06


部屋に戻ってきた俺は來希が帰ってくる前にシャワーを浴びようと、タオルと着替え、コンタクトのケースを持ってバスルームに向かった。

洗面台の前で黒いコンタクトを外せば、鏡に蒼い瞳をした俺が写る。

隔世遺伝で蒼くなったこの瞳を俺は気に入っていた。

俺はコンタクトをケースにしまい、服を脱ぐとタオルを持ってバスルームに入った。

シャワーのコックを捻れば調度良い温度のお湯が出てくる。

まず最初に髪にシャワーをあて、色を落とす。

みるみるうちに黒色が落ち、その下から綺麗な銀色が表れる。

全て落とし終わってから身体を洗う。

「ふぅ、さっぱりした。やっぱ元の姿の方が楽だな」

頭にタオルを巻いて、冷蔵庫からペットボトルを一本取り出す。

それを持って自室に入り、鍵を掛けた。

ベッドに腰掛け、ペキッとボトルのキャップを開ける。

「はぁ、なんか散々な一日だったな。ルームメイトは問題有りだし、なぜか紅蓮のヘッドまでいやがる。…入る学校間違えたんじゃねぇの?」

大体、俺は普通に地元の公立校に通う筈だったのだ。

それが数日前の紅蓮との大掛かりな喧嘩のせいで、両親と祖父母に俺が族の頭を張ってるとバレ、半ば強制的にこの彩王学園に送られることになった。

唯一の味方、俺が族の頭だって最初から知っていた兄貴でも、どうすることも出来ず俺はここに来た。

そもそも両親と祖父母の話によれば彩王学園は良いとこの坊っちゃん達が通う金持ち学校で、俺はこの学園で糸井家次男として社会に出ても恥じない、立派な人物に更生してきなさいと言われて来たのだ。

その後、兄貴にはその説明と別にさっき本庄に言った通りのことを聞かされた。

だからってこの学園に俺と同じような不良がいようとは思わないだろ。

精々、数名やんちゃな奴がいるんだろうな、って考えるぐらいで。

「所詮噂は噂だったのか?」

しかし、それでは困る。折角優等生スタイルで目立たず大人しく三年間貫き通そうと思っていたのに。

学園に不良がどれだけいるか知らないが、兎に角正体がバレたら終わりだ。

更生した振りして自由を取り戻そうと計画してたのに。

「あぁっ、もうめんどくせぇ!!」

この学園に不良と呼ばれる奴等がいるのが悪ぃんだっ。

いいや、元を正せば俺に喧嘩を吹っ掛けてきた紅蓮が悪ぃんだ!バレなきゃ、俺は今平和に地元の高校に通っていたはず!!!

「許すまじ、紅蓮!!」

数分前、再会した憎き敵を思い出し俺は拳を握り締めた。

だからって襲撃しに行ったりはしねぇぞ。それこそ自分の首を絞めることになるからな。

俺は今日あった嫌な出来事を全て紅蓮のせいにし、幾分かスッキリした所で明日に備えて寝た。



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