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午前で学校を終えた後、昼飯も食べずに乱闘現場へ向かった俺の腹は今になって空腹感を訴えてきた。

「なぁカズ、俺腹減ったんだけど…」

「あぁ、じゃ食堂行くか」

室内の時計を見れば午後二時半を指していた。

「食堂って開いてんの?」

「そっか、お前外部だっけ。食堂は基本的に朝六時から夜十一時まで開いてんだよ」

話ながら部屋を出て、寮内の食堂へ向かう。

今日は午前終わりだったせいか、皆何処かへ出掛けている様で寮内にいる人影はまばらだった。

それでも和真と一緒に食堂に足を踏み入れると、和真には黄色い声、俺には敵意と悪意の声が上がった。

「…うるせぇ」

隣で悪態を吐く和真に俺も同感、と溢し空いている席に座った。

「頼み方知ってんのかヒサ」

「知ってる。それと、俺の事ここじゃヒサって呼ぶな。久弥で良い。俺もカズの事、和真って呼ぶから」

タッチパネルで料理を注文して、待つ。

「この学園でお前の事知ってる奴俺の他にいるのか?」

「いるにはいるけど微妙。この格好の事は知ってるけどチームの事は知らないみたいだし」

「誰だソイツ?」

和真は眉間に皺を寄せて、不機嫌そうに聞いてきた。

「本庄先生。俺の兄貴の友人で、兄貴が俺のこと喋ったらしい。一応俺の味方」

へぇ、と和真は考える仕草を見せた後、じゃぁ來希は知らねぇのか、と聞いてきた。

「知らないし教えるつもりもない。何、和真って來希と仲良いのか?」

互いに名前呼びしてたし、また同じクラスだとかも言ってたな。

ウエイターが運んできた料理を並べ終え、去ってから和真は口を開く。

「悪くはねぇなぁ。つっても良くもねぇけどなぁ」

俺はフォークを手に持ち、目の前に置かれたパスタを食べ始める。

「そうか?俺から見たら仲良く見えたけどな」

「冗談はやめてくれ」

和真も箸を手に取りご飯を食べる。

「それより來希って何者だよ。どっかチームに入ってたりするのか?俺の攻撃効かねぇんだけど」

「はぁ?もう來希とやりあったのかよ…。あ〜、それでアイツお前に興味持ったんだなぁ。厄介な」

和真は何やら、一人で納得して舌打ちをした。

「俺のせいじゃねぇからな。來希が先に手ぇ出してきたんだ」

喧嘩好きと言っても、俺から仕掛けた訳じゃないし、何度も言うようだけど俺の目標はここで平和な学園生活を送ることだ。そこを誤解しないでくれ。

「はぁ、済んじまった事は仕方ねぇか。…んで來希が何者か、だったな?」

あれだけ強けりゃ何かしらあんだろ、と頷いて続きを待つ。

「アイツはなぁ、俺達と逆の存在で族潰しだ」

「は?族、つぶ…し?アイツが!?」

待ってみたら思ってもみない答えが返ってきた。

「そ。通り名は黄雷[キライ]。一回ぐらい耳にしたことあんだろ?」

黄雷…、実際見たことはないけど噂なら聞いたことがある。

いつも何処からかフラリと現れ、族相手に一暴れするとまたフラリと姿を消す。

はっきりいって意味不明な奴で、その姿はあまり知られていない。ただ、族の間では黄雷に会ったら終わりだ、とか密かに囁かれている。

「それであんなに強ぇのか。手合わせしてぇけど、俺の正体バレたら速攻で殺られそうだな」

「それはないと思うぜ。むしろ、俺は違う意味でヤられちまわないか心配だなぁ」

「違う意味って何だよ?」

他に俺がどう殺られるって言うんだ?俺は使い終わったフォークを皿に置き、首を傾げる。

「それは…」

同じく食べ終わった和真が箸を置いて話だした時、ソレはやって来た。

「「「キャーーー!!!」」」

「うわっ!?何この歓声…」

俺は突然の出来事に痛む耳を塞いで和真に視線を投げた。

和真も眉をしかめ、耳を塞ぐことはしないがうるせぇ、と悪態を吐く。

そしておもむろに和真は立ち上がり、耳を塞いでいた俺の右手を取ると立ち上がらせる。

「和真?」

「生徒会の奴等が来た」

耳元でボソリ、とそう教えられ俺は騒ぎの中心にチラッ、と視線をやった。



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