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和真の部屋に寄る前に、寮内にあるコンビニで髪染め用に赤いスプレーを買った。

部屋に上がらせてもらって、黒いスプレーをかけたままの髪の上に買ってきた赤いスプレーをかける。

「大きいかもしんねぇけど服はこれ着ろよ。流石に制服じゃまずいからなぁ」

スプレーをかけていると和真が自分の服を持ってきた。

「さんきゅ」

さて、こっちも終わったし着替えるか。

眼鏡をポケットにしまい、ブレザーのボタンを外す。

「って、カズ。いつまでそこにいんだよ」

和真は壁に寄りかかって俺を見ていた。

「気にすんな。それより早く着替えろよ」

そんなジッと見られると着替えづらいっての。

俺はなるべく気にしない様にして手早く着替えた。

うわっ、がばがば…。

ベルトをギュッと締めて、ズボンの裾を捲る。

「ちっちぇ…」

その様子を見ていた和真が俺に近づきポツリとそう言った。

「フン、お前がデカイだけだろ」

人の気にしてることを言うんじゃねぇ!言われなくたって分かってんだよ!

俺は見下ろしてくるカズを不機嫌も露に睨み付けてやった。

「うわぁ、マジやべぇ。ヒサ、お前色気垂れ流しすぎだって」

「はぁ?何言ってんだ?馬鹿じゃねぇの。それよりさっさと行くぞ」

「待て。これしてけ」

そう言って黒いキャップを渡された。

やっぱ髪と目の色変えただけじゃ駄目ってことか?でもこの格好で眼鏡したらおかしいし。

俺は渡されたキャップを目深に被った。

「これで俺だって分かんねぇよな?」

「…あぁ」

実はこの時、和真の思惑は別にあった。






side 和真

学校を抜け出し、乱闘現場へ向かいながら隣を歩くヒサを見る。

歩く度に、ぶかぶかなTシャツから白い綺麗な肌が覗く。

それに染めた赤い髪がさらさらと揺れ、白い肌と相まって何とも言えぬコントラストを生み出していた。

キャップの下には、人形のように整った綺麗な顔立ちがある。

スッと通った鼻筋に、ふっくらとした形のいい桜色の唇。長い睫毛に、今はカラコンで黒になっているが大きな瞳。その瞳が喧嘩をする時、鋭く細められ相手を射抜く。

喧嘩好きなのか、その時のヒサは気分が高まっていて普段の何倍も色気を垂れ流し、振り撒いている。

いくら変装をしたからってそれまでは隠しきれなかった。

だからせめて、ヒサの顔がバレてライバルを増やさないようとった措置がキャップを被せる事だった。

「ヒサ、そのキャップ絶対とんなよ」

「ん?あぁ。バレたらやばいもんな」

そういう意味じゃなかったけど説明が面倒臭かったので俺は頷いておいた。


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