陽が沈むとき
朝陽高等学校生徒会室に唯一人。蜜色の髪に焦げ茶の瞳、目の下には薄い隈と端整な顔に不似合いな疲れた色を滲ませた青年が会長席と名札の置かれた席に着いていた。
「クソッ」
右手にペンを握り、左手で苛ついた様に乱暴に髪を掻き混ぜ、悪態を吐く。
「こんな時に限って、何が交流会だ」
机に置かれた紙には、兄弟校である夕闇高等学校との学校を上げての交流会と書かれていた。
ここには今、会長である佐桐 藤真(サギリ トウマ)しかいない。
副会長以下役員は新入生が入学してきた春先から仕事を放棄し、一人の生徒にかまけていて、藤真が早々に見切りをつけて追い出した。
あれからもう六ヶ月。
季節は秋だ。
一人、生徒会室に隠りっきりの藤真へ、当初こそ様々な悪意ある噂が流れ、支持率はガクンと落ちたが、夏前には生徒からの支持率も徐々に戻り、今はまたジリジリと上がり続けている。
それもこれも藤真の努力の賜物だ。
藤真が途中放棄しようものなら円滑な学校生活は早々に破綻している。
それにいち早く気付いた生徒達が藤真の支持率に繋がっていた。
「ともかく三日後にうちで顔合わせで、迎えと持て成し、前年度の資料出してそれから…」
気は進まねぇが風紀に掛けあって二三人借りるか。
兄弟校だけあって似た造り、配置の構内を案内されて夕闇高等学校生徒会の四人は進む。
「まぁまぁだな」
「ちょっ、会長。問題になるような事しないで下さいよ」
「あは、心配性だねぇ副会長は」
「お前も俺の愛しの副会長の胃に穴を開けないよう言動には気を付けてくれよ、書記」
藤真から駆り出された、案内役の風紀委員は背後で交わされる会話を少しだけ気にしつつ、四人を藤真の待つ生徒会室へと連れて行った。
コンコンと目の前の立派な扉を二度ノックし、声をかける。
「会長。夕闇高校の生徒会の方々をお連れしました」
「……入れ」
間を置いて返ってきた声に、風紀委員が扉を開け、夕闇高校の面々に入室するよう促した。
そして、会長席に座っていた藤真が立ち上がり、四人を歓迎する。
「ようこそ朝陽高校へ。俺が生徒会長の佐桐 藤真だ」
「夕闇高校生徒会、副会長の安達 智(トモ)です。今日はよろしく御願いします」
「俺は会計の都築 進(ススム)。よろしくな」
「僕は書記の綿見 鉄太(ワタミ テツタ)」
「…夕闇高会長の藤崎 緋夕(ヒユウ)だ」
自己紹介を終え、四人を生徒会室の応接間に通して、さっそく前年度の資料を配った。
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