-血濡れた再会T-
おれたちはなにがあっても、ずっといっしょだからな
-血濡れた再会T-
一筋の光も射し込まない暗い暗い路地の中、空を裂く音と金属がぶつかり合う音が数度聞こえた後何かがドサリ、と崩れ落ちた。
「ふぅ…」
崩れ落ちた塊に背を向け、右手に鈍く光る刃を見つめる。
そこに写る、返り血を浴びた自分の顔に嫌悪感を覚えた。
いつもなら何も感じないのに、…きっと今朝見た夢のせいだ。
無邪気に笑う俺とそれに応えるお前。
俺達は朝も昼も夜も関係なく、陽が暮れても共にいた。
そう、俺の隣にはいつも親友のアイツがいて…。
ぴっ、と刃についた血を払い、腰のホルダーにカチリとしまった。
何を今さら感傷的になってんだ俺は。
自嘲で唇が歪む。
任務は無事完了した。帰ろう。
意識を切り換え、足を踏み出した瞬間背後から凄まじい殺気を感じた。
反射で振り返った俺が見たモノは、銃口。
塊にしたはずの者が、最期の力を振り絞り俺を見据えていた。
「殺し損ねたか…」
震える指先が引き金に掛かる。
あぁ、仕留めなければ。
そう思うのに足が、身体が、鉛のように重く動かない。
何故?
怪我をしてるワケでもない。
命の危機が迫っているのに、心は酷く穏やかで。
きっと、これも朝見た懐かしい夢のせいだ。
「…お前が夢に何て出てくるから」
押し殺していた感情の箍が外れた。
無視し続けた、人としての罪悪感が俺の身体を縛り付ける。
でも、これでやっと自由になれる。人を殺めなくてすむ。
ゆっくりと閉じた瞼の裏に、親友の笑顔が浮かんで消えた。
そして、一発の銃声が響いた。
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