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身体が燃えるように熱くて苦しい、…痛い。
じたばたと転げ回りたい体を花の上に押さえつけられ、身体がビクビクと跳ねる。

「ンッ…ふっ…ぁ…」

尚も重ねられたままの唇がぐちゃぐちゃと水音を立て、飲み込みきれなかった唾液が口端から零れる。

「は…っ、たまんねぇな…」

流し込まれる穢れにずくずくと身を犯され、ハナヤに魔力を吸いとられる。本能が鼻腔から甘い香りを大量に吸い込み、次第に思考がどろどろと溶けていく。しかし、その誘惑を邪魔するように身の内から走る痛みに意識を失うことも出来ずに赤く染まった瞳からぼろぼろと涙が溢れた。

「もっとだ。もっと苦しめ」

片手で纏めて両手を押さえつけられ、ハナヤの手が破れた服の隙間から中へと侵入してくる。
ゴツゴツとした手が肌の上を滑り臍を辿って下肢の中へと潜り込む。

「ぁ…ぐっ…ゃめ…」

痛みにぶるぶると身体が震え、掠れた声が上がる。ぴちゃりと水音を立て離れた唇が透明な糸を引き、熱の宿った低い声でハナヤが笑った。

「もっと…苦しめ」

するりと下肢に潜り込んだ指が更に奥まった秘所へと伸ばされる。

「ひ…っ…」

「ここに直接穢れを注いだら貴様はどうなるだろうな?流石に狂うか?ククッ…」

言いながらグッと秘所へ押し込まれた指先に嫌悪で顔が歪む。

「っ…ぁ…ぐっ…ぅ…」

「イイ声、イイ顔だ」

ハナヤの指先に付着していた穢れがぐちぐちと秘所の中へと塗り込められ、上からも下からも身体の中に入り込んだ穢れが胸に咲いていた真紅の薔薇を徐々に黒く汚していく。

「はっ…ぅ…やめ…ろ!」

ドクドクと早鐘を打つ鼓動に身体が締め付けられ全身から嫌な汗が吹き出る。

「イイ具合になってきたな」

クツクツと見下し笑ったハナヤの指がずるりと秘所から抜かれ、まるで見せ付けるように黒い体液で濡れた指を舐めるハナヤの顔がぐにゃりと歪に歪んだ。

「ぐっ…ぅ…ぁ、ぁ、ぁあぁぁっ…!」

身の毛もよだつ悪寒と壮絶な不快感に一際大きな声が漏れ、カァッと瞬間的に身体の奥底から込み上げてきた魔力がバチリと強く身体の外へ噴き出す。赤い閃光が走り、弾けた魔力は俺を組み敷いていたハナヤを岩壁まで吹き飛ばす。

「がはっ…くっ…」

咄嗟に受け身をとったハナヤだったが全ての威力を殺すことは出来ず岩壁に背中を打ち付け、口から黒い液体を吐き出した。
身体を押さえ付ける者のなくなった俺はビリビリと痺れた胸をかきむしり、立ち上がることも出来ずに身体を丸くする。

「ぅ…はっ…ぁ…くっ…」

ぜぇぜぇと喘ぐように呼吸を乱し、無意識に震える手でサーシェの花の茎を千切る。たっぷりと溜まった蜜色の芳しい香りに鼻を近付ければごくりと魔力に飢えた喉が鳴った。

これが欲しい、これが欲しいと痛みに悲鳴を上げる身体がずくずくと訴え出す。甘い誘惑に引き摺られ何も考えられなくなって花を傾けたその時、

「――カケルっ!」

「…妃殿下!」

誰かが俺の名前を呼んだ気がした。

「はぁっ…ぅ…う、ンっ…ンッ…」

けれども意識は甘い香りに囚われたままとろりと垂れてきた甘い蜜を、伸ばした舌で受け止めごくごくと飢えた喉の奥に流し込む。

「っ、カケル!止めろ!それを飲むな!」

「妃殿下っ…何をなさっているんですか!?」

すると頭が痺れるようにぼぅっとしてきて、身体を蝕んでいた鋭い痛みを蕩けるように熱い快楽が凌駕していく。

「はっ…ぁ、はっ…」

漏れる吐息が甘さを帯び頬が上気していく。鋭かった赤い瞳は熱に浮かされたようにとろりと虚ろになる。
そしてその変わりのように身を蝕んでいた穢れは威力を弱め、黒く染まりかけていた胸の薔薇は毒々しいまでの赤さを取り戻した。

「ふ…っく、は…ははははは…!」

「カケルっ!」

ふらりと丸まっていた身体を起こしゆっくりと立ち上がれば、駆け寄ってきた誰かに強く肩を掴まれる。

「粗悪な花になぞ呑まれるな!自分を保て!」

熱に浮かされた虚ろな目でその誰かを見つめ、俺はうっそりと艶やかに微笑んだ。



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