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瞳の色は違うけど、この突き刺すような視線の鋭さはやっぱりヒサだ。と、和真は両手を押さえつけていた手を離し、男にしては華奢な目の前の身体を抱き締めた。
「うわっ!!」
「やっと見つけた」
ちょ、苦しい!放せ!
ぎゅうぎゅう抱き締めてくるカズの背をバシバシ叩く。
何の嫌がらせだっ!
「カズ、放せよっ」
「もうちょっと堪能させろよ」
何をだ!?
それから数分後にやっと解放された。
「ったく、危うく窒息させられるかと思った」
「はは、悪ぃ。ヒサが目の前にいると思ったらついなぁ」
行儀悪く机に腰かけた和真の隣に同じようにして並んで座る。
「でも何で俺だって分かった?」
この変装完璧だったろ?と、聞けば横から伸びた手に眼鏡を奪われる。
「分かるさ。好きな奴の事ならなおさらなぁ」
「ふぅん、そういうものか…」
って、えぇ!?好きな奴って何だよ!!
「冗談、だよな?」
俺は引き吊った笑顔で隣のカズを見上げる。
すると、カズは手で弄んでいた眼鏡をカチャン、と机の上に置き、するりと腰に腕を回してきた。
「まさか?俺は本気だぜ」
「は、ははは…、ちょっと待て!!落ち着けカズ。俺は男だぞ?」
何血迷ってんだ!黒騎の総長ともあろう男が!!!お前はそんな奴じゃねぇだろっ。
さらり、と腰のラインを撫で上げられ鳥肌が立つ。
「ちょ…、マジやめろって!!」
冗談じゃねぇ!!
両手でカズの胸を押し返す。
「ヒサは俺の事嫌いかぁ?」
「それとこれは別だろ!っていうかこれ以上したら絶交してやるっ」
何だか小学生が使う常套句みたいだな、なんて頭の片隅で冷静な俺が突っ込んできた。
しかし、そんなんでも効果はあったのかカズの手が止まる。
「それは嫌だなぁ。せっかく見つけたのに」
困ったなぁ、と言うカズは俺から見て本気で困っているようには見えなかった。
だから、
「止めねぇとてめぇの大事なもん一生使えなくしてやる」
と、男なら誰でも利く脅しをしてやる。
「それはもっと困るなぁ」
言ったことは必ず実行すると知っている和真は少し血の気が引いた顔で手を離した。
「怖いなぁ、ヒサは」
眼鏡を返してもらい掛け直す。
「カズ、俺の事は誰にも言うなよ」
「そうだ。何で変装なんかしてんだぁ?」
「それは…」
どう説明すべきか言葉に詰まっていると、開いていた扉から勢いよく緑頭が飛び込んできた。
「カズさん!大変です!白火(ハクビ)の奴等が仕掛けてきました!!」
まりも…?
俺はソイツの言葉より緑頭の方に目がいった。
「やっと動いたか。で、孝太はどうしたぁ?」
和真は緑頭に何やら状況を聞いている。
「白火の奴等と交戦中で…」
コウタ、どっかで聞いたな。
…あ!カズん所の副だ。
俺が思い出している間に話が済んだのか、緑頭は和真に頭を下げて出ていった。
「さぁってと、んじゃぁ俺も行くかぁ」
自分のチームが他チームと乱闘を繰り広げていると言うのに和真はのんびりしていた。
まぁ、仲間を信じている証拠でもあるのだが些か心配になった。
「そうだ、変装の事は後でゆっくり聞くからなぁ」
そう言って視聴覚室を出ようとした和真を俺は慌てて引き留めた。
「ちょっと待て!」
「ん、どうしたぁ?」
くるりと振り返った和真は、はっと息を飲んだ。
「俺も連れてけ」
白火っていや不知火(シラヌイ)っていう強い奴がいたよな?
紅蓮戦以来、チームとの接触も絶たれ、監視が厳しくて暴れまわることも出来なかった。
それに、こんな美味しい話を聞いて黙ってはいられない。
「いいけどバレたらヤバイんだろ?変装してるぐらいだし」
「あ、そうだった。でも…」
「はぁ。仕方ねぇなぁ。でもまぁ他ならぬヒサの頼みだから連れてってやるよ。その前に俺の部屋寄って…」
「マジで!ありがと、カズ大好きだぜv」
そう言うことはもっと違う時に言ってくれると嬉しいんだけどなぁ、と呟いた和真の声は耳に入らなかった。
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