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