04


風紀室を訪れた藤真は相変わらず歓迎されない雰囲気の中、口を開く。

「夕闇高校との交流会に引き続き風紀委員を三名ほど借りたい」

「入ってきていきなり何の話かと思えば。私達風紀にも限界というものがあります。貴方がた生徒会が風紀を乱すせいで風紀委員は日夜働き詰めだと佐桐会長はご存じないのか?」

この嫌みったらしく良く喋る男が風紀委員長の吉見だ。
自席に着く他の委員が面白そうに藤真と吉見のやりとりを眺める。

「どの口が貸せと?」

「嫌なら断ってくれて結構。他の奴に頼むさ。ただし、他の委員会がどう思うか。風紀は使えねぇって言われても俺は否定しねぇぜ」

じゃぁな、邪魔した。と、藤真はこれっぽっちの未練もなく吉見に背を向ける。

「ちょっと待て!」

それに慌てたのは吉見だ。

「どうしてもって言うなら二人ぐらい…」

「三人だ。それ以下は認めねぇ」

「ぐっ…、したかない。そこまで頼むなら三名貸してあげよう」

プライドを傷つけられることを嫌う吉見は動かしやすくて重宝する。

クッと溢れそうになる笑みと本音を隠して振り返った藤真は、悪いなと心にも思ってないことを口に上らせ、役員の代わりに人員を三名確保した。

用が済んだ風紀室から廊下にでると、夕闇高の案内を頼んだ風紀委員に遭遇する。

一言礼でも言っておくかと思ったが、顔を合わせた瞬間キッと睨まれたので止めた。

夕闇の奴等に虐められでもしたか?

癖の強そうな夕闇高校の生徒会を思い浮かべてほんの少し、ほんの少しだけ羨ましく思った。







朝陽高校の校舎から門までそう距離はない。歩いて七、八分といったところか。

その短い距離の途中、夕闇高校の面々は足止めを食らっていた。

「退け、邪魔だ」

「何だよ!名前を聞いただけだろ?」

緋夕の行く手を遮るように、ぼさぼさ黒髪、ダサい黒渕眼鏡をかけた小柄な生徒が突然現れたのだ。

そしてその後ろに、顔立ちの整った、所謂美形といわれる部類に属する生徒が四人。小柄な生徒を邪険に扱う緋夕を睨み付けていた。

「緋夕を睨み付けるなんてやるぅ」

ぼそりと緋夕の背後で鉄太が感心した様に呟けば、それを耳悟く拾った小柄な生徒が反応する。

「ヒユウって言うのかお前!格好良い名前だな!あっ、俺は…」

「誰が名前で呼ぶことを許した。汚ねぇその口を閉じろ」

何の前触れもなくとんだ鋭い拳と刺すような強い眼差しが、行く手を遮る少年の言葉を強制的に沈めた。

「ぎゃっ!?」

受け身もままならず飛んだその体を、少年の取り巻きらしき生徒が慌てて受け止める。

「さすが緋夕清々するな」

ヒュゥと緋夕の後ろで口笛を吹いた進を含め、取り巻きは怒気も露に緋夕達を睨み付けた。

「いきなり秋に何するんですか!」

「俺は言ったはずだぜ、退けってな。邪魔したのはソイツだ」

ギラリと光る相貌に取り巻きが息を飲む。だが、退けないと口を開く。

「そ、そもそも貴方達、この学校の生徒じゃないですね。不法侵入で警備の者を呼びますよ!」

「呼びたきゃ呼べよ。俺等は正式な客だ。恥をかくのはお前等の方だがな」

そう緋夕が冷めた眼差しで告げれば、取り巻きの中の一人がはっとした様に口を開く。

「交流会…、まさか、お前達夕闇の…」

「行くぞ」

最後まで聞き終わらず、緋夕は興味を無くして再び歩き出す。

「そこの餓鬼。次に名前で呼んでみろ、素っ裸にして屋上から吊るす」

痛みに涙を浮かべる少年に釘を刺すことを忘れず。夕闇高校生徒会の面々は朝陽高校を後にした。



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