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何故か部屋までついてきた和真と孝太を部屋に上げ、俺もまだ聞きたいことが残っていたので、來希が居ないことを確認してからリビングに通した。

「風紀だから掃除屋ってのは何となく分かるけど、あの先輩も夜の街関係?族とか…」

「いや、まったく無関係。冷泉委員長のあれは学園内だけだ」

和真の言葉にうんうんと孝太も頷く。

それなら尚更、俺は聞きたかった事を口にした。

「掃除屋は学園内の風紀ってことだろ?親衛隊とか族潰しとか、素行の悪い会長とかの掃除はしねぇのか?」

そう聞けば、和真と孝太は仲良く顔を見合わせ、同時に何て言ったらいいのかと二人は困惑したように眉を寄せた。

「あ〜、そこが掃除屋の難点なんだよなぁ」

「だな」

「おい、何だよ」

二人して納得してんなよ。

「食堂でも冷泉委員長が動くのは極稀だって孝太がいっただろ。まさにそのまんまだ」

「冷泉委員長は自分の興味の引かれる事しかしないし、手を出さないんす。だから何の面白味も無い生徒会にも親衛隊にも、もちろん來希にも見向きもしないんです」

もちろん、委員長以下役員はきちんと取り締まりやってますけど。それでもやっぱり一番影響力を持つのは冷泉委員長なんで、再三幼馴染みの副委員長に動けとつつかれてるみたいですけど、これがまた逆効果で。

ようは敵にも味方にもならない存在ってことか。
それならそれで気にする必要はないか。

俺は自分の中でそう結論を出して納得した。

「まぁいいや。分かった。掃除屋には関わんなきゃ良いってことだな」

「そう言うことだ。けど、本当に、くれぐれも、掃除屋に興味を持たれねぇよう気を付けろよヒサ」

親衛隊の危険さを教えてくれた時の様に、和真はまたしても真剣な顔で俺にそう注意してきた。

「分かってるって」

本当に、くれぐれも、と強調して言う辺り俺はそんなに信用ならねぇか?と些かムッとした気持ちになった。

その横で、一人掛けのソファに座っていた孝太がポツリと溢す。

「でも、冷泉委員長は何しに来たんだろうな。あの人いつも自室とかで飯食ってて滅多に食堂なんかに来ねぇのに」

「ふと食堂のご飯が恋しくなったとか?まだ二度しか食べたことねぇけど美味かったし」

「………」

一人、和真だけがまさかなぁと嫌そうに顔をしかめていた…。








side 掃除屋(風紀)

ガチャリと扉を開けるとそこには仁王立ちした男がいた。

「どこ行ってたんだ久嗣!あれほど行き先は役員の誰かに言ってけっていってんのに!」

「誰も居なかったから良いもんだと解釈した。…行き先は食堂」

仁王立ちした男の横をすり抜け、委員長席に腰を下ろす。

「食堂?風紀室から食堂までのこの短い距離でさえ歩くのが面倒臭いって言って自炊してるお前が?」

「珍獣を見てきた」

「はぁ!?チンジュウだぁ?ンなもん学園内にいるわけねぇだろ」

ったく、そんなことより歓迎会の親衛隊対策会議の議案に目ぇ通しとけよ。



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