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Side 瑛貴


立てないと言った鷹臣を横抱きにして抱き上げ、リビングのソファに座らせる。

簡単に作れるメニューを用意して、俺は鷹臣の隣に腰を下ろした。

「鷹臣、飯出来たぞ」

疲れているのか、鷹臣はうとうとと閉じそうになる瞼と格闘している。

「食べれるか?」

「…食べる」

そのわりには動かない手。

俺はレンゲを手に取り、皿に盛った炒飯をすくう。軽く息を吹き掛け冷ますと、それを鷹臣の口元に運んだ。

「ほら、口開けろ」

ん、と大人しく口を開けた中へ炒飯を落とす。

もごもごと口を動かす鷹臣は可愛らしく、きっと誰もこんな鷹臣を知らねぇ。俺と同じ様に夜の街では恐れられる存在が、こんなにも可愛い奴だとは。

甘える様にまた口を開いた鷹臣の口元へもう一度レンゲを運び、炒飯を食べさせてやる。

「美味いか?」

「ん」

コクリと頷いた鷹臣の髪をくしゃりと撫でる。

昼飯を食べ終えると、鷹臣は悪ぃと一言呟き、結局眠ってしまった。

膝の上に鷹臣の頭を乗せ、安心しきった顔で寝息を立てる鷹臣の髪に触れる。

顔にかかった前髪を払い、そっと額にキスを落とした。

…もっとどろどろに甘やかして俺なしじゃいられなくしてやりてぇ。

俺だけを見て、俺だけに笑いかければいい。

自分でも呆れるほどの独占欲の強さ。でもそれが想いの深さでもある。










編入初日、学校をサボった瑛貴と役員特権を使って丸一日休んだ鷹臣。

半年振りに再会した恋人同士は、会えなかった時間を埋めるように相手を求めた。

恋人にしかみせない表情で、甘え、甘やかし、口付けを交わす。

部屋の中に一緒にいても必ず相手のどこかに触れていて、…ぬくもりを感じあっていた。

半年、離れていたのが嘘のように離れられない。

「なぁ瑛貴。俺を探したか?」

「探した」

「なんで編入してきた?」

「タイガーの痕跡を辿ってるうちに此処へ辿り着いた」

「そうか」

「あぁ」

ふと臥せられた瞼が開き、鷹臣の手が瑛貴の頬に添えられる。

それを瑛貴は黙って見つめ、鷹臣が行動を起こすのを待った。

ゆっくりと鷹臣の顔が近付き、唇が重ねられる。
その瞳には瑛貴だけが写され、ぞくぞくと這い上がる期待に瑛貴の口角が上がった。

「瑛貴。…俺にはお前がいれば他には何もいらない」

生徒会長の座も、人気も人望も。

「お前がいれば」

この恋に溺れているのは俺だけじゃない。

狂気とも言うべき恋情に瑛貴は笑う。

「俺もだ鷹臣」

幸いここには二人の邪魔をする者はいない。

その日一日、二人は離れるどころか、部屋から一歩も出ることはなかった。





第一話 再会-完-

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