09
廊下に落ちた書類。
散らかった衣服をそのままに、俺は瑛貴に抱き上げられ寝室に運ばれる。
火照った身体にシーツのひんやりとした冷たさが心地好い。
その気持ち良さにゆるりと頬を緩ませ、再び覆い被さってきた瑛貴を見上げた。
「まだ足りねぇ」
「俺も…」
廊下で二回ほどやったが熱は冷めない。それどころか増す一方で。
熱を帯びた眼差しが俺を見下ろし、再び首筋に噛みつかれる。
「ンっ…!」
俺は受け入れるように瑛貴の頭を抱き込み、下肢に触れる熱に腰を押し付けた。
「ン…ぁ…っ…はっ…」
するりと瑛貴の右手が内股を撫でる。先程まで瑛貴を受け入れていた場所からとろりと蜜が溢れてシーツを濡らす。
敏感になっているそこに再び瑛貴の指が侵入してきて、期待にふるりと体が震えた。
「っ…ァ…あぁっ…、えいっ…ン」
ぐちゅぐちゅと湿った音を立てて中を掻き混ぜられる。
しかし、肝心な部分には触れられず、もどかしいその感覚に抱き込んでいた瑛貴の頭を、髪を引っ張って上げさせた。
上気した頬に熱で潤んだ瞳。艶やかな嬌声と吐息を漏らす唇が瑛貴を求めて開く。
「は…っ、瑛…っンン」
分かってると、瑛貴は己の名ごと紡がれた言葉を口内へと飲み込み、昂る己のモノを残滓の滴るそこへと突き入れた。
「あぁっ―!…っは…ぁ…ン…」
ずんっと突き入れられたその質量に背がしなる。
中に残っていたものが円滑油がわりになり、瑛貴が動く度に濡れた水音が立った。
「…あっ…ぁあ…瑛っ…」
「鷹臣っ…っく…」
熱く絡み付いてくる内壁に瑛貴は眉を寄せ、低く掠れた吐息を吐き出す。
そして、どちらからともなく唇を重ね、互いに高まった熱を解放すべく腰を動かした。
「ン…ンっ…ぁっ…ぁ…!」
とろとろと腹を汚す、そそり立ったモノに指を絡められ、甲高い声が漏れる。
肌のぶつかる乾いた音の感覚が短くなり、内股が小刻みに震えた。
「はっ…、もうイきそうだな」
どくどくと中で脈打つ瑛貴のモノも破裂寸前で、声音から余裕が消える。
「瑛…貴っ、ぁあっ…もっ―…」
触れる肌は熱く、お互い相手を求めてやまない。
熱が混じりあい、身体の境界が曖昧になる。
「っ、はっ…イけよっ…」
奥深く、これでもかと一際強く捩じ込まれ、一瞬頭の中が真っ白になった。
「っ、ぁ…あぁ…ぁっ――!!」
「ふっ…、くっ―…」
その後、奥にどろりとした熱いものが注ぎ込まれ、荒い息のまま二人してベッドに沈んだ。
「っ…はぁ…はぁ…」
「…鷹臣」
呼吸を整えていれば、ふわふわと優しいキスが額に瞼、鼻先に頬、唇にと顔中に落とされる。
「…ンっ…瑛貴…」
その感触にうっとりと瞳を細め、瑛貴を見つめる。
視線が絡むと瑛貴はふっと口許を緩め、触れるだけのキスをして甘く囁いた。
「愛してるぜ、鷹臣」
「ン…、俺も」
瑛貴の首に腕を絡め、引き寄せて唇を重ねる。
「愛してる、瑛貴」
半年振りの交わりは止まることを知らず、溢れる想いのままに時は過ぎていく。
翌朝、といってももうすぐ昼に変わる時間帯。
俺は微睡みの中から目を覚ました。
「ん……」
「起きたか?」
すぐ側から掛けられた低く甘い声。身体に馴染んだ体温に、優しく髪をすく指先。
「…瑛貴」
普通に出した声は掠れていて、喉に違和感を覚えた。
「ちょっと待て」
瑛貴はサイドテーブルに置いておいたペットボトルに手を伸ばす。
「起きれるか?」
優しく問いかけられ、俺は瑛貴の手をかりつつ上体を起こした。
朝方まで体を酷使したせいか体が重くてダルい。
ペットボトルのキャップを片手で開けた瑛貴は、ペットボトルに口を付け水を口に含むと、口移しで水を流し込んでくる。
「んっ…く…」
労るようにゆっくりと移される水を飲み込み、口端から溢れた水を瑛貴は舐めとった。
「もう一回いるか?」
「ん」
それを二回繰り返し、喉が潤う。
半分に減ったペットボトルをサイドテーブルに戻し、瑛貴は俺の髪に触れながら言った。
「飯はどうする?」
「ン、瑛貴の手料理が食べたい」
「いいぜ、お前の頼みなら何だって聞いてやる」
俺だけが知る瑛貴のこと。喧嘩が強くて夜の街で恐れられる瑛貴だが、こう見えて料理が出来る。
「お前のことだ、どうせ適当にしか食ってねぇだろ」
逆に俺はまったく料理が出来ない。だからうるさくても食堂に足を運び、面倒臭くなると食べない何て時もある。
「それはお前がいないから」
「……そうか」
拗ねたように告げた俺に、瑛貴は仕方ねぇなと嬉しそうに目元を緩めた。
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