03


それからカラオケで数時間、楽しんだ俺達は本来の目的である実家に向かう事に。

「じゃぁな藤宮。また遊ぼうぜ。弟君もな」

「今度家に遊びに来いよ」

「おぅ、またな。そん時は千尋も連れて遊びに行くよ」

大地と鳴海に別れを告げ、俺は千尋とカラオケボックスを後にした。

そして、家を出てから何にも変わっていない道を千尋と再び歩き出す。

「ねぇ夏野。大地さんと鳴海さんって夏野の何?」

あまりにストレートなその質問に苦笑が浮かぶ。

「アイツ等は俺の一番の友達だ。それ以上でも以下でもない」

「…じゃぁ、オレは?」

真剣な顔で見上げて聞いてくる千尋に、俺は立ち止まり周りを確認してから腕の中へ抱き締めた。

「お前は俺の大切なオトウトで、恋人だ。違うか?」

「違わない!オレは夏野の…恋人///」

俺と親しそうにしていた二人に、千尋は不安を感じたのだろう。

その不安を取り除くように言葉を贈る。

「だろ?俺の恋人はお前だけだよ千尋」

そう言ってぎゅっと抱き締めた。

腕の中で、とくとくと伝わる鼓動と温もりに千尋はほっと息を吐いて夏野に擦り寄る。

「安心したか?」

「…うんv」

満面の笑みを浮かべ、頷いた千尋に俺もふっと笑みを溢した。









「「ただいまー」」

久し振りに開けた扉。懐かしい空気がそこにはあった。

「お帰りなさい、二人とも。待ってたのよ!」

「おぉ、大きくなったな千尋。お兄ちゃんに迷惑はかけていないか」

両親揃って俺達を出迎えた。

「二人とも元気そうでなにより。あ、コレ向こうで買ってきた土産」

「かけてないよ。父さんはオレを何だと思ってるのさ」

玄関を上がり、リビングまで行くと父さんが椅子を進める。

母さんは俺が渡した土産を手に、お茶を淹れにキッチンに入って行った。

「そうは言ってもお前は俺からしたら何歳になっても子供だよ。それで、夏野。千尋とは上手くやってるか?」

「あぁ、俺が仕事で遅い日とか夕飯作ってくれたりするから逆に俺は色々助かってるよ」

「そうか、それは良かった。ところでお前の仕事の方はどうだ?忙しいのか?」

「まぁまぁかな。最近は…」

父さんは嬉しそうに俺のする話しに頷いていた。

また、俺の隣で時々口を挟んでは何だかんだと言っている千尋も結構楽しそうだった。

「あなたー、ちょっと手伝ってくれない?」

「ん、あぁ。じゃ、二人ともゆっくりしてなさい」

相変わらず仲の良い両親に俺と千尋は苦笑を浮かべた。

準備に時間がかかりそうなので、ちょっと荷物を置いてくるとキッチンに声をかけ、二階に上がれば後から千尋がついてきた。

「お前まで来なくて良かったんだぞ」

「だって…」

そして、自室の扉を開け中へ入る。

掃除してあるのか部屋の中は綺麗だった。

荷物(と言っても携帯や財布とかだけだが)を机の上に置き、俺はベッドに座り千尋を呼んだ。

「分かってる。千尋、おいで」

「〜っ、夏野!」

嬉しそうに抱きついて来た千尋を受け止める。

甘えるように瞳を細め、胸に顔を寄せてきた千尋の耳に唇を近付けた。

「千尋。顔上げてみな」

「ん…」

素直に顔を上げた千尋に、ふっと口元を緩め頬にキスを落とす。

「んっ///な、夏野…///」

そうすれば千尋は頬を染めて、俺の服をくぃくぃと引っ張った。

「どうした?」

「〜っ、意地悪…///」

羞恥で染まった頬に潤んだ瞳がキッと俺を見上げてくる。

お前ソレは可愛い過ぎだろ。

でも、そうは思っていてもつい違う言葉が口をつく。

「何が?言ってくれなきゃ分からないだろ?」

「〜〜っ、…口が良い!口に…して欲しぃ///」

真っ赤になって一生懸命言った千尋に、優しく笑いかけ唇を重ねた。

「可愛い…」

「んっ…んんっ…ぁ…」

舌先で唇をノックすれば千尋は躊躇いながら唇を開いた。

「夏野ー、千尋ー。お茶の用意が出来たから降りて来なさいー」

「…ふぁ、…んっ…なつ…のぉ…」

階下から聞こえてきた声に、背に回された千尋の手が俺のシャツをぎゅっと握る。

「んっ…」

俺はゆっくりと唇を離し、千尋から離れた。

「呼んでるな。行けるか?」

「…ん。後から行く。夏野、先行ってて」

顔から熱が引いたら行くと言う千尋の頭をひと撫でし、俺は自室を出た。



これは誰にも言えない秘密。俺達だけの秘め事―。



END



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